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最終話 これから


「ふう~いつもの料理もおいしかったのじゃが、今日の料理は格別じゃったな!」


「喜んでいただけで何よりです」


「俺もご相伴にあずかれて最高だったよ。さすがにこんな高級料理を食べたのは初めてだ」


 晩ご飯はスカイツリーの中にあるレストランで夕陽が沈む光景を見ながら、高級食材をこれでもかというほど使った高級ディナーだった。


 レストランもすべて貸し切って、普段レストランでは出ない高級料理を有名シェフが料理してくれたようだ。改めて思い出すけれど、ミルネさんは国の超要人だもんな。これほどの対応も当然のものだ。


 俺も普段なら絶対に食べられないような高級料理を楽しめて最高だったな。


 もちろん日本各地の名物もおいしいのだが、最高の食材に最高のシェフが作った料理はレベルが違った。まあ、さすがにこれが毎日だと飽きてしまうと思うけれどな。


「アンリやタケミツにはこの旅で本当に世話になったのじゃ。改めて礼を言うのじゃ!」


「そういっていただけて嬉しい限りです」


「むしろ俺の方こそ本当に楽しませてもらったよ。それじゃあ喜屋武さん、あれを」


「はい」


「うむ?」


 喜屋武さんが席を立ち、ミルネさんにある物を渡す。


「こっ、これは!?」


「今回の旅の記録を映像にしたものだよ」


「こちらは写真をまとめたアルバムといいます。そしてこちらはデジタルフォトフレームと言います。今回の旅の思い出として、お互いの国に持ち帰る許可はすでに取ってあります」


 今回日本各地で購入してきた様々なお土産は別で異世界に送るそうだ。そしてそれとは別にミルネさんへ渡したのは今回の旅の写真をまとめたアルバムとデジタルフォトフレームである。


 実は今回の旅で俺と喜屋武さんは結構な頻度でカメラを使って写真を撮っていた。そして料理店のお店の人に頼んだりして俺たちの写真を撮ってもらっていたのだ。


 そしてそれを印刷して大きなアルバムに収めたものと、写真のデータをデジタルフォトフレームに入れた。しかもこのデジタルフォトフレームは特別製で、強力な電池を内蔵していて数十年は持つそうだ。


「す、すごいのじゃ! これ全部この旅の記録なのじゃな!」


 アルバムについてはだいぶ写真を厳選したつもりだが、大きなアルバムが広辞苑以上の分厚さになってしまった。そう考えると今は薄いデジタルフォトフレームって便利だよね。


「旅の思い出は心に刻むものだけれど、やっぱりそれとは別に映像としての記録はその思い出をより鮮明に思い出させてくれるからね。今回の旅の思い出としてもらってほしいんだ」


「私も仕事という立場ではございましたが、ミルネ様と佐藤さんと一緒に旅をできて本当に楽しかったです。この2か月の思い出は決して忘れません」


「……うむ。タケミツ、アンリ、本当に感謝するのじゃ!」


 アルバムを見ながら、ミルネさんが少し涙ぐんでいる。どうやら喜屋武さんと考えたサプライズはうまくいったようだな。


 俺もこの2か月は本当に楽しかった。


 始めは仕事中にいきなり拉致同然に連れていかれたけれど、ミルネさんと喜屋武さんと旅する日本一周はひとりで旅をするのとは違った楽しさがあった。3人で笑いながら日本各地の観光地を巡り、名物料理を食べたのは最高の思い出だ。


 喜屋武さんと一緒で、転移魔法で日本を一周するというとんでもない経験をしたこの2か月を決して忘れることはないだろう。




「それじゃあミルネさん、お元気で!」


「うむ、タケミツ。此度は本当に世話になったのう。妾の国を代表して礼を言うのじゃ!」


「勿体ないお言葉だよ。向こうの世界に帰っても忘れないでくれると嬉しいな」


「ふふっ、忘れるわけがないじゃろ。それではタケミツ、またな!」


「うん、またね!」


 手を振りながらミルネさんは喜屋武さんや護衛の人たちと一緒に車へ乗って去っていった。


 そこに残ったのは2か月ぶりの我が家だった。何かあったらミルネさんの転移魔法でいつでも戻れると言われていたけれど、結局ほとんど休みなく旅をしてきたものだ。


「………………」


 ほとんど2か月ぶりの懐かしの我が家はがらんとしていてとても寂しかった。


 一応電気や水道はそのままにしておいたから、スイッチを入れると電気が付いた。


「……そういえば前回の旅が終わった時も旅の達成感より旅が終わった寂しさの方が大きかったな」


 誰もいない家で帰りにコンビニで買ってきたビールを飲みながらそんなことを思う。こうして一人になると、旅が終わったことをより一層自覚してしまう。


 今回はそれに加えてミルネさんと喜屋武さんの別れもあるから、余計に寂しいのかもな。喜屋武さんとは明後日また会い、その後も会える可能性はあるが、異世界から来たミルネさんにはもしかしたらもう会うことができないかもしれない。


 人との別れはこうも寂しくなるとはな。






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「佐藤さん、ミルネ様は無事に異世界へと帰っていきましたよ」


「そうですか。それはよかった」


 ミルネさんと別れた翌々日、家の前に怪しげな車が停まり、以前と同じビルの一室へと案内される。


 そしてそこには喜屋武さんがいた。どうやら今日の朝無事に異世界へ帰れたようだ。


「この度は本当にありがとうございました。佐藤さんに案内をしていただけて、本当によかったです」


「いえ、こちらこそ喜屋武さんにはお世話になりました。喜屋武さんも本当にお疲れさまでした。俺自身もとても楽しかったですよ」


「そう言っていただけて何よりです。それでは今回の報酬は振り込んでおきますね。明日には確認ができると思いますよ」


「はい、ありがとうございます!」


 そう、今回の旅の案内には報酬が出る。その金額はなんと1億円だ!


