悪役令嬢とヒロインのヤバい妹
真っ黒覇権のノリで書きました。
「ここはドキラブの世界だったのね!!」
元々頭の弱い下の姉がいきなり妙なことを言い始めた。
皆さんごきげんよう。
私はフィクサー侯爵家が三女、メタリカ・フィクサーと申します。
三女と言っても現フィクサー侯爵家の当主であるお父様の後妻の連れ子なんですけどね。
しかも、その後妻、つまり私のお母様なんですが、元平民なものでして。
おかげで私は微妙な立場にいます。
そんな私ですが、家族は他に姉が2人います。
長女である、エレノーア姉様と次女のマリア姉です。
エレノーア姉さまは亡くなった前妻様の娘で、前妻様はそれはそれは由緒正しい貴族の娘だったそうです。
元々体の強くない方だったそうで、エレノーア姉さまを産んでから7年ほどで亡くなったそうです。
その後、すぐさまお父様はお母様を後妻として迎え入れたそうです。
2人の娘と一緒に。
私とマリア姉です。
そんな経緯で私たちはフィクサー侯爵家の一員となったのです。
お母様グッジョブ。
そんなこんなで私とマリア姉は大貴族の一員となったのですが、私はともかく、マリア姉は貴族の令嬢とは思えないくらい頭の中がお花畑なんですよね。
よく言えば活発。
悪く言えば考えなしな感じの人です。
前妻の娘であるエレノーア姉さまに度々ちょっかいを出したあげく、邪険にされれば虐められたなんて。
私たちの立場を考えれば邪険に扱われるのは当然だし、あんなので虐められただなんて嘆くだなんて。
マリア姉の頭の中はどうなっているのでしょうか。
確かに、エレノーア姉さまもエレノーア姉さまでうっとおしいですが。
マリア姉は自業自得として、私にまで当たってくることはないと思うのですが。
気持ちはわからなくはないですが、それはそれです。
しばらくしてから、エレノーア姉さまが第一王子の婚約者になって王妃教育で家にいる時間が少なくなったのは幸いでしたね。
それでもたまにめんどくさいですが。
主にマリア姉のせいで。
そんなマリア姉ですが、いきなり妙なことを言えばやはりギョッとなってしまうものです。
「いきなりどうしたんですかマリア姉?」
「とっても大事なことを思いだしたのよ! ここはドキラブの世界だったの!! しかも私はヒロインのマリアなのよ!!」
ドキラブ? ヒロイン?
何を言っているんでしょうかこの人は。
こんなのでも何かしらに使えるかと考えていますが、余計な事をやらかす前にやっぱり修道院送りにした方が良いんじゃないでしょうか。
どう考えてもこの人貴族に向いていませんし。
でも、お父様もお母様もマリア姉のことを溺愛していますし。
できるとしたら数年後ですね。
「道理でエレノーアに虐められるはずよ。だってアイツは悪役令嬢なんだもん」
またよくわからないことを言っています。
どうやらマリア姉の中ではエレノーア姉さまは悪役令嬢というものになっているみたいです。
悪役、お芝居などで出てくる悪人のことですね。
ドキラブの世界、ヒロイン、悪役。
この人はこの世界を創作物の世界と思っているのでしょうか。
元々頭の悪い人だとは思っていましたがそこまでだなんて。
「あ、あんたに言っても分からないわよね。所詮モブだし。てかまだ子供だし」
確かに子供ですが、あなたよりは頭はいいと自負していますよ。
なのになんだか馬鹿にされたみたいでムカつきます。
「こうしちゃいられないわ。早くノートに覚えている事をまとめないと」
マリア姉はそう言って令嬢とは思えない走り方で自分の部屋まで走っていった。
その日からマリア姉の頭はさらに悪くなった。
いや、お花畑からキチガイになったと言えばいいのかしら。
頭が悪いのは相変わらずですが、まるで人が変わったかのようです。
そして、人が変わったのはマリア姉だけではありません。
それなりの素質はあるものの、傲慢で高飛車で、私やマリア姉を見ると睨んでくるエレノーア姉さまも急に人が変わりました。
これまでの傲慢さが鳴りを潜めて、まじめで勤勉な人あたりの良い令嬢になっています。
私たちを見る目も変わりました。
私に対しては困惑と同情の。
マリア姉に対しては警戒の。
いったい何があったのでしょうか。
ふむ、少し調べてみましょう。
ー▽ー
ふ、ふふ、うふふふふふ。
まさか、こんな、こんなことがあっただなんて。
信じられない。
でもそう考えると納得できる。
なるほど、ドキラブの世界ね。
なるほどなるほど。
何て素晴らしい。
2人の姉の人格が変わり、数日後。
私は2人の部屋に侵入しました。
それぞれの部屋で見つけたのはノートです。
そのノートには多少の差異があったものの、まるで示し合わせたかのようにある部分が同じ内容で書かれていました。
