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01不幸な人は復讐を決意したようです


男を殺すこともあれば女を殺すこともある。

大人を殺すこともあれば子供や老人を殺すこともある。

庶民を殺すこともあれば権力者を殺すこともある。

犬を殺すこともあれば猫を殺すこともある。

日本人を殺すこともあれば外国人を殺すこともある。

幸せな人を殺すこともあれば不幸な人を殺すこともある。


それが不幸な人。


・・

・・・・


俺を苦しめた日本に復讐する!


俺は中国の交渉人に会うことができた。


・・

・・・・


「・・約束の金は?」


開口一番、相手はお金を要求してきた。

会うための条件として10万円・・渡してすぐ逃げたりはしないよね?


「ちゃんと用意してきたよ。それより本当なの?人民解放軍に入れるの?」


「まずは金だ。」


俺はしぶしぶ10万円を渡した。


「お前は日本でどんな活躍をしてきた?それなりの成果があればすぐに入れる。」

「でなければすぐというわけにはいかない。お前は突然やって来た外国人を信用するか?」


「・・」


「これを見て決めろ。この通りにすれば人民解放軍に入れる。」


相手からメモを受け取った。

そこには日時とアドレスが書かれてあった。


「10万ならここまでだ。もう10万持ってきたらもう少しマシな話をしてやる。」


「そんな話が違う!」


「今の時代、お前みたいなやつはいくらでもいる。」

「嫌ならよそをあたれ。」


そいつは俺を置いて行ってしまった。

残されたのはメモだけ・・これが10万円で得た物・・


・・

・・・・


メモに書かれたアドレスを打ち込んだがページは存在しなかった。

騙された?・・いや、指定の日時にもう一度打ってみよう。


・・・・


指定日時の1分前。俺はメモのアドレスを打ち込んだ。


今度はページが開いた。

残り時間のカウントダウンが行われている。


1分後・・カウントダウンが0になった。


声が聞こえた。


「日本に抗おうとする日本人たちよ、よく来てくれた・・と言いたいが、ログイン数が少ないな。」

「日本人は時間を守る人種だと聞いていたが、これはどういうことだ?」

「このサイトへ来た者は私たちと共に戦うと誓った者ではないのか?」


「キミたちは役に立つのか?」


「同じ無能なら、日本人より中国人を優遇する。当然だろう?」

「正直なところ日本を裏切りたい日本人は十分すぎるほどいるのだ。」


「日本の土地を中国人が買い漁っている話を聞いたことあるかな?あれは売る日本人がいてこそ成り立つ。」

「メガソーラー事業を中国企業が受注しているのも日本人の協力があってのこと。」

「総理大臣の所属する派閥の政治資金パーティに中国人が参加して政治資金を提供している。」


「なんというかだね・・とっくの昔から日本人はみんな売国しているのだよ。」

「これを見ているキミたちは遅きに失しているという自覚を持ってもらいたい。」


「日本人は日本と中国を誤解している節がある。」


「日本の政治的権力は個人より政党にある。」

「ならば、日本の政党すべてに中国の息がかかった人物を送り込めばいい。」

「政治家がどれだけいようが政党の数は少ない。買収は容易だ。」


「さらにメディアを買収して批判を抑え込めば日本人は騒がない。いや、騒いでも誰も気付かない。」


「日本は与党も野党もネット工作に資金を出しているのを知っているか?」