 最初はこんなに怪しい仕事で案内をするだけでそんな大金がもらえるのかと怪しんだが、さすがにもう疑ってはいない。昨日のスカイツリーのレストランの貸しきりとか、一体いくらしたんだろうな……


 それにしても1億円かあ~何に使おうか迷うところだ。ありがたいことに税金とかもなく、そのまま1億円全部を使えるらしい。


「そういえば佐藤さんは今後どうするのですか? 1週間は休みで、その後は元の会社に戻れるよう手配もできますが」


 ありがたいことに昨日から1週間は会社を休みにしてくれた。元の会社にも無事に戻れるようだ。


 ちなみに昨日はこの旅の疲れや気が抜けたこともあって、ぐっすりと寝て貯めていたアニメを見てのんびりと過ごしていた。


「どうしようか考え中かな。1億円あれば働かなくてもいいし、今の会社を辞めてしばらくのんびりしようかとも考えているんだ」


 今は独り身だし、1億円もあれば当分の間は働かずにすむ。一生遊んで暮らせるというわけじゃないけれど、今の会社を辞めてのんびりしようかとも思っている。


「それもよいかもしれませんね。そういえば佐藤さんは海外にはあまり行かれないのですか?」


「以前に日本一周が終わったあとはやっぱり海外にも興味が出て、すでに何か国かは行ったよ。でも社会人になると、どうしても時間もお金も足りなかったからね」


 今まで海外なんて行ったことはなかったけれど、旅を終えてからは興味が出て、近場の韓国や台湾なんかには行ったことがある。だけど、海外はどうしても時間やお金がかかるから、そう簡単にはいけないんだよな。


「うん、せっかく結構な大金をもらったことだし、会社を辞めて海外を旅してみてもいいかもしれないな」


「そうですか、それはちょうどよかったです」


「んん……?」


 ちょうどよかったとはどういうことだ?


「佐藤さん。我々からあなたに依頼があります」


「……依頼?」


 あれっ、なんだかデジャブのような気が……


「実はミルネ様が今回の日本一周の旅をとても気に入ってくれたようで、またこちらの世界に来たいと仰られました。そして今度こちらの世界に来る際には日本だけでなく、他の国を回ってみたいとのことです」


「え~と、つまり……」


「佐藤さんには次回ミルネ様がこちらの世界へ来る時に世界一周の案内を依頼したいと思います」


「やっぱりかああああ!」


 日本一周が終わったら世界一周……旅人なら多くの者がそう考えてしまうが、まさか異世界のエルフのお姫様もそう考えてしまうとは……


「佐藤さんはミルネ様がこちらに来るまでに、まだ行ったことのない国に一度訪れて視察に行ってください。国への交渉はこちらでおこないますので。こちらが契約書になります」


 ……またしてもデジャブか。そういえば最初も契約書にサインをした覚えがある。


 なるほど、また転移魔法で移動できるように、予め行く国を飛行機で一度訪れるわけか


「わかりました。この依頼を受けます」


「おや、決断が早いですね」


「俺も世界を回ってみたいと思っていたところだからちょうどいいよ。もちろん国のお金で行けるんだろう?」


「ええ、もちろん視察の費用につきましては国が負担します。さすがにそこまで高級な宿には泊まれないですけれどね」


 契約書を見ると、移動費や基本的な食費や宿代は国が出してくれるようだ。それにまた1億円の報酬があるみたいだし、断る理由はないだろう。


「それなら問題ないよ。それこそバックパッカーの宿でも問題ないし」


 そこらへんは元旅人などで安宿で問題ない。


「承知しました」


 どうやら引き続き喜屋武さんとは長い付き合いになりそうだ。


 それにミルネさんとはまた会えるらしい。そういえばミルネさんは別れ際にさよならじゃなくてまたねと言っていた。もしかしたら、すでにこのことについて聞いていたのかもしれない。再びミルネさんと再会できそうで何よりだ。


 それにしても世界かあ……今度はどれだけ時間がかかるんだろうな?


「引き続き私がこちらの案件を担当します。……視察には私も同行しますので、今後ともどうぞよろしくお願いしますね、佐藤さん」


「んん……?」


 喜屋武さんも同行ということはつまり、視察は二人きりの海外旅行ということになるのだろうか……?




ー完ー




――――――――――――――――――――――――

【あとがき】


こちらの作品を最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。


この作品はエルフのお姫様と一緒に日本一周するという一風変わった作品となります。ブックマークや星はあんまり伸びなかったので、完全に趣味の作品となりますね(笑)


元々旅が好きで、日本一周をしたこともあり、この作品に出てくる8割くらいは実際に私も行ったことのある観光地と食べた名物となります。残りの2割は天候やお金の都合で、行けなかったり食べられなかった名物ですね。

また機会があったら訪れてみたいところです


読者の皆様にもこんな観光地や名物があるんだと思っていただいたのなら幸いです。

改めて最後まで読んでいただいて感謝です


旅はいいですよ~

皆さんもぜひいろいろな場所へ旅してみましょう!


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