どうやらここは2人にとってドキラブという物語の世界だそうです。
2人は前世とやらの記憶が戻って、ここがドキラブの世界だと気づいたようです。
ドキラブとは、いわゆる恋愛系の物語で、元は平民の主人公が貴族の学園に入学し、そこでいろんな殿方と恋をして結ばれるといった話です。
主な登場人物は主人公マリアと攻略対象と呼ばれる第一王子を筆頭にした殿方、そして悪役として登場する悪役令嬢エレノーア。
うちの姉たちですね。
そしてどうやら、主人公が取る行動によってさまざまな未来が待っているようです。
そのさまざまな未来において、悪役令嬢は断罪らしいですね。
特に、逆ハールートの悪役令嬢の最期はなかなかに悲惨で。
まあ、そのあたりはどうでもいいですね。
重要なのは、どこまでこのノートに記された通りに未来が進むのかという事。
この予言書の如き内容については信じられると思う。
なぜなら、姉2人が示し合わせたように同じ物語の内容を書いたこと。
ここがその物語の世界で、姉2人が前世の記憶とやらを思い出したのなら、人が変わったのもなっとくできる。
精神に異常をきたして人格が変わったりして別人のようになった人も見たことありますしね。
そして何より、物語内で語られる攻略対象たちの過去やトラウマ。
これがドンピシャに当てはまっているのが決定的ですね。
エレノーア姉さまや、何よりマリア姉があの王子のトラウマなんか知るはずがありませんからね。
なのに、それについて記されている。
このノートが予知や予言のように未来を表していると考えてもいいでしょう。
私について述べられているところがどうでもいい内容しかないのは助かりました。
知られていたら無理をしてでも消さなければいけない所でしたからね。
閑話休題。
これ通りに未来が進むとしましょう。
恐らく逆ハールートとやらに未来が進むのではないでしょうか。
マリア姉のノートにはそこに一番書き込みがありましたからね。
問題は、この未来にどこまで干渉できるのかということです。
何をしてもこのノート通りの未来になる強固な運命なのか。
それとも道が見えるだけの不確かな未来なのか。
まあ、恐らく後者でしょう。
仮に必ずこのノートの未来になるのなら、姉2人が前世の記憶を取り戻すなんてことはないでしょうから。
エレノーア姉さまもそうであることを期待して、どうにか断罪されないかを考えているようですし。
まあ、でも実験してみましょう。
明日、攻略対象の一人である子爵家の坊ちゃんがとある事故でトラウマを負う予定でしたが、何とか時期をずらしてみましょう。
もし、明日、事故が起きればそれはそれで考えますが、私が指示した通りに事故が起きなければ、未来に干渉できるというものです。
ならばこの未来、大いに利用できますね。
うふふ、喜んでくださいお姉さま。
あなたの望みをかなえて差し上げますよ。
ー▽ー
「私、シェド・グレモリーはエレノーア・フィクサーとの婚約を破棄し、マリア・フィクサーと新たに婚約することをここに宣言する!!」
数年後、貴族の学園の卒業パーティーで、予定通り婚約破棄イベントが起こりました。
うん、ノート通りのセリフですね。
今さらですが、エレノーア姉さまもですが、マリア姉はよくすべてのセリフを一字一句まで覚えていましたね。
それともそのせいで頭の容量がいっぱいになって物覚えが悪くなったのかしら。
まあ、どうでもいいか。
会場の中心では、第一王子がマリア姉を抱き寄せ、さらにマリア姉を守るように数名の攻略対象が侍っています。
そして彼らと敵対するようにただ一人エレノーア姉さまが正面にいます。
その他の方々は私を含めマリア姉曰くモブという奴ですね。
会場すべてに響き渡るような第一王子の宣言に、皆さんの時が止まったかのように体を硬直させて会場の中心を見ています。
私もそちらを鑑賞しながら美味しい食べ物をつまむ。うまうま。
そして、断罪劇が始まります。
まあ、ノートで内容はすでに知っていますが、実際にこの目で見る分にはなかなか面白いですね。
断罪の内容としては、まあ、エレノーア姉さまがマリア姉を虐めたとか危害を加えたとか、基本的にしょうもない内容です。
教科書を破いたり、ドレスにジュースをかけたりとかですね。
まあ、大体はしょうもない軽犯罪レベルですが、一つだけ階段からマリア姉を突き落とすという殺人未遂なものもありましたね。
そのような、マリア姉を虐げた内容を一つ一つ丁寧に攻略対象たちは発表していきます。
そして最後にはそのような悪女を王妃にはできない。
今すぐ謝るのなら赦してやると。
しかし、それでもまだ、エレノーア姉さまは冷静でした。
余裕と言い換えてもいいかもしれません。
