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停滞


ヤマアラシはと言うと、どの計画も上手くいかないことに、苛立っていた。


この間の、ニャータの国王のマンチカンだって、事故に見せかけて殺し、その後もワンダの者の仕業だと吹聴させたはずなのに、思うような嬉しい報告は聞こえてこない・・・

あの事故で『洗脳』のネスーミを失ってしまったことは、残念だった。

あいつがいないと国王から命令を出させるのに時間がかかる。

自身の『人心掌握』である程度のところまでは、導いていけるのだが、そこに持って行くまでが一苦労だ。

ネスーミが国王と目を合わせ気絶させて、腹話術ですぐに命令を出せていた頃が懐かしい。


それにあのビーバーとヌートリア兄弟の存在が忌々しい。

本物なのか偽物なのか真意を確かめようにも、二人はレミング宰相のところに住まわせてもらっていて、手出しができなかった。

国王名義で呼び出しもかけたのだが、体調がすぐれないと姿を現さない。

宰相の家に見張りも付けているが、二人は全く動きを見せなかった。

何だか不気味だなと・・・落ち着かない。


それと、この国で最も警戒をしていた軍事総長がとうとう、最西端の砦を守る任務を辞退したいと正式に申し出てきた。

「国王からの命令に背くのですか?」

「それが・・・私ももう年でして・・・あそこの海風は体にこたえるんです。」

「そのようなことを言ったら、国王が悲しまれますよ・・・」

「そろそろ隠居して、息子に家督を譲ろうかと思っておるんです。」

説得を試みたたが、総長の意思は固かった。

だが僻地での任務が長く続いたせいか、すっかり人柄も丸くなっていた。

中央で再び政治に参加するつもりもなさそうなので、捨て置いても大丈夫だろう。


そう別段、これといって心配するような事柄はないのだが、だからと言ってこのままゲッシーだけを手に入れたとて、つまらない。


ネスーミの代わりとなる、使えそうな特性持ちを探そうとしていたら、『危険特性施設』が何者かに襲われ、子供たちが全員連れ去られたらしい。

犯人は子供を含んだ若い男女らしいが、まんまと逃げられたようだ。

そのせいで、ネスーミの代わりは簡単には見つけられなさそうだ。


しかも最近、郊外で『空からの使者』なる者が、次々と奇跡を起こしているとの噂を耳にする。

忌々しいその名前に、ヤマアラシは激昂した。

同時に再びその名前の者が現れたことに、底知れない恐怖を感じていた。

本当に本当にあの時の黒ずくめの女は死んだのだろうか・・・疑い出せばキリがない。

それは自身の目で死亡を確認はしていないからだ。

目を合わせただけで特性を消すような者が、そんなに簡単に殺されたりするのだろうかと思えてくる。

不安からヤマアラシはすぐにその者を捕まえるように命令を出したのであった。



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