思惑
国王は咳払いをし、慇懃に話し出した。
「『空からの使者』無礼を働いてしまったな・・・よくニャータに来てくれた!」
やっと話を聞いてもらえそうだと、リサはホッとする。
「私と一緒にここに来たサモエド王子が本物なんです。そして暗殺事件を起こしたのは、偽物の王子です。」
「この国にいなかったあなたに、どうしてそんなことがわかるのだ?」
「私は偽物と本物の違いがわかるのです!あなたにもご覧にいれましょう!」
コーテッドとラブラがチャウもどきを連れて登場した。
「この男をご存知ですか? 彼は前王オーナー4世の弟で、現女王の叔父にあたる男です。」
ワンダからわざわざ運んできた肖像画を国王に見せる。
プードルはその絵に註釈を入れた。
「これは私です。そしてこちらがチャウ叔父さんです。」
その絵はニャータに嫁ぐ前に家族の記念として描いてもらったものだった。
だから姉はずっと大事に王宮に飾ってくれていたのだろう。
「ここに描かれている男性と、連れてきたこの男は似ていますよね?」
「ああ、確かにな」
「よーく、この男の顔を見ていてくださいね。瞬き厳禁ですよ!」
リサは王に念をおし、チャウもどきに触る。
「!!!・・・なんということだ・・顔が変わった!!」
「この男、本当の顔はこちらなのです。特性を用いて、このチャウ様に化けていたのです!」
国王にとっては、うだうだと口で説明されるよりも、このようにハッキリと示されるほうが分かりやすいのだった。
「だが、別人になれるほどの特性など聞いたことがないぞ!」
「どうやらそれも誰かが意図的に作り出しているようなんですよ。」
みんながチャウもどきに注目した。
「俺は何も知らない、生まれつき特性が強かったんだ!」
この話をするとチャウもどきは異様に反応をする。
「そういえば、あなたはニャータの出身なんですよね?」
ラブラに言われたように、国王の注目をこの男に持ってこさせる。
国王はなぜワンダの重要人物の顔を真似たのか尋ねた。
「たまたまです。」
「そうか・・たまたまその顔になってワンダで悪さをしてここに引っ張られてきたのか・・・どうやらきっちり調べ上げる必要がありそうだな。」
国王は取り巻き連中にこいつをしっかり調べあげろ!と連れて行かせた。
あの強そうなメンツなら、チャウもどきが白状するのも時間の問題そうだ。
「どうやら色々ともう一度、考え直す必要がありそうだな。」
国王はシャムに向かって言い、シャムも頷いた。
二人のやりとりにコーテッドは安堵する。
「だったらサモエド王子のことも、信じてくださるのですね?」
「それは、まだ何とも言えない・・」
国王もまだ詳細を掴めていないので、サモエド王子の処遇について現時点では処断はできないのだった。
「「そんな!!」」
コーテッドとリサが不満そうに声を上げた。
「国王陛下、私はワンダ王国に仕えているラブラドールと申します。
お願いがあるのですが、今すぐここに『鑑定』が使える者を呼んで下さいますか?」
シャム様に頼んでおいても良かったのだが、国王に信じてもらうには、その場で手配してもらう方が良いと判断したのだった。
国王はラブラに説明を求めず、すぐにニャータ国の『鑑定』持ちを呼んでくれた。
「国王はこの方のことを信頼されていますか?」
「うむ」
確認がとれたところでラブラは説明を始める。
「僕にも『鑑定』があります。それに感情が見える『感知』もあります。」
国王はやってきた『鑑定』持ちに確認する。
「仰る通り今まで見たことがないぐらいの、かなり強力な鑑定をお持ちです。感知も知性もおありです。」
「僕は先程の男と同じような特性を持った者が、今回の犯人だと考えています。
そしてその犯人は今もこの近くにいると思うのです。
だから真犯人を捜し出せたらサモエド王子のことは信じてもらえないでしょうか?」
「犯人が?近くにだと?」
ラブラは頷く。
「これは憶測でしかありませんが、このような事件を起こしてこれからこの国がどうなるのか様子を見ているのだと思います。」
「どうしてだ?」
「それは・・・ニャータがワンダに攻めていくのを見届けたいのではないでしょうか?」
そう発言したラブラの方を、みんなはハッと見たのだった。




