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「知ってる事?」
「そう。寒い場所に閉じ込められていたのよ、ね?」
「うん」
「もしかして、水に囲まれていたのかしら?」
「そうだよ!何で知っているの?」
クロノは無邪気に驚いた。
あの場所は透明なガラスの様な壁に囲まれていた。
何故クロノが透明な壁と判断できたのかは、ミリアが注ぎ続けた聖水のおかげだ。
暗い泉の底で、上から降り注ぐ黄色い光。
ユラユラと揺らめく光が、周りを囲む水の存在を教えてくれたのだ。
それを知っているような言いぶりをするパルム。
訝しげに思われてもおかしくないのだが、幼いクロノには疑う心は無かった。
「知ってたわけじゃないのよ。そうなのかなって思っただけなの」
「そうなんだぁ」
パルムのはぐらかしに、クロノは納得した様子で、それ以上は聞いてこなかった。
ただ、パルムは望む情報を得られて満足だった。
ーー聖水。それで囲んで弱体化させたの、ね。どうやって調べたのかしら。忌々しいわ、ね。
そしてクロノの頭を撫でる。
撫でられて心地良いのか、微笑むクロノ。
可愛らしいが、可哀想に思う。
ーー自分を守る為に、この子を生み出したのかもしれないわ、ね。彼を起こしたら、消えてしまうのかしら。
もしそんな結果になるなら、残酷だと感じてしまう。
無邪気な笑顔を向けられ、胸が痛む気持ちが覆う。
しかし長年の想いを叶えたい。
ーーその時は。いえ、まだ決まった訳じゃないわよ、ね。
パルムが結論を先送りにした所で、漏れ出た感情を嗅ぎ取りクロノが口を開く。
「悲しいの?」
「あら?そうだったわ、ね。少し考え事をしていただけだから、大丈夫よ」
「そっか!」
「フフッ。さぁ、食事にしましょう」
パルムはクロノを抱いたまま、部屋の奥へと進んだ。
彼女の進む先に、書斎にある様な一人用の机が用意されており、リッタが椅子を引いて待っていた。
その椅子にクロノを座らせると、別に用意された椅子にパルムも腰掛けた。
「今からお持ちいたします」
「えぇ、そうして」
リッタが隣の部屋に繋がるドアに向かう。
それを目で追った事で、クロノは部屋の装飾品に興味を示す。
「キラキラがいっぱいだぁ」
燭台や彫刻の置物、調度品のどれを見ても、豪華な物ばかりで、埋め込まれた紫色の宝石が、蝋燭の火が揺らめくたびに、キラキラと光を反射させている。
「フフッ。綺麗でしょう?」
「うん!」
「私の好きな色なの」
「パルムの髪も一緒だね!同じ色で綺麗だなぁ」
「あら、嬉しいわ。フフッ」
幸せそうに笑う彼女の顔を見て、クロノは嬉しくなる。




