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主従の結び 再び


ゴールデンが眠ってしまうと、ラブラは話し出した。

「さっきの婚約破棄はお見事だった、コーテッドよくやった!」

兄に褒められて、コーテッドはとても嬉しそうに頷く。


それを聞いていたリサは口を開いた。

「何で、サモエド王子と私が婚約なんてことになったんですか?!」

「リサは自分の価値がわかってないな〜、『特性』を消せるなんてすごいことなんだよ。」

「え、え、私スゴいの?!」

やったー、異世界っぽくなってきたぞー!!

よっしゃ、このまま無双じゃ〜い!


「喜んでいる場合か!お前のその特性はこの国にとって有益なことなのだ。

だから父上たちは、無理矢理にでも引き止めておくために、サモエド王子と婚約させようとしていたんじゃないか!」


建前は2人の婚約でパグ様の噂を消したいからご協力お願いしますよ〜。

本音はとりあえず婚約させてしまえば、リサの特性が手に入る。

『何が何でも婚約破棄などさせるものかー!! えい、えい、おー!』

ってとこだったんだろう。


計算外だったのは女王陛下があんなにも『空からの使者』を信じていたことなのだろう。

どうせ父は毛ほども信じていなかっただろうから、リサを無視してサモエド王子にだけ承諾を取ろうとしていたのだと思う。

リサに対しては『王子と結婚できるなんて、君ホントよかったね〜』ぐらいの気持ちだったのだろう。



女王陛下が腰を折ったら、父の顔があまりにも真っ青になっていたのでコーテッドは心配になってくる。

「父上、今ごろ女王陛下にこっぴどく叱られているかも知れませんね・・・悪いことをしてしまったな。」

「いいんだよ、強引にものごとを進めようとした罰だ。」

ラブラは辛辣だった。

リサの気持ちを無視していたことに、頭にきているのだ。



「しかし、前もってあんな最悪の事態も想定していたのか?」

ラブラは父があそこまで食い下がるとは思っていなかったので、コーテッドがそこまで考えていたのかを尋ねた。


「まさか! どうにかしないといけないと急にあの場で思いついたのです。

結びを使い『空からの使者』であることをアピールすれば引いてくれるかもしれないと考えました。まさか女王自ら非礼を詫びるとは思いもしませんでしたが。」


「ああ、あれそういうことだったんですね!」

リサはコーテッドの説明でようやくあの時のことを理解する。

「でも結びで頭に流れてくることを、すぐに口にするのって難しいですよね。

 聞こえなくて何回も聞き直しましたよ。」


「お前あのとき、声に出ていたぞ!でもあの「もう一回」と聞き直したのが絶妙なところで入ったので、「災いをもう一回もたらしてやる〜」になったからより怖くて良かったぞ!」

珍しくコーテッドが褒めてくれたのでリサも嬉しくなった。



2人の会話を聞いていたラブラはちょっと頭を捻った。

「コーテッドはリサに主従の結びをさせているんだよな?」

「私もコーテッド様に主従の結びをしてるんですよー」

リサも得意気に言う。

どういうことだ?とラブラはコーテッドに説明を求めた。


主従の結びは本来なら上の者が下の者に行う。

ラブラは素性のよくわからなかったリサを抑制するためにコーテッドがしているのだと思っていた。

だがこの2人はお互いに主従の結びをしているらしい。

そうするとお互いが頭の中で結びを使って会話できるらしいのだ。

だからそんなにすぐに2人は対応できたのかと納得できた。


だったら・・・「失礼しまーす!」

ラブラはとリサの尾骶骨に触れる。

「兄上、またそんな勝手なことをして!」

コーテッドは怒ってラブラの腕を掴んだ。


「悪いな、もう結んだ後だ。

でもこうしておくと何かあったときにリサを助けられるかもしれないだろう!」

ラブラは語気を強くして真面目な顔を作って言った。


その言葉にコーテッドはそうかもしれないと、掴んでいた手を放し謝る。

ラブラはコトが上手く運んだので顔が緩みそうになるのを我慢した。

「リサも俺のを触るように」

リサが「えっ、えっ」と戸惑っているうちに、ラブラは指を掴んで触らせた。


『やあ、リサ聞こえるかい?』

『は、はい』

『確かにこれは便利だね。これなら2人だけの秘密の話もしたい放題だね。』

ラブラらしい言葉にリサは笑う。


『今、兄上が結びで私の悪口を言っただろう。』

横からコーテッドが結びで話しかけてきた。

『そんなこと言ってませんよ』

リサが答える。


『今、コーテッドが結びで文句を言ってきてるだろう?』

ラブラが絶妙な間で言ってくるから、リサはまた笑う。

『絶対何か言ってるだろ〜!』

コーテッドが子供みたいにそんなことを言うからリサはますます笑い、その笑顔をみてラブラも笑いだした。

コーテッドだけがブー垂れている。


そんな楽しい夜は更けて、その数日後にはみんな各々の領地へと帰って行ったのだった。


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