「新聞もテレビもネットも工作員で溢れている。キミたち日本人は操作された情報ばかり仕入れている。」


「ロシアとウクライナの戦争、その正確な情勢をどれだけの日本人が知っているかい?日本の報道だけでは部分的にしかわからない。」


「日本の経済界も金でなびく。中国の超限戦は既に日本を飲み込む寸前まで進行した。」


「戦争になれば日本在住の中国人77万人は国防動員法に則り日本に襲い掛かる。」

「日本の野党が在日外国人の権利を主張して批判を受ける裏で、与党が在日中国人を増やす。」


「これがキミたち日本の民主主義だ。何も変えられない愚かで醜い国。」


「キミたちは素晴らしい人生を送っているのか?」

「違うよね?それならここへは来ない。」


「日本人は中国を独裁だと批判して、中国が裕福になれば民主主義になるなどと妄言を昔はしていた。」

「だが日本を見てみるがいい。外国に乗っ取られ外国にしっぽを振り国民を蔑ろにして貧富の差を広げていく重税国家だ。」

「武器は奪われ騒いでも無視されただただ虐げられるだけ。日本を知れば知るほど民主主義がゴミに見える。」


「少なくとも、今の中国を民主主義にする利点は見つからないな。」


「さて、厳しいことを言ったがキミたち日本人にも役割はある。」


「中国が日本を攻めるのは悪しき日本の解放にもつながる。」

「だが強大な敵が立ち塞がっている・・わかるね?」


「キミたちには在日米軍を攻撃してもらいたい。」


「別に米軍基地へ突撃しろと言ってるわけじゃない。町に出てきた海兵隊員を襲えばいい。」

「キミたち不幸な日本人が繰り返し繰り返し米兵を襲う。」


「アメリカが・・もう日本人なんか助けたくないと言い出すまでやるんだ。」


「それができたらすぐにでもキミたちを歓迎しよう。」


「正直なところ、キミたち日本人を迎え入れると国民から不満が出るんだ。」

「だが”アメリカ軍を襲撃した日本人”という肩書きなら人民解放軍でもヒーローになれる。」


「さすが日本人は違う!と我々に言わせてくれ。」


「日本への復讐にもなる。実に単純で誰でも挑戦できることだ。」


「失敗してもいいんだ。挑戦することに意味がある。」

「在日米軍が日本人によって襲われた・・という事実が大切なのだよ。」


「もちろんうまくいった方がいいがね。」


「キミたちの健闘を期待する。結果が出たらまた会おう。」


・・

・・・・


放送は終了した。声は止み静寂が場を支配する。


・・在日米軍を襲えだって?そんな無茶な!


でも・・それで日本に復讐できるなら・・


俺は・・・・休日を利用して沖縄へ行った。


・・

・・・・


―――――

国土面積の約0.6%しかない沖縄県内に、全国の約70.3%の在日米軍専用施設・区域が依然として集中しています。

(防衛省・自衛隊サイトより抜粋https://www.mod.go.jp/j/approach/zaibeigun/saco/)

―――――


中国が日本を攻めるなら、沖縄の米軍が厄介だと思うはず・・つまりはここを狙えば俺は評価される。


人民解放軍にも入れるはずだ。


ここで・・・・米兵を襲撃すれば・・・・


セミの鳴き声が聞こえる。


俺は神経を集中して・・服の上からポケットに入っている刃物に触れてみる。

・・・・これで・・・・襲う・・・・それが正しいルートだ・・・・


そうだろう?他に方法なんてない。

ありったけの恨みを込めてやるんだ!


