算段
捕まったメインクーンは牢屋に入れられた。
すぐに取り調べが始まらないので、どうやったらここから釈放されるかをずーっと考えている。
まずサモエド王子になっていたことは、バレてはいないだろう。
では、なぜあの牢に来ると思われていたのだろうか・・・自分を捕まえたヤツらは、牢への行き方を訊いてきた者たちだ。
ものすごく綺麗な男がいたのでよーく覚えていた。
それとよく喋っていた男・・・・ヤツとどんな会話をしたかを思い返してみる。
だが取り立てて、何か大事な話をした記憶はない。
どちらかと言うと向こうが『ワンダから捕まえてきた男』がいることを教えてくれたのだ。
もしかして偽名を名乗ったのが良くなかったのだろうか・・・本物のメインクーンという男の存在でも知っていたのだろうか?
こうなれば、知らぬ存ぜぬの一点張りで乗り越えるしかなさそうだった。
どのぐらいの時間が経ったのだろう。
メインクーンは衛兵に連れられて、たくさんの人の前に連れてこられた。
サモエド王子として居たときに見知った者もいれば、よく喋っていた男も、綺麗な男もそこにいた。
でも一番上段でふんぞり返ってる国王は、今朝方、自分が起こした男だったのでメインクーンは驚いた。
「朝は世話になったな・・」
国王の威圧感に圧倒され、メイクーンは息を飲んだ。
「どうしてお前はあんなところに来たのだ?」
そのままそっくり国王に返したいような質問をされた。
「昨日仕事を終えて帰宅したら、ポケットに入れておいた時計のぜんまいが無くなっていることに気がつきました。
家にも無く、朝になって道中を探しながらここまで来ました。
どこにも見当たらないので、昨日そちらの方たちを牢まで案内したことを思い出したのです。そこで、牢まで探しに行ったのです。
勝手に入ることが捕まるほどの罪だとは知りませんでした。」
塩らしく答えてみせた。
国王は意外にも全うな答えが帰ってきて返答に困った。
「そのー、ぜんまいは見つかったのか?」
ついどうでもいい質問をしてしまう。
「残念ながらまだです。」
「そうか・・・」
そう言いながら、ラブラの方を見て『助けてくれぃ』と熱い視線を送ってきた。
「でしたら、どうして牢の中にいた国王にまで声をかけたのですか?」
仕方なくラブラは口を開き、国王はホッとして『それそれ!』とばかりに大きく頷いた。
「ぜんまいを見掛けなかったか、確認をとろうとしただけですが。」
「では名前を呼ばれて逃げたのはどうしてですか?」
「そりゃ、見知らぬ男が急に自分の名前を呼んだら驚きませんか?」
メインクーンは朝から色々とシュミレーションしていただけあって手強かった。




