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パーティーにて


人生初の本物のパーティーというものに、リサはびびっていた。

たこパやBBQパの経験などでは何の役にも立たなそうだ。


見上げると首が痛くなりそうな高い天井の大広間には、煌びやかな人たちが所狭しと踊っているのである。

映画みたいだなと他人事のように眺める。


ヒマだったのでずーっと見ていると、その中に女装したおじさんが1人混ざっているのを見つけた。


しかも誰もその人を嘲笑したりしないで受け入れているのである。

思ってるよりもこういうところは意識が進んでいるのねと感心する。


「こんなところにいたのか」

コーテッドが来ていた。

正装しているその姿は、絵に描いて留めておきたいぐらいの完璧さだ。


「誰かに会わなかったか?」

そう尋ねられたが特に心当たりもない。


「いいか、絶対に私の側を離れるなよ!」

話し相手が来てくれて、ずっとここにいてやると言ってくれてるので、何とかこの場は乗り切れそうだなと思う。


「でもいいんですか?お嬢様方がえらくこっちをみていますが・・・」

正確には老若男女がコーテッドの方をチラチラと見ている。


「ああ、放っておけ!」

些末なことだという感じだ。


さすが、天然タラシ。

モテる人ってもう感覚が麻痺してるんだろうか?

それか興味がないってことは、もう心に決めた人がいるとか?


「コーテッド様って既婚者なんですか?」

「ハァ?!急になにを言いだすのだ!」


コーテッドはラブラが現れるのではないかと気を張っていたのに、リサの質問に緊張が緩んだ。


「していない。サモエド様もまだなのに私が先にするはずないだろう。」

「えっ、王子様よりも先に結婚してはいけないの?」


「そのようなことはないが、サモエド様の幸せを先に見届けて安心してから、身を固めるのが従者としての心構えだろう!」

「そ、それは、立派な志ですね。」

ドヤ顔の迫力に押されて相槌をうった。


「そうしたら結婚したくても恋人には待ってもらわないといけないんですね。」

「そうなるな。」


コーテッド様ってそういう人いるのかなとリサは気になる。

結婚していると『あーそうなんですね』とあっさり受け入れられそうだが、彼女がいるほうが何だか落ち込みそうだなと思う。


「大体、私はモテないから女など寄ってこないがな・・」

「?? ん? んん? モテない。」


どのツラ下げてそんなふざけたこと言ってんだ!

どうせからかっているのだろうと、コーテッドを見る。

ところがいたって真面目な顔をしているのだ。


「ああ。でもひとりだけ、ずけずけと側に寄ってくる女がいるな。」


そう言ったコーテッドの顔が思いのほか笑顔だったので、リサは文句が言えなくなってしまったのだった。


そういわれてみればとコーテッドは考える。

産まれてから母親、デーン以外でこんなに親しくなった女性は初めてだと気づく。


こういうのは存外、悪くないなと思う。

いつもと違い正装しているリサも悪くない。

いつもこうしていればいいのになんて思っているのだった。


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