「お兄さん」


「え!?」


「お兄さんも反基地の人?」


「え、ええまぁ・・地元の方ですか?」


「生まれはアメリカ統治時代の沖縄。県外で働き定年になり地元へ戻ってきた。」

「沖縄の外から見ているとよくわかる・・基地は無くならんよ。」


「沖縄は返還されたが東アジア安定のためと米軍基地は残された。」

「日本が東アジアを安定させられなければアメリカは基地を無くさない。これは当時からずっと言われてた。」


「しかし日本は軍事に力を入れず経済に投資をし続けてきた。」

「防衛はアメリカ頼み・・憲法9条は残したまま、自衛隊はいつまでも軍隊にならないまま。」


「朝鮮半島有事が起きたら日本が解決できるか?台湾有事が起きたら?」


「今になって軍事費をあげようとしているが、軍事の基本は富国強兵。」

「長いこと経済が停滞し貧富の差を広げた日本が軍事費をあげれば国民負担となる。」


「国内をガタガタにしながら軍事力をあげて目指すは北朝鮮か?」


「・・基地は無くならんよ。お兄さんも無駄なことはせず家に帰んなさい。沖縄の人じゃないんだろう?」


「まぁ、はい・・」


「こんな年寄りの話を真剣に聞いてくれてありがとう。」

「・・お兄さんは、まだ間に合う・・」


・・お爺さんは去っていった。


俺は・・観光して沖縄を後にした。

沖縄って、町にヤシの木みたいのがあるんだな。

うちの地元に桜並木があるけど似たようなもん?


・・

・・・・


休日が終わればいつもの日常が帰ってくる。


俺は契約社員として働いている。


派遣から契約になった。


仕事は変わらない。手取りは・・少し減った。

時給から月給に変わったからとかなんか色々言われたけど、その説明って俺に利点ある?


正社員にならないかとは言われている。でも迷っている。


正社員になるとボーナスは出るけど月給はさらに下がるって・・契約から正社員になった人に言われた。


な・ん・で?

まぁ安定雇用にはなるらしいけど・・派遣も契約も期間決まってるからなぁ・・


・・

・・・・


俺の年収は250~300の間くらい。

外見もパッとしない。結婚なんて夢のまた夢。


未来なんてない。


・・俺が悪いの?


俺は・・いつものサイトを開いた。


・・

・・・・


そのサイトの名前は”悪魔の声”


決して見る人の利にはならないと注意書きがされている。


俺は今日の更新を見た。


悪魔の声サイト


―――――


「昔の庶民は子供の頃から親の仕事を手伝ったり家事や子育てを手伝ったりしていた。」

「その大半が農民になる。戦争が起きれば徴兵され戦う。」

「身分は決まっていたけど、下剋上がなかったわけじゃない。」


「国は庶民に対して人生のレールを敷く。」


「では現代。国は庶民に対してどんなレールを敷いている?」


「子供の頃は学校へ行け。労働は規制。」

「大人になったら自由と言いながら生きるために労働しないといけない。」

「子供時代の労働は規制されているので大抵は下っ端労働者になるしかない。」

「老人になっても働け。」


「これが現代の日本が敷く人生のレール。」

「ここから離れたら人生の落とし穴が待っていることもある。」


「例えば中国へ行って拘束されたら?」

「以前、上海でロックダウンが起きた時に日本人が亡くなった。」

「これを日本政府の責任だとは言わないだろう。」


「例えば中国の武漢でコロナウィルスが発生したら?」

「日本政府が武漢にいる日本人を救わなくても責任は問われないだろう。」


「理想を言えばすべての国民を無条件に救ってほしい。」

「しかし無制限に国民を救うことはできない。」


「勝手なことをしている人まで救うのは余裕がある時だけ。」


「人生の落とし穴に落ちたくないなら、国の敷いたレールを歩きましょう。」

「勝手なことをしたいなら自己責任だよね?」


「・・」

「・・疑問に感じてくれた?」


「子供の頃は学校へ行け・・教師の体罰どーん!いじめどーん!」

「大人になったら労働者に・・ブラック企業どーん!」


「どうして・・どうして・・」

「どうして国が敷いたレールの上に人生の落とし穴があるの!?」


「どうして中国の武漢でコロナが発生したら政府はチャーター便を出して助けたの?」


「おかしいよ。どういう基準で国民を救ったり見捨てるの?」


「こんな政府信用できない。」


「見捨てられた不幸な人たちへ。」


「あなたたちは正しい。間違っているのは日本政府だ。」



「・・なんて言葉に騙されてはいけない。」


「片方が間違っていても、もう片方が正しいとは限らない。」

「両方正しい場合もある。両方間違っている場合もある。」

「部分的に正しく部分的に間違っている場合もある。」


「正しさも間違いも無数にある。」


「あなたの正しさを探して。」


「誰に否定されようとも考えを曲げない絶対の正しさを。」


―――――


・・

・・・・


ふー。やっぱり悪魔の声はためになるなぁ。よくわからんところも多いけど。


簡単に考えを曲げちゃだめだよな。


よし!絶対日本に復讐する!

