第64話 鳥取県① 因幡、アゴカツカレー
「これはなかなか傾斜のある橋ですね」
「この橋は江島大橋といって、島根県と鳥取県を結ぶ長い橋になっているんだよ」
江島大橋は島根県と鳥取県を結ぶ1.5kmほどで、高さは大きな船が下を通れるように45mもの高さとなっている。こちらの島根県側の勾配が特にすごく、真正面から見ると、壁みたいに見えるんだよね。
「ここから見ると、空につながっているみたいに見えるのう……」
「この橋が一番良く見える場所だからね。一番上は結構高くにあるから、一番上まで歩いてみてから移動しようか」
この橋はベタ踏み坂と呼ばれている橋で、昔車のCMでやっていたらしい。俺は何度か見たことがあったけれど、たぶん喜屋武さんとかは知らない世代だろうな。
以前の旅でも自転車でこの橋を渡って、鳥取県へと移動したのだが、見た目通りかなりの勾配でかなり大変だったのを覚えている。
そのまま歩きながら橋を渡っていく。渡っていくというよりは登っていくといった表現のほうが正しいかもしれない。
「確かにここから見る景色は綺麗なものじゃな」
「この辺りの海も青くて綺麗だからね。それと遠くにある島がとても綺麗に見えるよね」
橋の上からは島根県と鳥取県の街並みが見渡せる。そしてなにより、その綺麗な海に浮かぶ島々を見渡せる景色は素晴らしい。
「しかし、ここからの船や車などを見ると、本当に妾たちの世界とは別世界と言うことがよく分かるのじゃ……」
この橋も古くからあるとはいえ、この世界の建築技術の結晶であるからな。
「おお、やはり綺麗な海じゃな!」
「うん。青い海もそうだけれど、この白い砂浜もとても綺麗だよね。ここは白兎海岸といって、因幡の白うさぎという神話の舞台になっている場所なんだ」
「因幡の白うさぎですか。あのワニに皮を剥かれたというお話ですか?」
「そうそう、その白うさぎの話だよ」
そう、昔よく絵本なんかで出てきたその話である。今も日本昔ばなしのアニメのやつとかやっているのかな。
神様たちに騙されて痛い目を見た兎が大黒様に助けられるというお話だ。とはいえ、あれはうさぎもワニ……というかサメを騙していたわけだから、ちょっと自業自得の部分もあるんだけれどね。
そのまま綺麗な白兎海岸を歩きながら、白兎神社へと移動する。
「簡単に話すと、島の向こうにわたりたかったうさぎがサメを騙して海を渡ろうとしたら、サメたちにバレて皮を剥かれてしまったんだ。そのあと意地悪な神様たちに騙されて、もっと怪我がひどくなってしまったところを、優しい神様が怪我の治し方を教えてくれた。そしてその優しい神様は美しい神様と結婚できて他の人にも尊敬されたという話だよ」
「なるほどのう」
まあ、昔からよくある教訓話みたいなものだな。嘘をつくと罰が当たりますよというのと、他の人に優しくしてあげると自分も幸せになりますよといったものだ。
ここ白兎神社にはうさぎに怪我の治し方を教えている際のうさぎと神様の像がある。
「おお、これがうさぎか! 妾の世界にも角の生えたうさぎがおるぞ!」
「そ、そうなんだね。こっちの世界のうさぎは特に人へ害を与えたりしないから大丈夫だよ」
たぶんホーンラビットとか呼ばれる魔物とかかな。どうやらミルネ様の世界にもこちらの世界とは異なるうさぎがいるようだ。
そしてここ道の駅神話の里白うさぎでは、名誉駅長として実際に生きている白うさぎがいる。初代の命くんは14歳と人間の寿命に換算すると100歳近くも生きた長寿だったらしい。
「やはりうさぎは可愛らしいですね」
「うむ、攻撃してこないのなら、とても可愛い生き物なのじゃ!」
どうやら喜屋武さんもミルネさんもうさぎには興味津々のようだ。どうやら可愛いものが正義なのは異世界でも変わらないらしい。
「これはカレーという料理じゃったな」
「そうだね。カツを乗せたカレーをカツカレーと言うんだけれど、この辺りではトビウオのすり身を揚げたあごカツを乗せたあごカツカレーが有名なんだよ」
そして昼食は鳥取県のご当地グルメであるあごカツカレーを食べに来ている。トビウオと言えば、刺身で食べたり、あご出汁として出しに使うのが有名だが、ここ鳥取県ではあごカツにするらしい。
「これはおいしいですね。すり身なので、ふっくらとしていて、魚の味がしっかりと口に広がりますね」
「カレーのルーにもトビウオを使っているらしいよ」
まさにあご尽くしである。
他にも鳥取は鳥取カレーと呼ばれているカレーはあるらしいのだが、このカレーが鳥取カレーという定義はないらしい。この材料が入っていれば鳥取カレーとい定義があれば分かりやすいんだけれどね。





