第56話 鹿児島県④ 種子島
「おじゃり申せ……?」
「この辺りの方言で、いらっしゃいませって意味だよ」
屋久島に続いてやってきたのは、同じく鹿児島県の離島である種子島だ。種子島と言えば鉄砲の伝来やロケットの打ち上げなどで有名な島である。
屋久島からも鹿児島からもフェリーが出ているので、鹿児島を訪れるのならぜひとも両方の島を訪れてほしい。
転移魔法でやってきたフェリーターミナルには、この島を舞台にしたゲームのキャラが、この島の方言でしゃべっているイラストが出迎えてくれた。
「いろいろな地理的条件や安全性から考えて、日本にはロケットの打ち上げはこの種子島と鹿児島県の南にある内之浦からしか行っていないんだよ」
「ろけっと?」
「ああ、そういえばそこからだったね。まずは種子島宇宙センターへ行ってみよう」
種子島にはJAXAの宇宙センターがあり、ロケットの打ち上げが行われていない時期でも、展示スペースを見たり施設を見学できたりする。
「おお~こんなに大きな物が空に飛んでいくのか! にわかには信じられないのじゃ!」
宇宙センターの中には、打ち上げるロケットの説明やロケットエンジンの展示などがされている。しかもこれが無料で見学できるのだから信じられない。他にもJAXAの施設内では職員さん達の食堂があって、一般客も食べることができるようになっている。
今回はここでは食べないが、旅中に食べた時には、JAXAの職員さんの制服である青い服を着ている人が大勢いたものだ。
「……パサパサとして面白い触感ですね。完全に水分を抜くとこうなるのですか」
そして宇宙センターの売店では宇宙食を購入できる。アイス味やタコ焼き味にえびグラタン味なんてものもあったりする。やっぱり宇宙食って聞くだけで実際に食べてみたくなるよね。
基本的にはすべて水分が極限まで抜かれた状態で、パサパサとした食感になるが、アイス味とかはちゃんとアイスの味がするのでおもしろいんだよね。
「これはいい眺めじゃな!」
「あっちの方に見えるのが、さっきまでいた宇宙センターだよ。ロケットの打ち上げの際はいくつかの指定された見学場があるんだ。ここはそのひとつである宇宙が丘公園だよ」
宇宙センターをあとにして、見晴らしの良い公園へと移動してきた。ロケットの打ち上げの際は公式の見学場がいくつかあるのだが、ここもそのうちのひとつである。
この公園は高台にあって、多少打ち上げ場所からは離れているが、種子島の綺麗な海と打ち上げ場が一望できる場所となっている。実際にロケットを打ち上げる際にはどの場所にも大勢の観光客がやってくるのだ。
「ロケットが発射される時には会場にいる人全員がカウントダウンをしてお祭りみたいなイベントになるんだよね」
運が良いことに俺が旅をしている年にタイミングよく種子島でロケットの打ち上げがあって、時間を合わせて打ち上げを見に来た。なんだかんだで、こういった祭りやイベントの時期をうまく組み合わせて予定を立てるのはなかなか楽しかったな。
種子島のロケットの打ち上げは一大イベントなので、俺と同じように旅をしていた人達が大勢集まって、ここで楽しんだのはいい思い出だ。ひとりで旅をするのもいいが、たまには大勢で集まってワイワイやるのもいいものである。
「むむ……それは妾もぜひ参加してみたかったのじゃ……」
「こればっかりはタイミングが合わないとね……ロケットの打ち上げなんて、そうそうあるものじゃないから」
実際にロケットの打ち上げは年に一度も行われないことがしょっちゅうある。たまたまそのタイミングでここにこれたのは本当に運が良かったな。
他にも種子島は有名な映画やゲームの舞台となっている。俺も旅をしていた時は聖地巡礼として、映画やゲームで出てきた場所に実際に行ってみたものだ。
今はもうできるか分からなかったが、俺がここに来た時がちょうど休みの日だったで、舞台となった高校に電話をして中を見学してもいいかと確認を取ってから学校の中に入れてもらったものだ。
他にもその高校の近くにあるコンビニのベンチに座って、作中に出てきた鹿児島周辺で販売されているヨーグルッペとスコールを購入して飲んだのは懐かしい。
……今考えると、我ながらよくやったと思うが、せっかくここまで遠くに来たのなら、好きな場所はいろいろと回ってみたい。とはいえ、現地の人に迷惑をかけないことは大前提である。聖地巡礼をするのなら、迷惑をかけずにゴミなどを捨てて汚さないように注意することが大事だ。
他にも種子島で有名な門倉岬や千座の岩屋などを見て回った。このあたりの海はとても綺麗な青色をしているので、海水浴なんかも有名だ。他にも鉄砲館なんてものもあるが、ミルネさんに鉄砲の仕組みを知らせるのはNGなので、喜屋武さんと相談してここはスルーした。
ロケットの打ち上げだけでなく、普通の時期に来ても楽しめる島なので、屋久島と一緒に観光することがおすすめだぞ。
さあ、明日はいよいよ日本の最南端の沖縄県だ。よくここまできたものである。





