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The united front

「ちょっと待って。一人でやるって、なにをやるの」


 すかさずエレノアがちゃちゃを入れてきました。全くなんにでもくちばしを突っ込んでくる嫌な女です。まあ、そのお陰でゼルヴォス様を離れにお連れできたのではありますが……


「だから、解呪だっていっているでしょう。魔法を扱えない人がいても邪魔なだけよ」


 わたしはいい放ちます。それはそれ、これはこれです。


「分かった。じゃあ、ヘンドリックやエッダたちはもどってちょうだい」


 ヘンドリックやエッダたちは、とは何事でしょう。


「なにを言っているの? あなたも同じよ」


 慌てて釘を刺します。邪魔なのはあなたも同じなのです。


「え? わたしにも出て行けって? 冗談でしょう」


 全く冗談ではありません。


「大真面目よ。あなたは解呪ができるの?」

「できないけれど、いれば何かの役にたつかもしれない。一人より二人の方が絶対にいいわ」


 わたしの言葉に一瞬エレノアは怯んだような顔をしましたが、すぐに反論をしてきました。

 全くこの女は諦めると言う言葉を知らないようです。本当に呆れます。とは言え、全くトンチンカンでもありません。1人より2人のほうが取れる選択肢が多くなるのは間違いありません。それに彼女はイルシャーリアンなのです。魔力を集めることも操ることにも長けていました。確かに居れば役に立つかもしれません。

 

「わかりました。では、エレノア様も残ってもらいましょう。後の人はこの部屋から出て行ってください」


 譲歩することにしました。良いでしょう。一時休戦です。

 

「それで、どうするの?」


 皆が部屋から出ていくとエレノアが言いました。

 

「さっき少し説明したけど、ゼルヴォス様にかけられた呪詛は複数です。ぞれぞれに解呪の術式が異なるの。

その術式を行使するのは本来なら専門の解呪師リムーバーにしかできないのですが、幸いにもここには試作中のマギアプレートがあります」

「それそれ。解呪のマギアプレートなんて存在するの?」


 少し感心しました。マギアプレートのことを多少は知っているようです。ならば話は早い。


「あります。解呪の魔法陣を細かな部分に分割して、それを一旦複数のプレートで作った後、組み立てて目的の魔法陣にするの」


 早口で説明しながらゼルヴォス様の状態を確認します。


「これは呪、棄、穢の組み合わせ。

そこの棚の左上にある箱を持ってきてちょうだい」


 わたしの指示にエレノアは素直にしたがってくれました。ああでもない、こうでもないと言われなくて助かります。エレノアは顔を真っ赤にしながらプレートが満載している箱を机と運んできました。


「どいて」


 物珍しそうにマギアプレートを眺めるエレノアを押し退けるように箱からプレートを取り出します。そして、魔力を込めます。やがて魔力で練り上がった魔方陣が転がり出てきました。


「えっ、嘘?!」


 エレノアから驚きの声があがりました。


「あなた、精霊人族イルシャーリアンなの?」


 こんなのを見せれば当然そう言う質問が来るのは分かっていた。

 

「ちがう。わたしはイルシャーリアンじゃない」

「でも、そんな魔法の使い方はイルシャーリアンじゃないとできないわ」


 その言葉がわたしを傷つけるものだと彼女は知らないのでしょう。


「わたしはイルシャーリアンではない。『のようなもの』、あるいはせいぜい『だった』よ。

あなたとは違うわ」


 わたしは右手を失ってからイルシャーリンではなくなっているのです。それからは何者にも成れない中途半端な存在なのです。しかし、それをことさら言うこともありません。自分が惨めになるだけです。

 幸いエレノアはどうしてわたしがイルシャーリンでないかとは聞いてきませんでした。それよりも自分がイルシャーリンであることを知られている事に気を取られたようでした。


「あなた、わたしのこと気づいていたの?」

「まあ、なんとなく……」


 あなたが夜中に台所で魔法を使うのを覗き見ていた、とは言えませんでした。


「これで一つ」


 この話を打ちきりたくて、呪いを一つ解除したことを大声で宣言しました。

 出だしは順調のようです。しかし、安心はできないむしろ、これからが本番です。


「次……、壊、破の組み合わせ」


 同じ手順で呪いを解いていくと、またエレノアが口を挟んできました。


「ね、それってプレートに魔力をこめればいいのよね。

それなら、わたしにもできるわ。だから、あなたが魔力をこめるプレートを指示してくれれば、わたしがそれをやるわ。その方が効率的じゃない?」

「あなたが魔力をこめて、わたしが組み立てる……」


 確かにイルシャーリンであれば魔力を込めるのはお手の物でしょう。確かに効率が良さそうでした。


「そうね、試してみる価値はありそうね。やってみましょう。

なら、こうしましょう。とにかく、あなたはそのプレートに魔力をこめて解呪の魔法陣をつくってちください。それをわたしが組み合わせて解呪の魔法陣を完成させる」

「了解。じゃあ、じゃんじゃんいくわよ!」


 エレノアはそう言うと嬉々としてマギアプレートに魔力を込めはじめました。わたしはわたしでゼルヴォス様に纏わりついた呪いの解析に集中します。そして、解呪に必要な魔方陣を拾って組み合わせてやるだけです。

 これは思ったよりも遥かに効率的なやり方でした。目を見張るような速度で呪いが解かれていきます。これならきっとゼルヴォス様を助けられる。そう思いながら呪いを解き続けたところで、手が止まりまし。


「なんてこと……」

「どうしたの?」


 わたしはゼルヴォス様のみぞおち辺りを指さしました。そこには黒い丸い球がめり込んでいました。

 

「これ、なんなの? 今までのとなにか違うようだけど」

特異呪詛イレギュラーよ。量産型ではない呪い。一つ一つの呪詛を編み上げた特別な呪いよ」

「それで、どうやって解呪するの?

やり方あるんでしょ?」

「絡まった紐を解きほぐすように呪詛を一本一本外していくの」

「じゃあ、さっさとやりましょうよ」


 しげしげとそれを見つめる。かなりと緻密に作られていて一見すると繋ぎ目を見えなく本当にツルツルした球のように見えました。やはりそうだ。マギアプレートの解呪パターンの魔方陣をおいても弾かれてしまいます。


「だめ。マギアプレートはこれに対応できない」


 わたしは消えいりそうな声で答えました。

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