シバ
ゴールデンからその報告を受けた父は今までに分かっていることを話し出す。
前王の弟であるチャウ様からの手紙にも書いてあった、オーナー4世に息子がいたというのは、やはり本当のことだった。
彼は結婚してからも娼館に通っていたらしく、そこで知り合ったトサという女性を囲っていたらしい。
そして2人の間には男児が生まれた。
だがしばらくしてにオーナー4世は病気になり、そちらに行くのがだんだんと難しくなったようだ。
娼館の主人からトサの住所を教えてもらい、最近になって尋ねてみたのだが、やはりもう別の人が住んでいた。
だが、近所の人たちから親子の話は聞けたようだ。
母親は事あるごとに私は王様の愛人なんだといつも吹聴していたそうだ。
誰もが半信半疑だったらしいが、否定をすると烈火のごとく怒り出し、そうなると手がつけられなくなっていたらしい。
息子はそんな母親を健気に世話していたそうだが、だんだんと成長するにつれて言い争いや怒鳴り合う声ばかりが聞こえるようになっていったらしい。
はっきり言ってこの界隈では有名な親子だったようだ。
そのうち息子はだんだんと荒れた生活に身を落としていった。
母親のトサはもう亡くなったらしいが、その息子は行方不明らしい。
名前はシバ、生きていれば22、3才ぐらいだそうだ。
看守長が話していた少年は、そのシバだった可能性が十分にあるわけだ。
荒れた生活をしていたなら強盗で捕まるのも無理はない。
だが・・・とゴールデンは考える。
4世は自身の息子であるとわかっていたのなら、かなりの額を親子に渡していたのではないだろうか?
それなのに強盗しなくてはいけないほどに生活に困窮していたのだろうか・・・
でもオーナー4世が亡くなってもう10年。
その前から意思の疎通もままならない状態が続いていたそうだから、援助が滞ったか誰かがその金を着服したのか・・の可能性もある。
そう考えるとその親子には同情する。
だが国を揺るがすようなことを企んでいるのなら容赦はできない。
そのシバという男を早急に捜さなくてはならない。
後継者の証のこともきっと知っているに違いない。
それと、と父は神妙な顔で話し出す。
「ラブラが捕まえてきた奴らを調べたら、お間抜け男爵以外は全員ニャータ国の者だった。裏で糸を引いているのはニャータなのかもしれん。」
「昔、チャウ様を担ぎ上げようとした連中じゃないのですか?!」
「それがどうもそんな簡単な話ではなさそうなのだ。」
ニャータ国はこのペット大陸でワンダ王国と2分するぐらいの大国だ。
ニャータ国はすぐに周りの色んな国にちょっかいを出したがるところがある。
特によく狙われるのは小鳥諸島やゲッシー国だ。
でも今現在は、女王陛下の妹君がニャータ国へと嫁いでいるので、ワンダ王国とは良好関係にある。
なぜ今、ニャータ国がそんなことをする必要があるのだろう?とゴールデンは首を捻る。
「ワシもさっぱりわからん。
だがニャータだったらあんな離れ技(パグ様をここに送り込む)もできるだろう。」
そうだ、敵は何年も前から後継者の証を狙っていたのだ。
スピッツ様のところにも人を送り込んだりと、そうとう手間暇がかかっている。
確かに国規模ならそんな壮大な計画もたてることができるだろう。
ニャータの目的はイマイチわからないが、とにかく今は行方不明のシバを捜し出すことが最優先だ。
父も概ね同意したが、ラブラもそのオーナー4世の息子を調べていたから、情報を共有するよう言われたのだった。