ここまでは物語通り。
さて、エレノーア姉さまはどうでるのでしょうか。
私の予想に反することをしてくれると面白いのですが。
そんなエレノーア姉さまですが、謝るような事はしていない、何故ならそのような事何一つしていないと言います。
そもそもそれらが起こった時間すべてにアリバイがあると。
……はぁ、この程度ですか。
がっかりです。
このようなアリバイ工作程度でこの断罪劇を逃れられると思っているだなんて。
残念ながら、その程度でアリバイが成立するだなんて思わないことですね。
アリバイも、ですが、自分の主張を証明するには、証人と証拠が必要です。
「何を言っている? お前はこれらすべての時間でマリアの側にいただろう」
「は? しょ、証拠はあるんですか?」
「あるに決まっているだろう。証拠も証人も全てそろっている!!」
そう言って、証拠と共に先ほど告発した内容を真実だと証明する第一王子。
そのあまりにも自信満々な様子の第一王子を見て唖然とするエレノーア姉さま。
数々の虐めや軽犯罪の証拠を突きつけられるエレノーア姉さまは必死に弁明します。
「そ、その時間は私は確かに孤児院に」
「すでに院長からお前がその時間に孤児院にいたとするように脅されていたという証言は得ている」
「そんなの嘘です!!」
「嘘なものか! それにその時間帯にお前を見たという者は大勢いるぞ!!」
……もう少しエレノーア姉さまは聡明な方だと思ったのですがね。
どうして証拠を捏造されないと思っていたのでしょうか?
あなたがマリア姉を虐めていたり、階段から突き落とした(とされている)時間に訪れていたりした孤児院などはすでに買収済みです。
学園内でも、エレノーア姉さまに酷似した人に歩き回っていただいていますのでアリバイなんて一切ないんですよ。
エレノーア姉さまはシナリオに逆らおうと努力したようですが、どうしてこうも中途半端な事しかやらないのでしょうか。
そんなにこの断罪劇が嫌なら記憶を取り戻した時点でさっさとマリア姉を暗殺するなりすればよろしかったのに。
まあ、そうなったら私としても都合が悪くなるのでこうなって本当によかったですけどね。
私の目的は逆ハールートの完遂ですから。
だから、エレノーア姉さまにこの断罪劇を回避されるのは非常に都合が悪かったので裏で手を回させてもらいました。
攻略対象の一人に拘束され会場からつまみ出されそうになるエレノーア姉さま。
「た、助けて! シェルさま!!」
助けを呼んでも無駄ですよ。
第一王子に早々に見切りをつけたエレノーア姉さまが第二王子シェルさまに乗り換えようとしているのは知っていましたので。
ややこしいことにならないようにと先手を打たせてもらいました。
残念なことに第二王子はこちらに向かう途中の馬車が横転して怪我をしていることでしょう。
恐らく車輪の立て付けが悪かったのです。
間もなくその旨が知れ渡ると思いますが、それは今この時ではありません。
ですのでそう都合よく会場の外で第二王子が待機していたりはしないんですよ。
会場から追い出されたエレノーア姉さまですが、このまま実家に帰ることになるので付き添いとして私も同行するために、申し訳なさそうに第一王子に謝罪して、監視のために共に帰ることを伝えて会場を後にしました。
実家に帰ると早々に事の顛末を伝え聞いた父は大激怒。
エレノーア姉さまを戒律が厳しい事で有名な修道院に送ることを決めました。
エレノーア姉さまは必死に弁明するも、父は聞く耳を持たずに翌日にはエレノーア姉さまを馬車に詰め込み旅立たせました。
しかし、不幸なことに道中事故に遭い、エレノーア姉さまは亡くなってしまいました。
そして、憂いをなくしたマリア姉と第一王子は結婚して、周囲の男の人たちと幸せに過ごしました。
これにてシナリオ完結です。
ー▽ー
とまあ、これにてドキラブのシナリオは完結したわけですが、現実はエンドってわけではありません。
むしろ私にとってはここからが本番です。
そもそも、逆ハーのシナリオを完遂させることが私の目的だと言いましたが、どちらかと言えば手段に過ぎないのです。
私が前世の記憶を取り戻した2人の姉のノートを見た時は狂喜乱舞しました。
何しろ、ある程度の未来が見えた上に、異世界の知識を手に入れることができるのですから。
特に重要なのは異世界の知識です。
どの程度かはわかりませんが、普段の2人の様子を見ている限り、こちらよりも遥かに進んだ文明を持っているようです。
だから、それを手に入れるために、私は聡明な方であるエレノーア姉さまをシナリオを利用して陥れました。
修道院への道中、事故に遭って死んだのはエレノーア姉さまによく似た人です。
大変だったんですよ?
