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ペギニーズ


よたよたと出て行ったゴールデンの姿を見て、コーテッドは「兄上は大丈夫なのだろうか」と呟く。


ラブラはそれよりも、マルチーズ王子が立ち直ることができるのかが心配だった。


スピッツ王子は国王になる気など、さらさらないようで、自分の証を兄に渡せばいいと思っているようなのだ。


小さい頃から国王候補として周りからの大きな期待を受け、たゆまずに努力をしてきたマルチーズ王子の姿をいつも側で見てきた。

だからスピッツ王子は兄には一目置いている。

そんな兄の為にも、自分は影の役割に徹すると決めたのだった。


だがラブラから見れば、『魅了』だけが唯一スピッツ王子に欠けているところであって、他の特性を見れば3人のなかで一番優秀なのはスピッツ王子で間違いないと思っている。

なぜそこまで『魅了』が国王としての条件なのか頭をひねるところだ。



それに・・・とラブラは今までマルチーズ王子に溜まっていた不満を爆発させる。


あの人が急に「パグ様と結婚したい!」と言い出したお陰で、スピッツ王子はペギニーズ様と婚約することになったのだ。


ペギニーズ様の父上シェパード伯爵はワンダ王国の実力者だ。

彼はずっと王族と血縁関係を結びたいと思っており、マルチーズ様と娘のペギニーズを結婚させるつもりでいた。

機会をみては王宮に娘を連れてやってきて、マルチーズ王子と面会できるように取り計らってきた。

実際に2人はそれなりに仲が良かったそうだ。

なのに青天の霹靂でマルチーズ王子は、庶民のパグ様と婚約してしまった。


怒りが収まらないシェパード伯爵は王宮への援助を打ち切ると迫った。

それはとても困る!となって、白羽の矢がたったのがスピッツ王子だったのだ。


ペギニーズ様は特性が表すように『聡明』『判断』ができるかたで「スピッツ王子がお嫌ではなかったら・・・」とその場を丸く収めてくれたのだ。


スピッツ王子もそんなペギニーズ様のことがお気に召したようで、2人はゆっくりと時間をかけてお互いに理解しあって今に至っているのだ。

スピッツ王子は『魅了』がないことの引け目を素直に話し、ペギニーズ様も父親にどれだけ今まで振り回されてきたかを話した。


それは我を忘れるような情愛ではないかもしれない。

だがそうやって2人は、強固な親愛関係を築き上げてきたのだ。


ペギニーズ様もスピッツ王子の役割をよくわかっていらっしゃって、汚れ役に付き合ってくれているのだ。

本当によくできた女性だとラブラは感心している。

そして、そんな方がスピッツ王子の見方になってくれていることが心強い。



だが、マルチーズ王子のことを知ったらシェパード伯爵はスピッツ王子を国王にしようと動くだろう。

前回のことでシェパード伯爵の強引さがわかった今、彼が出てくるとパワーバランスが崩れかねない。


だから、今のままマルチーズ王子には次期国王候補でいてもらわないといけない。


でも後継者の証をマルチーズ王子に譲るとスピッツ様は捕まることになる。

全く頭が痛くなることばかりだとラブラはため息をついたのだった。



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