第19話 和歌山県③ 和歌山ラーメン、梅酒
「おお、これは神奈川県で食べたラーメンという料理じゃな!」
「これは和歌山県のご当地ラーメンの和歌山ラーメンだね。神奈川の家系ラーメンと同じ豚骨醤油味のスープだけど、味は結構違うんだよ」
「ここは普通の食堂みたいですね。ラーメン以外の料理もあるのですか?」
「和歌山の有名店は食堂や商店みたいな形式の店が多いんだよ。だからお店にはカレーライスとかうどんとかも普通に食べられる場所が多いね」
和歌山ラーメンは地元に根付いたラーメンだ。他にも早すしと呼ばれる1日だけ酢で締めた、なれ寿司の元になる寿司やゆで卵なんかも有名だったりする。
「おお、確かに前に食べたラーメンとは味が全然違うのう! こっちのラーメンもとっても美味しいのじゃ!」
「焼豚はしっかりとした醤油味でとても柔らかく、口の中で溶けていきますね。濃厚なスープですが、後味はスッキリしていて美味しいです」
「これが和歌山ラーメンという定義はないけれど、細いストレート麺で、カマボコが入っているお店が多いらしいね。それと和歌山県のほうではラーメンのことを中華そばと言うらしいよ。特に地元の人達は中華と略すことが多いんだって」
地元にはその土地特有の地元話がある。例えば和歌山県はみかんが有名で、小学校の給食にはみかんごはんが出てくるらしい。どんな味がするのか気になるところだ。それと同じみかんの名産地である愛媛県をライバル視しているとか。
他にも地元のスーパーの松源やオークワを知らない人はいなかったり、抹茶を使ったグリーンソフトというご当地ソフトクリームが全国で販売されていると思っていたりするらしい。
「……それでは明日の予定はこれでいきましょう。明日もよろしくお願いします」
「こちらこそよろしく。それと今日は少しお酒を買ったので、一緒にどう?」
「ええ、それではいただきましょう」
「喜屋武さんは梅酒とかの果実酒は大丈夫?」
「ええ。むしろそちらのほうが好きかもしれませんね」
「それならよかった。和歌山県は梅の名産地でもあるから梅酒が有名なんだよ。それと和歌山県で有名なじゃばらという柑橘類を使ったお酒もあるね」
和歌山県の観光を終えて、今日の宿へとやってきた。ミルネさんには本日のお土産である和歌山県のみかんとかげろうという銘菓を渡しておいた。今日はよく歩いたし、カロリーも消費したから、多少は甘いものを食べても問題ないだろう。……でも身体能力強化魔法を使っていたんだっけ。
こっちはこっちで今日はお酒とツマミを買ってきた。たまにはこうした息抜きも大事である。
「ツマミのほうは、これまた和歌山県の名物の金山寺味噌とマグロのトロ煮だよ」
金山寺みそとは米、大麦、大豆、なす、瓜、生姜、しそが入った味噌で、野菜などが入っているためそのままご飯のおかずや酒のツマミとして食べることができる。今回はそのまま食べる用ときゅうりに付けて食べる用に分けて用意した。
和歌山県の勝浦港や串本港ではマグロが有名だ。そのマグロを醤油、砂糖、みりん、生姜などで甘辛く煮込んだ料理だ。以前和歌山にいる友人から送ってもらったものだが、どちらもツマミとしては一級品であった。
「爽やかな梅の香りとまろやかな口当たりが良くて飲みやすいですね。じゃばらという柑橘類は初めて聞きましたが、甘みもある中で少し酸味と苦味がある独特の味で美味しいです」
「じゃばらは和歌山県のとある村で突然に一本だけ生えてきた品種らしいね。突然変異みたいなかんじなのかな」
「こちらの味噌はそのまま食べても美味しいのですね。果実酒にも合いますが、ビールにも良く合いそうです。マグロのほうは柔らかく味が染みていて美味しいですね。これはお酒だけでなくご飯にも合いそうです」
「俺もお土産でもらったことがあって、結構好きなんだよね。喜屋武さんもいろいろと大変そうだし、少しくらいは身体を休めたほうがいいよ」
喜屋武さんの仕事は俺との打ち合わせだけではない。俺と打ち合わせしたあとは明日の予定をさらに他の部下の人達と精査した上で、次の日の早朝から上司に報告をして、何かあった際の対応を準備したり、宿や交通の手配をしたりと……はっきり言って、俺なんかとは比べものにならないほどの仕事量だ。
「本当にそうなんですよ!」
「うおっ!?」
「まったく、上の連中は面倒なことばかり言ってくるし、作業量も多いし、私のことをなんだと思っているんですかね!」
「あっ、はい……」
……どうやら喜屋武さんもだいぶ不満が溜まっていたらしい。それに今日は酒のペースが早くて顔も赤いし、少し酔っているようだ。
「そりゃ、最初の頃はミルネ様を案内するのと同時に日本一周に同行できてラッキーとか思っていました。私は沖縄出身で鹿児島と東京にしか行ったことがありませんからね。
けれど、実際にはやることが多すぎるんですよ! それなのに上の連中は文句ばっかりで、実際にこちらに有益なアドバイスなんて一切なしですからね!
ミルネ様にこんなものを食べさせても大丈夫なのかとか、こんな庶民の食べ物を王族に食べさせて大丈夫なのかとか……本人がそういったものを食べたいって言っているだから、別にいいだろって話ですよ!」
「はあ……なんかいろいろとごめんなさい」
各地での名物や特産品を食べたいと言うことだったから、ラーメンとかうどんとか結構普通の人が食べる料理ばかり紹介してしまったかもしれないな。
「佐藤さんはいいんですよ!」
「へっ?」
「紹介してくれる観光のコースや料理も素晴らしいですし、ミルネ様も大変満足しています。なにより私達2人に案内以上の配慮もしてくれていますからね」
「ありがとうございます……」
俺も案内をする以上は2人のことを最大限に考えてはいるが、喜屋武さんはそのあたりをちゃんと見てくれていたらしい。
「あのクソ上司共を富士サファリパークの猛獣エリアに置き去りにするか、那智の滝から突き落としてやりたいくらいですよ!」
それ絶対に死ぬやつだからね!?
「喜屋武さんも大変なんだね。せめて観光をしたり、名物を食べている時くらいは力を抜いて楽しんでよ」
「……ちょっと喋りすぎてしまいましたね、大変失礼しました。それでは佐藤さん、また明日」
「はい」
喜屋武さんがここまで愚痴を言うとはな。よっぽど上司に不満が溜まっていたのだろう。その気持ちはブラック企業に勤めている俺にもよくわかるよ……
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