第62話 島根県① 石見銀山、出雲そば
「今日は少し寒いみたいじゃな」
「昨日の沖縄から島根県まで一気に北上してきたからね」
今日はミルネさんの転移魔法で、沖縄の宮古島から島根県へ一気に移動してきた。昨日はミルネさんの魔法を使って寒い中海にまで入って遊んでいたが、本州の気温は沖縄とは異なってまだ肌寒い。
ミルネさんを案内しての日本一周の旅も半分を過ぎて、これからは日本列島を北上していくことになる。
「こちらは昔ながらの街並みが残されているのですね」
「石見銀山は江戸時代に栄えていた銀山だね。当時は世界中に日本の銀が輸出されていて、日本の銀の中でもその採掘量はかなりのものだったらしい。この街の景観と一緒に日本の世界遺産に登録されているんだよ」
島根県にある石見銀山は世界遺産にも登録されており、当時の銀山の坑道の跡や銀生産にかんする遺跡が豊富で状態が良く残っているらしい。
郵便局やお店などの外見は本当に昔ながらの建物だった。
「ここからが龍源寺間歩という坑道だね。昔は機械の採掘道具なんかは何もないから、ノミという金属製の採掘道具と槌を振って銀を掘っていたらしいね」
間歩とは坑道のことを指しており、ここには様々な名前の付いた大きな間歩がある。この龍源寺間歩という坑道もそのひとつだ。奥行きもあって、当時実際に使っていた坑道内に空気を送る装置なんかが展示されていた。
「こんな坑道を魔法の力も使わずにすべて手作業で掘っていたのだからすごいのう」
「ミルネさんの世界みたいに魔法があればもっと楽だったんだろうね。でもこっちの世界でも最近だと機械でほとんど自動化されているからかなり楽になっているよ」
「ふ~む、それはすごいのう」
実際に銀が含まれていた鉱石を見せてもらうと、鉱石には黒い線が入っている。これが含まれている銀となる。この鉱石を砕いていき、他に含まれている鉱物などを取り除いて精製したものが銀となる。
実際に資料館などの説明を読むと、少量の銀を取り出すためにかなりの手間と人手がかかっていることが分かる。それに昔の採掘は危険を伴うということだし、罪人を鉱山送りにするというのも分かる気がする。
そんな感じで石見銀山とその街並みを見学していった。
「さて昼食を食べる前にちょっと温泉で温まろうか」
「うむ、やはり温泉は素晴らしいのじゃ!」
ここ島根県には有名な温泉が数多くある。今日の夜も温泉宿に泊まるのだが、この石見銀山の付近にある温泉津温泉は今から1300年も昔に開湯したと言われている古くからある温泉だ。
……そしてこの漢字をゆのつと読める人は地元の人しかいないと思う。俺も最初に来た時には普通におんせんつ温泉と読んでしまったからな。
ちなみにこの温泉も世界遺産である石見銀山の伝統的建造物群保存地区に含まれている。沖縄では温泉には入らなかったから、久しぶりの温泉となり、久しぶりにまったりとできた。
「ほう、これはそばという料理じゃったな」
「さすがだね。これは出雲そばと言って、長野県の戸隠そばと岩手県のわんこそばと同じ日本3大そばと呼ばれているんだ」
「出雲というと、出雲大社の出雲ですか?」
「そうそう。出雲は島根県のこの辺りの地域のことを指していて、700年代の古事記にも載っているくらい古い地名なんだよね。もちろんこれから行く出雲大社の出雲も地域の名前だね」
島根県と言えば、まずは出雲大社が一番に上がるほど有名な地域だ。
「前に食べたそばとは少し色が違うみたいじゃな」
「おっ、よく覚えていたね。この出雲そばはソバの実をひく時に皮ごとひくから、そばの色が少し黒くなるんだ。普通のそばよりも少しコシがあって、香りも強くて栄養価も高いのが特徴だよ」
普通そば粉を作る時は皮をむいたソバの実の中心に近い部分を一番粉と呼び、そこから外側にいくに従って二番粉、三番粉と呼ぶ。一番粉だけで打ったそばは更科そばと呼ばれている。
しかし出雲そばはそば粉を選別せずに実の皮ごとひく、挽きぐるみと呼ばれる製粉方法になるらしい。
「出雲そばにもいろいろなものがあるけれど、今回は昔からある割子そばのお店にしてみたよ」
出雲そばには釜揚げにしたり、普通の椀で食べるものもあるが、今回は昔ながらの丸くて赤い3段の器に入った割子そばだ。
昔は野外でそばを食べるために弁当のような四角い重箱にそばを入れていたらしい。この地方では当時重箱のことを割子と呼んでいて、それが割子そばの始まりと言われている。
だが、四角形だと隅が洗いにくく、不衛生との理由から今のような赤い円形の漆に変わったらしい。
「食べ方も少し特徴的で、3段重ねたまま1段目の蕎麦の上に薬味とツユをかけて1段目を食べるんだ。そのあと1段目に残ったツユを2段目にかけて、3段目も同様にして食べるんだよ」
少々行儀の悪い食べ方のようだが、そういうものなのである。そもそもツユを入れるための器なんかもないからね。
「おお、確かに香りが以前に食べたそばとは異なるのじゃな。確かにこれはおいしいのじゃ!」
「ええ。そばの香りがとても特徴的ですね確かにこれはおいしいです」
そばもうどんやラーメンのように店によってだいぶ味が異なるから面白いよな。
最後にそば湯を加えたツユまでしっかりと味わった。
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