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アンビリーバボー


サモエド王子とコーテッド、それにリサは大広間から離れた別室に連れて来られた。


2人の安全が確保されると、コーテッドは現状を把握するため父のところへ向かう。


逃げるように帰っていく招待客に逆行して大広間に戻ると、先程まで華やかなパーティーが開かれていたと思えないほどにそこは雑然としていた。


衛兵たちと話し込んでいる父を見つけた。

近くにはスピッツ様とラブラ兄上もいた。


「何かわかりましたか?」

「さっぱりわからん。一体、何がどうなっているのやら・・・」

父もほとほと困っているようだった。


衛兵に状況を聞いても、城内に不審者が入った様子もない。

もちろんあの壇上の近くには王族以外は誰も近づいていない。

(リサとコーテッドは別だが)

警備していた衛兵もお互いが見知った者同士だった。



それに依然としてパグ様は姿を消したままだ。


先程の女の格好をした男は厳しく取り調べられているらしいが、何をやっても一向に口を開かないらしい。


業を煮やしたマルチーズ王子をはじめ、ゴールデン兄上や城内の者も総出でパグ様を探しているらしい。


「父上。あの者ですが、パグ様と同じ特性でしたよ。」

ラブラが口を開いた。


「ん?どういうことだ? あの男がパグ様ということか?!」

父は話しながら笑い出した。


「ラブラ、いくら特性が同じだからと言ってもそれはないだろう!

美しいパグ様が、あんな小太りのおじさんと同一人物って!ない、ない、ない。」

父は自分に言い聞かせるよう呟いている。


コーテッドもラブラに『鑑定』があるのは知っているが、父と同じで俄かには信じられない。


そのとき、ふと、リサがパグ様を見て変なことを言っていたことを思い出す。

そっちの趣味だの、ゴツゴツしてるの・・・

それにあいつ世継ぎができないと、はっきり言い切っていたな・・・


マルチーズ王子とあのおじさんがキスをしている絵が思い浮かんできた。

コーテッドは勢いよくブルブルと首を横に振った。

そんなはずは無い無いと、首を振り続ける。



スピッツ王子はパグ様の次にリサと握手することになっていたので、あの時、すぐ側にいて一部始終を見ていた。

誰かと入れ替わったなどということは、まずありえないと言っていい。


会場が騒然としたので、ここにいる自分以外には、パグ様の声は聞こえていなかったのかも知れない。

「マルチーズ兄上が『私の妻をどこへやった?」って訊いたら、あのおじさん『私ならここにいます』って言ってたぞ。」


スピッツ王子が援護してくれたので、ラブラも追い打ちをかける。

「それに、パグ様と同じドレスなんですよ!!

やはり同一人物なのではないでしょうか。」


「それに、こんな大人数で探しているのに見つからないのもおかしいだろう。」

スピッツ王子がもっともなことを言った。


父とコーテッドはこれだけ言われても納得いかないようだ。

「いや・・」「そんな・・」「ばかな・・」とブツブツ言っている。

この2人、頑固なところがそっくりだったんだなとラブラは初めて思ったのだった。



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