トラップ 救出
俺は今、作戦行動中だ。
多くの人間が寝静まった頃に、俺は動き出した。
本来ならこの俺も、他の人間達と同様寝ているはずの時間。
だが、悠長に眠っている場合ではない。
重要な作戦が控えていたからな。
だから寝所にはカモフラージュを忘れずにおこなっておいた。
人質を救出するためには、慎重に行動しなければならない。
俺は今、多大な緊張を味わいながら、隠密行動を強いられていた。
物音ひとつが致命的な失敗に繋がってしまう。
声どころか、足音すらたてられない。
敵は強大で、待ち受ける罠はやっかいなものばかりだった。
俺は、なんてものを敵にまわしてしまったんだろう。
しかし、しかたがない。
正義を貫くという事はそういう事なのだ。
どこかで必ず、他者と軋轢を生んでしまう。
正義の形は千差万別。
俺にとっての正義が、奴にとっての正義ではなかった。
悲しいがそういう事なのだろう。
俺は、争い続けなければならない人類の悲哀を、この身に感じ取っていた。
最新の注意を払って進んだ後に、ついにその場所へと辿り着いた。
目の前の一枚の扉。
この先は、使う事を忘れ去られた者達が眠る墓場だ。
ここに、捕らわれの存在があるはずだった。
きっと、俺の到来を待ちわびているに違いない。
目標達成が近づいてきた事をかみしめ、俺はつい気を緩めてしまった。
よく調べもせず扉を開ける。
――その瞬間、俺の頭に大きな金ダライが落ちてきて、派手な音を立てた。
その瞬間、奴らがどたどたと大きな足音を立てて、この場に現れた。
「こらっ、としや! また倉庫に忍び込んでっ! ゲーム返すのはテストが終わってからって言ったでしょ!」