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ラブラの悩み事


兄から書簡を受け取ったラブラは、苦々しい顔でそれを読んでいた。

あのバカ男爵め〜と怒りが収まらない。


まさかあのときの男爵以外がニャータ国の者だったとは!

捕まえたときに妙なラスボス感を出してくるから、すっかり騙されてしまった。


いや、感知で引っかからなかったということは、本人も本当に俺がこいつらを率いていると思っていたのかも知れない。


あんな単純そうなヤツに、なかなかいい特性持ちの手下がいるなと思ったときに、なぜ変だと思わなかったのだろうと激しく後悔する。

直接、自分が全員を取り調べなかったのが悪かったのだ。


大体、男爵の釈明はしどろもどろだった。

本人の証言では、とある金持ちに「あなたしかいない!」と強引に引き受けさせられたそうだ。

その金持ちの正体も知らないくせに、どんな風に優秀だと褒められたかを自慢してくる始末だった。

要は大金を積まれて、煽てられて何も考えずに引き受けたのだろう。

『後継者の証』を盗むことがどれ程の重罪なのかも知らなかったのだ。


ラブラはこの男爵があまりにも低能すぎて、もう話も聞くのも嫌になってそのまま王都に引っ張ってきたのだった。



兄も書いているが、今回のことがたまたまニャータの者だったのなら問題ないが、国が関与しているのならば大大大問題だ。


国際問題に発展しないためにも、何としてもオーナー4世の息子を捜し出して欲しい。



父には話さなかったのだが、ラブラには一つ気になることがあった。

それはその亡くなったというトサという女性のことだ。

娼館の主人はどうやらラブラのことがドストライクだったらしく(感知ですぐに気がついた)色々と教えてくれたのだ。


オーナー4世のお気に入りの女性は、はじめ違う人だったらしい。

それがトサに目移りしたので「あんたやったじゃない」と褒めたら秘密を教えてくれたそうだ。

そのトサは『暗示』の特性持ちだったらしい。


『暗示』は危険特性に認定されている。

危険な特性を持って生まれてくる子は一定数いる。

そんな危険特性を持って生まれた子は、大体どの国でも施設に入れられるのだ。

『殺人』『暴力』『脅迫』など犯罪を連想させる特性がほとんどだが、『暗示』『読心』『洗脳』など世の中を乱すような特性持ちもそこに含まれるのだ。


もちろん特性には強弱があるので、外に出て生活を送っていたトサの『暗示』もそんなに強いものではなかったのだろう。

だから病気で足が遠のいたオーナー4世は、自然とその『暗示』がとけたと推察できる。


書簡を読んでいると、どうやら息子にもその特性は受け継がれているようだ。

だから捕まった際、看守に『暗示』をかけて逃げたのではないだろうか・・・

だとすると厄介なことになりそうだと、ラブラはすぐに兄と父に返事を送ったのだった。



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