運転免許証
昨夜、1年ぶりの再会にも関わらず、さっさと出て行ってしまったリサにコーテッドも怒っていた。
こんなにも久しぶりなのに、リサは「会いたかった!」も「寂しかった!」も言わなかった。
自分ばかりが寂しい思いをしていただけで、向こうは何とも思っていなかったに違いないとやさぐれていた。
さっき、馬車に乗り込んできた時も目も合わせなかった。
そっちがその気ならと、コーテッドもずっとそっぽを向いている。
ピンシャーはふたりの様子に、上手くいかなかったんだなとすぐに気がつくが、別段、何かをしようとはせずに、ただただ黙って座っていた。
不穏な雰囲気に、何だか居心地が悪いなと、ソワソワしだしたのはチワワだった。
はじめこそコーテッドとケンカしたようなので、リサに向かって『ざまーみろ!べろべろべー!」と心の中で舌を出していた。
だが、コーテッドは話しかけても上の空で、適当な返事をするだけだ。
私だけが、カラ回りしているみたいじゃない!
このままではマズい・・・焦ったチワワは何か話題、話題と頭をひねる。
「コーテッド様『空からの使者』は王子を助けたことがおありになるんですよね?」
しまった!よりによって何でこの女の話題を出してしまったんだーーーと自爆する。
コーテッドはムスッとしたまま、リサを指差した。
「彼女に直接聞いてください。」
指差されたリサもコーテッドを睨んでいる。
何この2人!!
昨日はあんなに仲よさそうにしてたのに、一体何があったの??
逆に気になるわ!
本来なら喜ぶべきことなのに、あまりの険悪さにチワワは1人で焦る。
2人のやり取りを見てピンシャーは笑っている。
それに気がついたチワワは『何を笑ってんだ、何とかしろ!!』と心の中で八つ当たりをした。
リサは前に来た時に置いていったリュックを背負って、馬車に乗り込んできていた。
急に地球に帰されたら困るので、鞄は常に持ち歩こうと決意したのだ。
戻った時にとても困った鍵も、財布もクレカもスイカもあるー!!
そのとき、いつものところに運転免許証がないことに気がついた。
すみずみまで探すがやはり見当たらない・・・
「コーテッド様、ここに入っていたカード知りません?」
リサはケンカのことは忘れて、思わず訊いてしまった。
「私が知るわけないだろう!」
「私の写真が入ったものですよ」
そもそもこの世界に写真はないので、似顔絵みたいな物が入っていると説明をする。
「ああ、それなら・・・知ってる」
そう言ったのはピンシャーだった。
「コーテッド様がいつもその似顔絵入りの紙を見ていた。」
「えっ!!そうなの!」
コーテッドは耳まで真っ赤になった。
「リサがいなくて寂しかったのだろう、常に持ち歩いていたぞ!」
コーテッドはどこからともなくそれを出してきた。
「これのことか?」
「そうです!!」
そう言って受け取ろうとしたときだった。
「本物がいるから、これはもう必要無いからな。」
コーテッドは伏し目がちにそう言ったのだった。
甘い雰囲気に急展開しそうなことに、チワワはすぐに気が付いた。
それをぶち壊すように「そろそろ休憩したいわねーーー!!」と大声で叫んだのだった。




