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変事アリ


2人がそんな心のすれ違いをしている間に、ラブラは王都に戻っていた。

父や兄から一向に返事が来ないので、気になって来たのだった。


城内は状況が一変していた。


遡ること1ヶ月近く前

オーナー4世の息子シバが堂々と城に現れたのだ。

彼だけなら誰も城内に引き入れることなどしなかっただろう。

だがシバを連れてきたのはオーナー4世の弟、チャウ様その人だったのだ!

長年、城に仕えている者たちはチャウ様の帰還をそれはそれは喜んだ。


女王陛下も叔父であるチャウの帰りを歓迎した。

叔父は10年近くの時が過ぎたとは思えないくらい、出て行ったときのままだった。


「まあ、叔父上!帰って来てくださったのですね!

ずっとずっと心配していたのですよ。」

「心配をかけてすまなかった。女王陛下として立派にやっていると聞いてな。それで戻ってきたのだ。」

チャウは昔のいざこざのことなどなかったように屈託なく笑う。


その笑顔に安心した女王は離れていた間のことを訊いた。

「今までずっとどこにいらっしゃっていたのですか?

大変なおもいをされていたのではありませんか?」


叔父が身を引いてくれたお陰で内乱にまで至らなかったのだ。

女王は叔父がその間、どんな風に過ごしていたのかを知って安心したかった。


「そう焦らずとも時間はたくさんあるのだから、またゆっくり話そう。

それよりも紹介したい人がいるんだ。

彼は亡き兄上の息子のシバだ。君の弟だよ。」

「弟?」


そう紹介されたその子の容姿に血縁を感じることは難しい。

どこにでもいるようなごく普通の青年だった。


「はじめまして、姉上・・・とお呼びしてもよろしいのでしょうか?

女王陛下に対して馴れ馴れしすぎますよね。」

自分の息子たちぐらいの歳の子にそう呼ばれるのは変な感じがした。

チャウ様に付き添われてきたのだから、きっと義弟なのだろう。


みんなからシバのことは聞いてはいた。

だが話とは違い母親を怒鳴ったり、強盗をするような子にはとても見えない。

真面目で、身なりもきちんとしていて礼儀も正しそうだ。

彼は女王の目を見て人懐っこく笑う。


「実は彼は兄から後継者の証を承っていたのだ。」

そう言ってチャウ叔父が見せてきたのは紛れもなく『後継者の証』だ。


だがそれがここから盗まれた物なのか、父が彼に渡した物なのかはわかるわけがなかった。

「急なことで、陛下も驚いただろう・・」


叔父が自分のことを陛下だなどと呼ぶので、そちらに戸惑ってしまう。

「チャウ様、陛下だなんて・・・昔のように名前で呼んで下さい。」

「いや、今は身分が違うのだからこれでいいんだ。」

その言葉に離れていた時間を感じて、女王は寂しく思う。


女王は留守にしていた間のことをいろいろ聞きたかったのだが、チャウは長旅で疲れているからと、そうそうに引き上げて行った。


王配たちも、シバとの経緯や後継者の証のことをはっきりさせたかったが、その日は諦めるしかなかったのだった。


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