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食いしんぼうエルフ姫と巡る、日本一周ほのぼの旅!  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第17話 和歌山県① 熊野古道


「佐藤さん、失礼します」


「はい、どうぞ」


 三重県で最高級の松阪牛を堪能し、本日泊まる宿へとやってきた。今日は温泉宿ではなく、普通のホテルだ。いや、普通のホテルといっても、俺が普段泊まるようなビジネスホテルや数千円の安いホテルなどではなく、一泊数万円はしそうな高級ホテルだ。


 ミルネさんの部屋はともかく、俺の部屋は安い部屋なのだろうが、それでもかなり良い部屋である。これで給料までもらえるのだから、なんと素晴らしい仕事なのだろう。


「それでは明日の予定を話しましょう」


 喜屋武さんの服装はホテルなので浴衣はなく、すでに着替えたようで黒いスーツでもなく、普通の私服である。白色のスウェットトップスにグレーのパンツといったカジュアルな服装だが、これはこれで新鮮でいいな。


 おっと。そんなことを口に出してしまうと、またセクハラだと言われてしまう。喜屋武さんはそのあたりには厳しいからな。俺もちゃんと学習はしているのだ。


「はい。そういえば、喜屋武さんはホテル内ではスーツではなく私服なんだね」


「セクハラです」


「だからなんでだよ!」


 普通の会話しようとしただけじゃん! 言葉のキャッチボールもまともにできんのか!


「最近では女性の服装について質問した時点でセクハラとなりますのでお気をつけください」


「そうなの!?」


 さすがにそれは初めて聞いた! なに、今のセクシャルハラスメントの問題ってそんなに厳しいの!?


「さすがに今のは冗談です」


「おい!」


 マジで焦っちゃったじゃん! 一瞬本気で訴えられるのかと思って頭を下げる準備をしてしまったぞ。俺の土下座なんて激安プライスだからな。ブラック企業の営業マンにはプライドなんて必要ないのだぜ。




「……それでは明日の予定はこんな感じでいきましょう」


「はい、了解です」


 喜屋武さんとの打ち合わせが無事に終わった。


「それでは明日もよろしくお願いします」


「あっ、喜屋武さん。今日はお酒はないけど、お菓子でもどう? ミルネさんにも少し渡したけれど、それでも量が多いし、賞味期限が早いんだよね」


「……赤福ですか。ありがたくいただきましょう」


 赤福餅とは三重県のお土産ナンバー1の柔らかいお餅を餡で包んだお菓子である。


「おや、白色や黒色のものもあるのですね。こちらは初めて知りました」


 今回は普通の赤福餅の他に、白小豆の白餅と黒砂糖の黒餅も購入したのだが、さすがにミルネさんと2人で食べるには少し量が多かった。


 ちなみに今は販売休止となっているが、一時は緑色や黄色もあったらしい。そして毎月1日には朔日餅(ついたちもち)と呼ばれる限定で販売しているものもある。ただし朝からものすごく並ぶらしい……


「数年前から販売を始めたらしいよ。うん、どっちも美味しい!」


「全部味が違っていて面白いですね」


「唯一の欠点が賞味期限が短いから、頻繁に食べられないところなんだよね」


 悲しいことに、このお菓子は数日しか持たないんだよね。


「ご馳走様でした。とても美味しかったですよ」


「……気に入ってくれて良かったよ」


 ほんの一瞬だが、赤福を食べた時に喜屋武さんの表情が少し緩んだ。どうやら喜屋武さんは甘いものが好きらしい。お酒の他にもその地域の甘いものがあれば買ってくるとしよう。






◆  ◇  ◆  ◇  ◆


「2人とも元気だなあ……」


「タケミツ、もう少し頑張るのじゃ!」


「まったく、大の男が情けないですね」


 俺達は山道を歩いてる。ここ熊野古道は『紀伊山地の霊場と参詣道』という世界遺産に登録されている場所だ。


 もちろん俺はこの先に行ったことがあるから、ミルネさんの転移魔法で、ひとっ飛びなのだが、今回はせっかくなので、こちらの世界の山登りもしてみようという話になって、那智駅から那智の滝まで7〜8kmの距離を歩くことになったのだ。


 元自転車で日本一周をしたのも遠い過去の話……とはいえ休日はたまに自転車で走ったり、キャンプをしたり、営業として走り回ったりもしていたから、普通の人よりは体力があるはずだ。


 にもかかわらず、俺が最初にバテてしまったらしい。喜屋武さんはこういう仕事をしているから体力があってもおかしくはない。というより、よく黒いスーツやあのヒールで山を登れるよな……


 ミルネさんの隠密魔法がなかったら、山を下るすれ違う人達に二度見どころか三度見されてもおかしくない姿だ。しかし喜屋武さんはともかく、まだ幼いミルネさんにこんな体力があるのはちょっとおかしい。


「……もしかして身体能力を強化する魔法とか使っています?」


「な、なんのことかのう? 妾にはサッパリじゃ!」


「「………………」」


 やはりか……


 道理でこれだけの距離を歩いたのに息切れひとつしていないわけだよ。しかし誤魔化すのはうまくないみたいだ。だけど可愛いから、なんとなく許したくなってしまう。




「ふう〜ようやく入り口に辿り着いた」


 歩くこと数時間、ようやく熊野那智大社の入り口である大門坂まで到着した。


「境内に入る前に腹ごしらえといきましょう」


 熊野那智大社に入る前にこの辺りで腹ごしらえといこう。大門坂前には大きな駐車場があり、ここまで車やバスで来ることもできる。まあ最近は美味しいものを食べるだけ食べて、全然運動をしてこなかったからちょうど良かったかもしれない。


「今日の昼食は和歌山県の名物のめはり寿司、ちゃりこ寿司、なれ寿司だ」


最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございます!

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誤字脱字、日本語のおかしいところがありましたら教えて頂けますと非常に嬉しいです( ^ω^ )

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