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報告


王都には戻ったのは久しぶりだった。


コーテッドは真っ先に父のところに今回の報告をしに行った。


「よく未然に防いでくれた。」

そう言ってくれた父の顔は、息子の手柄を褒めるような明るさはなかった。


コーテッドの父と、捕らえられた子爵は旧知の仲だ。

子爵は先代のオーナー4世の弟、チャウ様に仕えていた。

チャウ様は王妃の息子ではなかったものの、身分の高い貴族との間にできた子供であった。


だから4世亡き後、後継者争いに巻き込まれた。

チャウ様を推す一大勢力ができたのだが、国の混乱を避けたかったチャウ様は後継者を辞退し、身分を捨てて国を出てしまったのだ。


これにより子爵も王宮を離れ、自分の領地へ帰っていったのだ。

王宮にいた頃はよくしてもらっていた。


穏やかで野心とは無縁のような子爵がなぜこんなことしたのか理解し難い。



「どうかされましたか?」

父が黙ったままなのでコーテッドは声をかけた。


「いや、サモエド王子の様子はどうだ?

視察のときはいつも子爵のところでお世話になっていたのだろう。」

「はい、とても落ち込んでおられます。」


始めこそ声をかけるのも躊躇うぐらいだったのだが、リサがいてくれたおかげで馬車の中は明るい雰囲気だった。

コーテッドとピンシャーの二人だけではこうはいかなかっただろう。


その点ではリサには感謝している。

だが、人前でピンシャーの身体を触ったりするのはどうにかしてくれと思う。


サモエド様に悪影響だ。

挙句、捕まえたメイドが言ってた戯れ言を王子に言ったのだ。


「あのメイド、私のこと王子の愛人だと思っていたんですよ。ありえないと思いません。」


リサは自分と王子とでは不釣り合いだからありえないと言ったのに、王子はなぜかリサには相手にされていないと勘違いしてしまったのだ。


王子が振られたみたいになったので、コーテッドは結びで文句を言った。


『身分もモチロンそうですが、6歳も年下なんですよ。

かわいらしいって感じで恋愛対象ではないですね。』

『おま、私より年上なのか・・・子供みたいだな。』

『失礼な。コーテッド様が老けすぎなんですよ。』

『老け・・・大人だと言いなおせ!とにかく王子に謝れ、そして私にも謝れ!』


私たちが睨みあっていると王子はさらに勘違いして「二人は仲がいいね。」なんて言う始末だ。


「王子、勘違いしないでくださいね。

私と王子様とでは身分が違うからありえないと言ったんですよ。

それに私とコーテッド様は決して仲良くありません。」


王子の誤解が解けたのはいいが、今度は自身が振られたみたいになってコーテッドはさらにムスッとしたのだった。



サモエド様はリサが従者の皆と打ち解けているのがどうも羨ましいようなのだ。


滅多に笑わないピンシャーが嬉々として筋肉を披露していたことにも驚かれていた。

それに私が表情が豊かになって、リサといると楽しそうだと言うのだ。

馬鹿馬鹿しい。


王子の間違いを正さなければならない。


「皆、身分を弁えて王子に接しているだけです。

それに私はサモエド様といるときが一番幸せです!」


「コーテッド、僕は君が心を許せる人ができて嬉しいんだよ。」

王子はそう言って微笑まれた。

が、『サモエド王子こそ我が全て!』のコーテッドには王子にそんな風に思われているなど心外なのであった。


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