第108話 埼玉県① 秩父、わらじかつ、鷲宮神社
「これは見通しが良い場所じゃな」
「この羊山公園は秩父が見渡せる公園だからね。日が暮れる夕焼けの時間帯もすごく綺麗なんだよ」
今日は埼玉県の秩父へとやってきている。この旅もあとは埼玉県と東京を残すのみだ。感慨深いのと同時にまだ旅を終えたくないという気持ちも非常に大きい。最初いきなり今回の依頼を聞いた時は驚いたものだけれど、毎日日本各地の観光地を楽しんで、おいしい名物を食べられるんだから最高だよね。
むしろこれから今まで通り会社員の生活に戻るとか辛い……そういえば前回の旅の時も関東に入ってから帰りたくない、もっと旅を続けていたいという気持ちが強くてゆっくりと回っていたな。やはり旅の終わりはそんな気持ちなのだろう。
秩父市は埼玉県の中で一番大きな市で、自然にとても溢れている場所だ。
ここ羊山公園の見晴らしの丘は秩父市街を一望できる公園だ。公園と言ってもかなり広く、家族で楽しむ広場やふれあい牧場などもある。ふれあい牧場にはこの公園の名前の通り羊がいる。昔はめん羊をしていたらしい。
「特に春の時期はこの芝桜の白やピンク色、淡いブルーの花が一面に広がってとても綺麗なんだ。その時の観光客は本当に多いんだよね」
「ふ~む、それはぜひ見たかったのう」
芝桜とは普通に木に咲く桜ではなく、茎がまるでシバのように広がり、春にサクラに似たかわいい花を咲かせることからその名が付いたようだ。
春の羊山公園の芝桜はとても有名で、一面に広がった綺麗な芝桜を見に多くの人が訪れる。広々とした丘一面に広がる色鮮やかな芝桜はとても美しいものだ。時期がずれて残念だったが、春にまた来られればいいんだけれどな。
「おお、これは随分と大きなカツじゃな」
「これはまた大きいですね。こちらは味噌の香りがしますね」
「秩父の名物のわらじかつ丼だよ。わらじって言うのは昔履かれていた履物のことだね。それくらい大きいカツってことだよ。こっちの方は豚みそ丼だね」
そして昼食は秩父名物のわらじかつ丼と豚みそ丼だ。
秩父のわらじかつ丼は普通のカツ丼とは異なって、薄く揚げられたカツが卵でとじられず、甘い醤油ダレがかかってご飯の上に乗っている。その大きさは丼をはみ出して蓋が閉まらないほどだ。
「むむ、このタレのかかったカツはとってもおいしいのじゃ!」
「ええ。カツが薄いため、さっくりとした食感がいいですね。このタレも良く合います。普通のカツ丼もおいしいですが、こちらのわらじかつもおいしいです」
たまごでとじられたカツ丼もおいしいのだが、それとは違った味でこちらのカツもいける。
「こっちのお肉も甘辛い味噌の味がおいしいのじゃ」
「炭火の香りも加わって素晴らしいですね」
豚みそ丼は昔イノシシや豚を保存する際に味噌漬けにしていたものからできたものだ。その名の通り、味噌漬けにした豚肉を炭火で焼いて丼に載せたものである。
そしてこのご飯も厳選された米に秩父の自然豊かなおいしい水で炊かれたご飯だ。味噌も厳選されているし、こだわりぬかれた丼になっている。秩父に来たらどちらかは食べたい名物だな。
ちなみに秩父の北の方には長瀞がある。長瀞には大きな川があり、夏は涼しさを求めて多くの者がここを訪れる。ラフティングやカヤックといった川下りなどが有名で、釣りやバーベキューなんかも楽しめる場所となっている。
さすがにこの寒い時期に川下りはちょっと危険ということもあって今回は訪れないが、夏はおすすめだな。
「ふ~む、ここがその神社か」
「鷲宮神社は関東で最古のとても歴史のある大社だよ」
秩父に続けてやってきたのは埼玉県久喜市にある鷲宮神社だ。天穂日命とその子の武夷鳥命、および大己貴命を祭神としている。
ここも有名な神社なので、年明けの初詣に来る参拝客がとても多い神社である。
「もちろん神社としても有名だけれど、某アニメの聖地としても有名だね」
「なるほど。それでここに来るまでに商店街にアニメの旗があったのですね」
「そういうこと。アニメの聖地として商店街でこういった盛り上げ方をするのもこの商店街がはしりに近いらしいね」
最近ではアニメの舞台になった地をまわる聖地巡礼だが、当然昔はそれほど有名でなかった。しかし、最近ではアニメの方もあえてその地域の特色や実際に存在する場所を出している。
そして地元の地域の人が一緒にご当地グッズなんかを販売してアニメの聖地を盛り上げている。ここでも様々なグッズが販売されていて、中にはソースなんかも売っているからな。
こういった聖地を前面に押し出している地域ってアニメ好きにはたまらないよね。ただし、聖地巡礼をする時にはその場所のルールを守ることが大事である。その場所を汚して帰ったり、地域の人たちに迷惑を掛けずに楽しまなければならないぞ。