もう考えを曲げたりしない!絶対の正しさを持とう!


再チャレンジだ!

沖縄へ行って米兵を殺す!


・・

・・・・


飛行機で再び沖縄の地に降り立つ。


2回目なので慣れたもんだ。


俺はまっすぐ米軍基地へ向かった。


・・・・


そこでは反基地デモが起きていた。


今まで何度も起きていたデモ。でも・・それで何か変わっただろうか?

長い間、無意味なことをしているんじゃないか?


この人たちは・・時間をかけられるだけの余裕があるのかな・・


歳をとったらできないこともある。


俺はずっと焦っている。

取り戻せない過去、失われた未来。


悠長なことはしてられないと思っている。


・・・・この人たちは・・・・違うの・・?

どうして解決しないやり方を続けているの?


・・

・・・・


俺は何もできなかった。

お土産を買って帰った。


なんか偉そうなこと思ったけど、結局何もできなかった俺はあの人たちよりもひどい。


無能は詐欺もできないって言うけどその通りだ。


無能は本当に何もできない。


無能は嫌だ・・嫌だ・・


でもどうすることもできない・・無能だから・・だから無能・・


・・

・・・・


家に帰り悪魔の声サイトを見る。

きっと悪魔の声なら俺を癒してくれる。


悪魔の声サイト


―――――


「誰に否定されようとも考えを曲げない絶対の正しさ。」


「それを実現するには他者の意見に耳を傾けなければならない。」

「なぜなら人間は生まれながらにして絶対の正しさを持っていないから。」


「自分の外から正しさとは何かを学ばなければならない。」


「この難しさは”他者の言葉を無視するために他者の言葉を受け入れる”ことにある。」

「そして今現在得ている正しさは明日も正しいとは限らない。」


「正しさは変わる。」


「変わらない絶対に正しいことはこの世にひとつしかない。」

「・・人はいつか必ず死ぬ。この正しさから逃げられた人はいない。」


「だから・・私の話も正しいとは限らない。今日正しくても明日正しいとは限らない。」

「明日間違っていても明後日は正しくなるかもしれない。そんな程度。」


「変わることを恐れないでほしい。変わらない・・変われないことの方を恐れてほしい。」


―――――


・・

・・・・


変われない・・か。今の俺じゃないか。


沖縄に行って米兵を殺せば・・変われるのだろうか?


いや、変わらなければならない!



もうこんな生活いやだ!!!



・・

・・・・


次の休日・・俺は沖縄へは行かなかった。


怖い。


殺したくない。


足が前に進まない。


やりたくない。


俺は・・どこまで無能なんだ・・


悪魔の声サイトを見ることもできなかった。

どんな顔で見ればいいんだ・・


・・

・・・・


悪魔の声サイト


―――――


「不幸になる方法は簡単だ。」


「本能を制限すればいい。」


「食べたいものを我慢して安いものを食べ、遊びたいのを我慢して、恋愛を避け隣に愛する者のいない生活をする。」


「幸せになりたいなら、食べたいものを食べ、楽しく遊び、愛する人が隣にいればいい。」


「幸せになるのに高度な文明が必須というわけじゃない。昔の人が全員不幸というわけじゃないだろう?」

「本能の中に幸不幸がある。競争が幸不幸をもたらしたり・・」


「人間は人間社会を作り出した。」


「どこを目指しているんだろうね。」


―――――


「日本では毎年約二万人が自殺している。」

「私はいつも思う。今年は自分の番なんじゃないかって・・」


「いつも死の恐怖に怯えている。」


「みんなは違うの?」


―――――


・・

・・・・


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