第33話 高知県① 桂浜、はりまや橋、ひろめ市場
「おお、ここも綺麗な海じゃな!」
「ええ、しまなみ海道にあった海水浴所と一緒で綺麗な海ですね」
愛媛県を出て今日最初にやってきた場所は高知県の桂浜公園だ。
桂浜公園は雄大で美しい太平洋を一望でき、月の名所としても名高い場所で、有名なよさこい節にも唄われている景勝地となっている。高知県の小学生たちは運動会でよさこいソーランを踊ると聞いたな。
「でもここは波が高くて潮の流れが速いから泳ぐことはできないんだよ」
「本当ですね。遊泳禁止と書いてあります」
この辺りは波が高くて潮の流れが速く、以前に海難事故などが起きた場所でもあるので、現在は遊泳禁止となっている。
「綺麗な海なのにもったいないのじゃ……」
「まあ他にも見どころはあるからね。桂浜水族館があったり、龍王岬、海津見神社に浦戸城跡なんかもあるんだよ。本当は犬と犬を戦わせる闘犬みたいなのもあったんだけど、今はもうやってないみたいだね」
昔はとさいぬパークという闘犬を見ることができる場所があったのだが、経営が厳しくなって営業を終了してしまったらしい。
「経営が厳しいこともあったみたいだし、最近は動物同士を戦わせるのも動物愛護の精神に反するとかで厳しいのかもしれないね」
「そういえば沖縄県のハブとマングースのショーもいつの間にか禁止になっていましたね」
「えっ! マジで!?」
それは知らなかったな。本当に小さいころに家族旅行で沖縄に行ったときに見たあのショーはもうないのか……
確かに言われてみるとあれも動物愛護の精神には反しているかもしれない。
「そしてこれがこの桂浜で有名な坂本龍馬の銅像だよ」
「おお、とても大きい銅像じゃな!」
「実物はとても大きいのですね」
そう、よく写真などで見る坂本龍馬の銅像だが、実物はなんと13.5mにもなる。近くで見ると本当に大きな銅像であることがよくわかるんだよな。
坂本龍馬の銅像の横には展望台があって、龍馬と同じ目線で太平洋を見渡すこともできる。
「この坂本龍馬とは何者なのじゃ?」
「坂本龍馬は高知県出身の武士で、昔の日本にあった薩摩藩と長州藩の同盟を成功させ、江戸幕府を倒すきっかけを作った人だね」
勝海舟の右腕となり、薩長同盟を結ばせたり、日本で初めての会社となる亀山社中(のちに海援隊と呼ばれる)の社長となった人物でもある。
「なるほどのう。国と国の同盟を結んで政権を勝ち取った偉人ということじゃな」
「……まあそんなところかな」
日本の歴史を説明するのも結構難しい気もするな。幕府を倒すというのも革命とか反乱とも取れなくはない気がする。
ミルネさんの世界はまだ王政のようだし、あんまりそのあたりの歴史は教えないほうがいいかもな。……ミルネさんが反乱軍を率いて革命とかしても責任は取れんぞ。
「街中にいきなりポツンとあるのですね……」
「ふむ、小さいながらも朱色の綺麗な橋じゃ。この橋にもなにか深い歴史があるのかのう?」
「……ええ~と、期待しているところを申し訳ないんだけれど、この橋ははりまや橋と言って、日本三大がっかりスポットと呼ばれる場所なんだ」
日本の三大○○とかはよくあるが、その中でも三大がっかりスポットなるものもある。このはりまや橋もそのうちのひとつだ。
有名だから行ってみたけれど、実際にこの目で見たらがっかりしたスポットという意味らしい。
「……まあ確かに今まで見てきた観光地と比べて特段すごいというわけではありませんね」
「とはいえ歴史もある場所ではあるんだ。江戸時代のころからあった橋で、昔はもっと大きくて川の上に架けられていたから、実際に大勢の人達がこの橋を渡っていたらしいよ。それに桂浜と同じでよさこいに唄われてもいるんだ」
昔はもっと大きな橋で日常的に使われていた橋だが、その川が埋め立てられた際に架け替えられたようだ。現在では高知の街中にポツンとあって、下には小川が流れている。
今ではがっかりスポットととして逆に人を呼んでいるくらいだからな。高知駅や高知城、これから行くひろめ市場からそれほど遠くはないし、近くに行ったら寄ってみてもいいと思う。
「ほう、昼間なのにここには大勢の人がおるのじゃな!」
「ここはひろめ市場と言ってこのあたりに昔からある市場で、高知の名物が昼間から楽しめる酒飲みの聖地みたいになっているんだ」
そう、このひろめ市場はいわばお酒を飲めるフードコートで、たくさんテーブルやイスが並べられている。そしてたくさんの飲食店が販売している料理やつまみや飲み物をいろいろと買って楽しむわけだ。
ひろめ市場では高知県の名物料理や有名なお酒や飲み物を食べられるようになっている。もちろんお酒が飲めなくても最高に楽しめる場所だ。
「おお、すごい炎じゃな! あれは火魔法かのう?」
「あれは藁焼きだね。藁は火を付けると一気に燃え上がるんだよ。その一瞬の高温で魚の切り身を表面だけ焼き上げるのをたたきというんだ!」
高知県と言えばカツオのたたきが有名だ。その中でも藁焼きは火加減がとても難しい。簡単そうに見えて、あの高温の中で一瞬で焼き上げるためには熟練の技が必要となるらしい。
そして表面だけをサッと焼き上げたカツオには香ばしい藁の香りが移り、それを氷水で冷やして薬味を添えて完成となる。
うん、はりまや橋とはテンションが違うのは仕方がない。やはり料理を実際に作るところを見るのはテンションが上がる。
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