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主従の結び


コーテッド様のところで勉強を始めてから言葉以外にもいろんなことを教えてもらった。


そんな事も知らないのかと悪態をつくくせに、懇切丁寧に教えてくれる。

典型的ツンデレラなひとだった。


どうやら私のことを王子を殺しにきた暗殺者だと思っていたらしい。

だからずっと恐ろしい顔で睨みをきかせていたのかと腑に落ちた。


誤解も解けたようで良かったんだけど、私が別世界から来たというのを言うべきなのかずっと悩んでいる。


私にみんなの利益になるようなことがあれば良かったのだけど、特性というスキルみたいなのを調べてもらってもなーんもなかった。

そっか・・・やっぱり何もないのか・・・


よく追い出されないなとおもいますよ。

サモエド王子に見捨てられないように、常識ぐらいはきちんと身につけておこう!


この国その名もワンダ王国。しかも祖先が犬らしい。

「えっ、猿じゃなくて?」思わず言ってしまった。

コーテッドは「は?」と眉をひそめた。


犬ってことはケモ耳とかモフモフの尻尾とかないのかなと尋ねる。

「耳はここだ。リサと同じ場所だろ。

尻尾は生えていたところに名残の骨があるだけだ。」


祖先は違っても進化は一緒なのね!と嬉しくなった。

「それ、私にもあるんですよ!」

コーテッドの指を掴んで「ほらほら」と尾骶骨を触らせた。


「な、な、何をするんだー!!」

烈火のごとく怒り出した。


「ごめん、セクハラしちゃったかな。セクハラって言葉通じてる?」

「・・・」

コーテッドは言葉も発せずその場に座り込んで頭を抱えた。


そんなに嫌だったのかと反省する。

人に気安く触れるのはよくないことだったのだろうか。


大きなため息をつくと話し出した。

「さっきやった、尾骶骨を触るというとは主従関係を結ぶときに行うものだ。

すなわち私はリサの従者になったんだ。」


「えーーーっ、ってことは『パン買ってこいよ』とか命令したら買ってきてくれるんですか?」

「まあ、そうなるな。リサが望むなら。」

再び大きなため息をついて、肩を落とした。


まさかそんな意味があるなんて・・・

事の重大さがわかったのでひたすら謝った。


怒り狂うわけでもなく、ひたすら落ち込んでいるのがコーテッドっぽくなくて余計に怖い。

「おい、さっきのようなくだらない要求してくるなよ。」

思い出したように釘を刺してきた。


「も、もちろんしませんよ。

さっきのはほんの冗談ですよ。」

「どうだかな」

私って信用されてねー。


「思ったんですけど、もしコーテッド様の尾骶骨を私が触ったらどうなるの? 

私もコーテッド様の従者になるんですか?」

「それは聞いたことがないな。

だがそうすればお互いが主従関係になるわけか。」

「そしたらまた対等な関係に戻れるんじゃないんですか。」


コーテッドは少しのあいだ悩んだ。

「うーん、やってみる価値はあるか・・」


「じゃあ、行きますよ」

「ちょっと、ちょっと待ってくれ、心の準備がまだ〜」

言い終わらないうちに、後ろに回り込んで触った。


コーテッドはビクッとして「あっ」と小さく声を上げた。

その反応がかわいくって不覚にもきゅんとしてしまった。


「待ってくれと言ったのに・・」

ちょっと照れているその姿もかわいらしい。


「こ、これで、命令されても嫌なことは拒否できるし、今まで通りってことですね。」

「そうだな。」


『でも主従関係になったらこれができる。』

コーテッドは口を動かさずにリサの頭に話しかけた。


「うわっ。なにこれ、気持ちわるーい!」

耳元で囁くよりももっとダイレクトに言葉が頭に届くような感じがした。


「おもしろい!もう一回やって下さい。」

『リサもできるはずだからやってみろ。』


念じるような感じでいいのかな?

『こんな感じ?おーい、コーテッド様伝わってますかー』

『はっきり聞こえている。』

『これ、すごく便利ですね。これで自室にいてもコーテッド様とお話しできますね。』

『嫌なことを言うな。せいぜい届くのは隣の部屋ぐらいまでだろう。』

「なーんだ残念。」

思わず口から言葉が出てしまった。


「やめてくれ、私の心の休まる時がなくなるだろうが!」

いつもの憎まれ口が出てきたので、ちょっと安心したのだった。


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