急転直下
反撃のチャンスを伺っていたシバは、横を通り過ぎようとしていたリサを捕まえた!
どこに忍ばせていたのか、ナイフを取り出して、リサに付きつけた。
「こいつの命が惜しければ、俺の言うことを聞け!」
女王の顔色が変わったので、意外と人質の価値があるのかとシバは考える。
解けてしまったのなら、また『暗示』をかければいいだけの話だ。
幸いなことに、この場には自分が王様に成るために暗示をかけておきたいメンバーが全員揃っている。
「そのうるさい小言は止めて、前に出ろ!」
暗示は距離が近いほどかかりやすい。
シバは女王を見つめ、暗示をかけるために集中する。
そろそろかかったかなと思ったときだった!
女王は剛毅に言い放った。
「もう私にそれは通用しません!あなたの暗示はもう使えません!!」
「バカな、嘘をつけ!わざわざ特性を強くしてもらったんだぞ!」
シバは、かからないのは集中できなかっただけだと、女王の話を信じない。
片手でリサを押さえているので、特性が消されているのだ。
「あなたが捕まえているその女性は特性を消すのです。」
シバは焦って反射的にリサを女王の方に押し出した。
「あそこに倒れている男が誰だかわかりますか?」
女王はパグでありチャウである人を指す。
急に変な質問をされて、シバは訳がわからない。
「あれはチャウ様の偽者です!」
「嘘だ、嘘に決まっている!」
シバはそんなことを言われても信じられるわけがない。
まさにその時!!
ちょうどタイミング良く、チャウに戻ったのだ!
「はーはっは、ほら見ろ!チャウ様ではないか!」
女王はリサに耳打ちをした。
リサはチャウの側まで行き、彼に触れた。
するとまた知らない男に戻ってしまうのを、はっきりと目撃する!
シバからは笑いが消えた。
「わかりましたか?あの男はチャウ様ではありません!それにあなたの持ってきた『後継者の証』もここから盗まれたものです。これの意味することがわかりますか?
あなたは反逆罪で投獄されるのです!」
それを聞いてシバは膝から崩れ落ちた。
「俺はその男に利用されていたのか・・・じゃあ父が俺のことを認めてくれてたって話していたのも嘘なのか?!そいつが勝手に俺にそう言ってきてただけなのか?」
彼の気持ちを思うと誰も何も発言できなかった。
彼は父親の弟が自分を捜しにきてくれて「次の王様に成りなさい。君にはその権利がある。」と後継者の証をみせられて、すっかり舞い上がっていたのだろう・・・
騙されたとわかったシバは復讐に駆られた!
持っていたナイフをぐっと両手で握りこむと、チャウとリサの向かって走り出す。
「「「「「あぶないー」」」」」
みんなが一斉にさけび、コーテッドとラブラはリサを助けようと駆け出した。
その時リサの足下にはゆっくりと見慣れた景色がぼんやりと浮かんできた。
え? あれ? まさか!
あれは間違いなくエレベーター?!
あのときと同じ状況ということは・・・向こうにに戻されるの??
『コーテッド様、どうやら私、元の世界に帰されそうです。』
『どーいうことだ?!』
コーテッドは訳がわからない。
『私にもよくわからないです。今まで色々とありがとうございました。』
目の前にはナイフを持ったシバが目を真っ赤にしてこちらに向かってきている。
『待てー、行くな、行かないでくれー!』
いつも怒らせてばかりだったけど、引き止めてくれたのが嬉しかった。
最後かもしれないとリサは想いを口にした。
『コーテッド様・・き・でし・・た。 お・げ・・ん・・で・・』
それはもう途切れ途切れにしか聞こえなかった・・・
「リサーー、ダメだ!!行くな、帰ってきてくれー!!」
コーテッドは大声で叫んだ。
本当にこんな突然、別れが来るなんて!!
コーテッドはずっとリサの名前を呼び続けている。
だけどそのまま本当にリサは消えてしまったのです。
そして襲いかかろうとしていたシバも一緒に消えたのでした!




