第78話 長野県① 松本城、おやき
「ほう、これは見事な城じゃな!」
「ええ、水の流れる堀に浮かぶ白と黒色の城が青空と合わさってとても美しい色合いですね」
今日は長野県の松本にある松本城へとやってきている。
「松本は長野県の中でも大きな都市だね。長野市と同じくらい栄えている街だよ。そんな中でこの松本城は日本に5つしかない国宝のお城だからね」
松本城は江戸時代以前に建設された店主が残る現存12天守のひとつで、その中でも5重の天守を持つのは松本城と姫路城だけらしい。そして姫路城よりも古いので、現存する日本最古の5重天守と国宝の城となる。
国宝となる部分は天守や櫓の部分なのだが、この白い漆喰と黒い漆塗りの外見がとても美しく、後ろにある北アルプスの山々と堀の池が合わさってとても美しい景色となっている。
周りの公園をのんびりと歩いた後、松本城の中を見学していく。
「ここが天守閣じゃな。とても見晴らしが良いのじゃ!」
「お城の天守閣はどこも景色がいいよね」
当然ながら天守閣は白の一番上にあるので、その付近の街並みを一望できる。条例とかで決まっているのかは分からないが、だいたいの場所にある城の周りに高層ビルはないので、天守閣から見下ろす景色はとても良い。
ちなみに俺は天守閣には城の城主が住んでいるものだと思っていたが、基本的に天守閣は見張りをしたり、武器などの物を置いておく場所だったらしい。
まあ、殿様は広い部屋で、姫様や他の女性達を侍らしているイメージだから、天守閣よりももっと広くて豪勢な部屋に暮らしていると考えるのが普通か。
「ほう~この城もいろいろと考えられて造られておるのじゃな」
「お城は殿様、城主様がいる最後の砦だからね。基本的には守りを固めるように建てられているよ」
「こういった城の仕組みを見るのも面白いですね」
お城の中にはこの松本城のように当時の物や城の仕掛けなどを展示している場所も多い。
松本城の天守に展示されている修理の際に切り取られた天守の壁は火縄銃も通さないような30センチメートルの壁をしており、火縄銃を撃つための武者窓や狭間なんかがあったりする。
喜屋武さんの言う通り、城の仕掛けを見るのってなんだか楽しいよね。やはり城は男の浪漫である!
「おお、中身の味が違って、どれもおいしいのじゃ!」
「私はこちらの野沢菜のおやきが特に好きです」
松本城を見学したあとは、長野市にある有名なおやきの店へとやってきている。
おやきは、小麦粉や蕎麦粉を水または湯で溶いて練り、薄くのばした皮にあんや野菜など旬のものを包み焼いたもので、信州を代表する郷土料理だ。地域によってはやきもち、あんびん、ちゃなことも呼ばれるらしい。
ちなみに北海道でいうところのおやきは長野県の白い焼いた餅ではなく、茶色の今川焼、回転焼、大判焼の方を指しているぞ。それについてはなんで北海道だけそうなのかは分からないそうだ。
その中身は様々で、粒あん、野沢菜、きのこ、切干大根、かぼちゃなどさまざまである。そしてこのお店は店の囲炉裏でおやきを焼いているところが見えるのだ。そもそも囲炉裏なんて普通に生活していたらなかなかみないものだよなあ。
もちろん甘い餡のあずきやかぼちゃもおいしいのだが、野沢菜やキノコなどを入れたおやきはおかずみたいな感じで食べられてご飯代わりにもなる。
「俺もやっぱり野沢菜が好きかなあ。信州のこの辺りだと野沢菜も有名だから、ひとつで2つの名物をいっぺんに食べられるんだよね」
この辺りでは野沢菜もとても有名なので、野沢菜おやきや野沢菜に少し辛みそを加えた辛みそおやきがおすすめだぞ。
他にもこの辺りだとよくイナゴや蜂の子を食べたりするらしいのだが、さすがに異世界のお姫様にあれを食べさせるのは微妙だからやめておいた。昨日の夜の打ち合わせで、喜屋武さんも絶対に無理だと拒絶していたな。
俺はどちらも食べたことがあり、確かに味はそこまで悪くはないのだが、どうしても見た目がちょっと微妙なんだよね……
ちなみに長野あるあるとしては、長野県民は「信濃の国」という歌を学校で習っているからだいたいの人が歌えるらしい。それにこの辺りは標高が高いから、学校の行事で登山をすると3000メートル級の山に登ることもあるそうだ。
また、冬は雪が多く降るので、小学校でスケートやスキーの授業があるようだ。確かに長野県ってスキー場が多いもんな。あまり雪が降らない関東民の俺にとっては少し羨ましかったりもする。





