恋バナ
ラブラが期待した以上に、チワワは急成長していた。
今回、窮地に陥ったことで自身の行動を顧みるようになったようだ。
初めて国外に出たことで、伯爵家の庇護がないことや、言い訳のできない状況は、独りよがりな考え方にも影響を及ぼしたようだった。
だからこうしてリサにお礼??らしいことも言いにきたのだった。
「何とかいいなさいよ!」
あんぐり口を開けて黙ったままのリサに返事を急かした。
何とかって何と言えばいいんだ?
『空から使者』として認めてくれてありがとう・・・とか?
「まあいいわ、それより・・コーテッド様はあなたにあげるわ!」
「あげるって・・・」
いつの間にチワワのものになっていたのだろう・・・本人が聞いたら卒倒しそうなセリフだな。
「私は真実の愛に気がついたの。あの逞しい腕で私を抱き寄せられたときに、この人しかいないと直感したわ!!」
実際は藁をも掴む思いで必死だったのだが、チワワの脳内では超ご都合ロマンティック変換されているようだ。
「そ、そう・・・よかったね・・」
うっとりとあらぬ方向をみて余韻に浸っていたチワワはクルッとこっちを向いた。
「詳しく聞きたいっですって? もうしょうがないわね〜」
強引に始まった恋バナではあったが、そりゃ颯爽と救出されたら好きになっちゃうよね〜!
恋するチワワは何だが可愛くって、つい応援したくなるのだった。
「じゃあ帰りは仲良くなるチャンスですね。」
「そうなの〜!」と、とびっきりの笑顔を見せたのだった。
令嬢でもないリサには虚栄を張る必要もない。
チワワはいつの間にか心を許していたのだった。
「だからあなたも、コーテッド様と仲良くしてもいいわよ。」
その言葉にリサの顔が曇ったことをチワワはすぐに気がついた。
「何かあったわね?」
勢いよくグイグイ迫られると話すという選択しかなかった。
「お前は馬鹿か〜!!
そんな先のことばっかり考えてどーすんだ!グダグダ考えるな!感情のままに動けー!!」
チワワは興奮するといつものように地が出てきて、令嬢らしからぬ言葉遣いになっている。
この二人が想い合っていることは、『引き裂いてしてやろう』と躍起になっていたからイヤというほどわかっている。
だからこそ、こんなにも腹が立つのだ。
『気力』の特性が強く、猪突猛進のチワワは好きな人がいて、その人も自分を好きでいてくれているのに躊躇することがわからない。
「全く、意味がわかりませんわ!」
なんどリサの説明を聞いても、どうして『諦める』になるのか納得できない。
わかったのは『空からの使者』の凄さばかりだ。
「チワワ様はまだ若いから・・・傷つくことが怖くないんだよ・・・」
「まぁ、確かに私は恋愛の経験は少ない・・いや、皆無かも知れませんわ。
だけど、たとえいくつになっても、そんなものに恐れをなすほど落ちぶれるつもりはないですわ! 私、弱虫はキライなんですの、ああ、バカバカしい!!」
そう言ってチワワはさっさと帰ってしまった。
ワンダに帰る当日もまだ怒っていた。
ニコニコしながらもリサと握手し、耳元で「考えを改めない人とは口を聞きたくありませんわ!」と辛辣な一言を放たれて別れたのだった。




