空回り
4人は途中の町で馬車を乗り替えながら走らせたので、かなり速く王都に向かっていた。
あれからコーテッドとリサは仲直りをしたので、馬車の中は明るい雰囲気かと思いきや、バチバチの三角関係が繰り広げられていた。
「そう言えば皆さんもお元気なんですか?」
一年も経っているのなら状況が変わってるかもと、リサは尋ねた。
「コーテッド様!あそこを見てください。すごく目つきの悪い鳥が飛んでますわ!」
チワワは会話に割って入る。
「ああそうですね ・・・ 」
コーテッドは適当に相槌を打った後、リサの問いかけに答えた。
「皆、元気にしているぞ。そうそうスピッツ王子の、婚儀が行われたのだ!」
「そうそう、あれは良かったですわね!」
チワワは姉の結婚という自分ががっつり話せる話題になったので、ずっと1人でベラベラと話している
お邪魔虫のせいで、会話が進まないので、リサは結びが使えるのか試してみる。
『コーテッド様、聞こえる?』
『ああ、これがあったのだったな』
一度あちらに帰っても『主従の結び』は無効にはならなかったようだ。
これならチワワには邪魔をされないだろう。
『あのさ、時間の長さは違うかも知れないけど、コーテッド様に会えなくて本当に寂しかったんだよ。』
みんながいて恥ずかしくて言えなかったが、ようやく伝えられた。
『ああ』
結びで頷いたコーテッドは、嬉しくてニマーと笑顔を浮かべていた。
それを見たチワワは父の失敗談でコーテッドが笑ってくれたと勘違いして、先程から、シェパード伯爵の失敗談を3割り増しぐらいにして暴露している。
『デーンも言ってたが、私も、そのー、リサにスゴく会いたかった。
こうやって再び会えたことが奇跡だと思っている。』
その言葉に今度はリサのニヤニヤが止まらない。
チワワはこの憎たらしいリサが、父の失敗談で笑っていると勘違いする。
「失礼でしょ、ニヤニヤしないでよ!」
急に怒られてリサは驚き、ついゴメンと謝った。
その後も無言になった車内で、コーテッドとリサが二人でニヤニヤとしていることをチワワは不審に思っていた。
結びで会話できることなど知らないので、チワワのイライラは募るばかりだった。
だがもうすぐ王都に着く、父に頼んでこのリサをコーテッドの側から排除してもらうよう頼もうと考えていた。
王宮に入ると、すぐに女王陛下と謁見することになった。
コーテッドは、持参したこの書類で女王が納得してくれるのかが、気になってそわそわと落ち着かない。
そんな姿を見て、チワワは彼が女王に初めて謁見するのでそわそわしているのだと思う。
「コーテッド様、大丈夫ですよ。
私も何度かお会いしたことがありますが、陛下は優しい方ですよ・・・
それよりもあの『空からの使者』を陛下の前になどに出して大丈夫なのですか?
そのことでコーテッド様が叱られるのではありませんか?」
そう言って心配をしている。
そうチワワはレトリバー家が、この国でどういうポジションにあるのかも知らない。
ましてや前回の件でリサがこの国の本当の救世主だったことも、もちろん知る由がなかった。
これにはコーテッドも苦笑いするしかなかった。
女王が姿を現すと真っ先に口を開いたのはチワワだった。
「陛下、お久しぶりでございます。ご機嫌麗しいようで・・」
彼女の挨拶などそっちのけで、女王はリサに喜んで駆け寄った。
「リサ、ご無事だったのね!!本当に良かった!」
女王はリサを抱きしめ、嬉し涙を流している。
王配もレトリバー父もそれは凄い喜びようだ。
さすがのチワワも驚きを隠せない。
もしかしてホントに、このリサはあの『空からの使者』なのか?!
でも全くオーラと言うか、気品というかそういうものが皆無なのだ。
大物過ぎてそんな物はもう無いのか?
何だか怪しい、みんながみんなこのリサに騙されているのではないかと考える。
私がしっかりしなくては!!と決意を新たにする。
例の踏ん張り方式でこの場に踏み留まろうとしたチワワだったが、決意も虚しく室外に出されてしまったのだった。




