露呈
「みなさん、この国に素晴らしい方がいらしているので、是非紹介させて下さい。
シクラアリサさんよ。」
女王の言葉に、会場にいた人達は歓声を上げた。
『頑丈な女神』の名を持つ人物がどこにいるのだろうと、きょろきょろと辺りを見回す。
睨み合っていたリサとコーテッドは驚いて女王の方を見た。
「はぁ〜、やられたな。」
コーテッドはため息をつく。
これでリサは『空からの使者』として皆に認められることになるだろう。
『仕方がない、行くぞ!』
コーテッドは腰を折ってリサの前に手を差し出す。
『どーしたの!! 具合悪いの?』
『エスコートして女王のところまで行くんだ!いいから手を出せ!』
リサが手を合わせるとコーテッドは進み出す。
男女問わずその美しさで崇高されているコーテッドがエスコートする女性というだけで、リサの価値はどんどん上がって行く。
皆、うっとりと歩いていく2人を見つめていた。
『名前の訂正したほうがいいんじゃない?』
『今さらそんなこと言えるか!女王に恥をかかすわけにはいかないだろう。』
『大丈夫かな〜。』
リサは不安だった。
『いいか、無駄口きくなよ。ニコニコ笑っときゃなんとかなる!』
主従の結びでこんな会話をしているなど、会場の誰も気がついていないだろう。
リサは登壇し、女王のそばまで行く。
「彼女は『シクラ アリサ』さん。
言い伝えの『空からの使者』です。そして我がワンダ王国の危機を救ってくださった方よ。」
女王はリサと固く握手をし、ハグまでしてきた。
ワンダ王国の危機については詳しくは話さないが、盛り上がっている会場では誰もそんなこと気にしていなさそうだ。
王族の皆がリサのところに寄ってきて一人一人握手していく。
王配、マルチーズ王子、そしてパグ様。
パグ様は近くで見ると完成度が低めの女装だった。
がっかりだった。
無精髭まで生えてるなんて!言語道断だ!!
友達の優ちゃんならこれで1時間は文句を言うことだろう。
それを聞かされているせいか、リサも女装には厳しい。
地球じゃみんなもっと気をつかってるよ。
体毛だって体中ちゃんと処理してるし、メイクも私なんかよりもずっと時間をかけて丁寧にやってるよ。
心の中でダメ出ししながらも、にっこり笑顔で握手する。
その時、会場でどよめきが起こった。
女性の悲鳴に男性が衛兵を呼ぶ声もしている。
王族のみなが目を見開いて、パグ様を見ている。
「貴様、何者だー!!」
マルチーズ様の怒鳴り声で控えていた衛兵たちがパグ様を囲う。
王配に連れ出される女王様。
会場は気を失う女性たちも現れ、なにがどうなっているのかリサにはさっぱりわからない。
「リサ、大丈夫?」サモエド王子が側に来てくれていた。
「マルチーズ様、これは一体どういうことなのでしょう?」
パグ様も訳がわからないようだ。
「黙れ。私の妻をどこへやった!」
「私ならここに」
その言葉にマルチーズ様の怒りはさらに加速する。
「私だと!気持ちの悪い!女の格好などして、どういうつもりだ!!」
パグを返せとパグ様の胸ぐらを掴んでいる。
どーなってんの?
パグ様にパグ様を返せって何かの冗談?
何だかよくわからないまま、パーティーは後味悪く終わったのだった。




