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スピッツとラブラ


この国の影の立役者はスピッツ王子とラブラであることは、二人の父親ぐらいしか知らない事実だ。


スピッツ王子はとても優秀であったが、王族にとって必要な『魅了』の特性がなかった。

そしてまたラブラも王家に仕えるのに必要な『従順』などの特性がなかった。


必要なものが欠けてる2人は、すぐに互いの境遇を思いやることができた。

主従の結びなどしなくても、とても信頼しあっている。


父達に、お前達には申し訳ないが汚れ役をしてもらってもいいか?と言われたときは、とてもイヤだったし、なぜ自分たちがと反発もした。


でも大切な家族を守るためだからと渋々始めたことだった。

家族とは常に距離を置き、わざと嫌われるような言動を取った。


影があるから光はより輝く。

女王やマルチーズ王子の評判が良いのにも彼らが一役買っていた。


庶民のパグ様がマルチーズ王子と結婚されるときも、2人は強く反対した。

そうしておくと、貴族たちの不満を少しでも和らげることができるからだ。


反対を唱えた貴族たちは一人一人呼び出し、納得してもらうまで話を聞くように努めた。

それでも難色を示すものには、裏切らないように動向を探らせた。

そうして何とかマルチーズ王子とパグ様は結ばれたのだった。



強力な『鑑定』と『感知』持ちのラブラには悪意や下心を持っている人をすぐに見抜くことができる。


新しく執事として雇った男に『密偵』の特性があったので、誰かに雇われてきたのだろうとすぐにわかった。


だがそんなものにひるむラブラではない。

逆に利用してやろうと、ずっと部下に見張らせていた。

最初に予期していたよりも大きな事件だったが、未然に防げて良かったと安心している。


しかし一難去ってまた一難。

コーテッドのヤツが『空からの使者』なんておかしな人物を王宮に連れて来ているらしい。


あいつは根が優しくて単純だから、どうせ騙されているんだろう。

『鑑定』で調べれば、そいつの本心などすぐにわかることだ。


バカな子ほど可愛いを地で行くコーテッドを思い出すと顔が緩んだ。

「弟のことか。」

考えていることを見抜かれたので、ラブラは驚く。

スピッツ様には隠し事はできないなと思った。


「俺の事もすごい顔で睨んでいたぞ、愉快なヤツだ。さっきの真面目に聞かないフリも成功ってわけだな。」


スピッツ様は今ではもう『汚れ役』を楽しんでおられる。

ラブラも影からみんなを支えるのは嫌ではなくなった。


ゴールデン兄上は勘がいいから私たちの役割について、何となく気づいてると思う。

だが弟のコーテッドにはすっかり嫌われてしまったようだ。


それは悲しいことだが、今回のようなことで王権をとられでもしたら、それこそみんなの首が飛んでしまう。

それに比べたら弟に嫌われるなど、たいしたことではないと思えるようになった。


しかし、とラブラは考えこむ。


気になるのはチャウ様の手紙にあったオーナー4世の男児についてだ。

そのようなことは初耳だったので、早急に調べなくてはと思うのだった。



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