この計画を立ててから国中からあなたによく似た人を探し出すのは。
そして言うことを聞かせるようにするのは。
まあ、亡くなった人の事はどうでもいいんです。
それよりも、重要なのは今、目の前にエレノーア姉さまがいるという事です。
「ご機嫌いかがですかエレノーア姉さま」
「うぅ、メタ、リカ?」
「はい、あなたの妹のメタリカです」
「ここは?」
「うーんと、詳しい事はお話できませんが、私の秘密の部屋です」
誰にも見つからない自信がありますよ!
「わたくし、修道院に向かっていたはずじゃ」
「そんなもったいないことさせる訳ないじゃないですか!!」
「は?」
キョトンとするエレノーア姉さま。
聡明な方とは言っても状況をつかめていない辺りなんとも平凡ですね。
だからこそやりやすいのですが。
「ていうか、なんでわたくし首輪につながれて」
「だって逃げられたら困りますし」
「訳が分かりません」
「困惑しているようですが、後々自分で折り合いをつけてください。突然ですが、あなたには私の下で働いてもらいます」
「何を言っているんですか?」
「そのままの意味ですよ。これ、見ました」
そう言ってエレノーア姉さまのノートを見せる。
「そ、それは!?」
「非常に興味深い内容でした。おかげで私もスムーズに動くことが出来たし」
「ど、どういう事?」
「そのままの意味です。これは終わったことなのでいいじゃないですか」
ペイっと後ろにノートを放り投げる。
まあ、後で回収して燃やしますが。
「エレノーア姉さま、それとも前世の名前で呼んだ方がよろしいですか? ミシマエリカさま」
ビクリとエレノーア姉さまの体が震える。
「まあ、今さらですのでエレノーア姉さまとお呼びしますが。どちらかと言えばミシマエリカさまの方に用事があって。前世のこといろいろ訊かせてくださいね?」
ー▽ー
その後しばらく、飴と鞭を与え、従順になったエレノーア姉さまから様々な知識を聞き出した。
やはり、この世界に比べて文明がかなり進んでいるようです。
それにしても、やはりエレノーア姉さまは心が脆いですね。
男をあてがって、最中に第二王子の死を伝えたらすぐに心が折れてしまいました。
彼の事は利用しているだけかと思っていたのですが、本当に恋をしていたようで。
心の折れようから見て、辛い環境の中、彼が王子様の様に助けに来てくれることを願っていたんじゃないでしょうか。
ああ、本物の王子様ですね。
だからこそ死んだのですが。
あの断罪劇の後ですが、彼はエレノーア姉さまと共謀して、第一王子を陥れて自分が王太子の座につき、その後陛下を暗殺して王の座に座ることを企んでいたそうですよ。
私もお父様とお母様からそう聞きました。
別ルートでももっと早く知っていました。
で、そのことが露見して、そのまま服毒自殺したらしいです。
まあ、年の近い第二王子が死んでよかったです。
第一王子が王太子として存命しているとはいえ、第二王子は生きているだけで火種になりかねませんからね。
いつ死んでもおかしくない立場でしたので、死んだのが今だっただけです。
これで第一王子が王位を継ぐのは確実でしょう。
まだ第三王子がいますが、年が少し離れているのでこれで王家も安泰です。
マリア姉も無事に婚約者の立場に収まりましたからね。
子供も出来ているそうなのですぐにでも結婚するでしょう。
まあ、誰の子かは知りませんが。
どちらにせよ、その子はエレノーア姉さまの甥という事になりますね。
血はつながっていないので微妙なところではありますが。
ああ、大丈夫ですよエレノーア姉さま。
その子は責任をもって私が育てますので。
異世界の魂を持った人の子供だなんてとても興味がわきます。ふふっ。
ああ、その子供を身ごもったマリア姉ですがとても元気ですよ。
シナリオが終わってキチガイから頭お花畑に戻りました。
いえ、多少はまだキチガイですね。
あまり、一人っきりの所を見ているわけではございませんのでわかりませんが、ヒロインとかの単語もあまり言わなくなりました。
今を全力で楽しんでいるようです。
相変わらずわがままで、最近はさらに金遣いも荒く、慈善事業と称してろくでもない計画を立てたりしているようで、陛下たちも困り果てています。
攻略対象たちからすればそんな所も可愛いようですが。
陛下たちもどうにかしようとしていますが、どうにかする前に病死なさるでしょうし、どうにもならないでしょうね。
経過観察するに、エレノーア姉さまのお話を基に作った毒はとても有用なようです。
ありがとうございます。
きっと、陛下たち亡き後、王位を継いだ第一王子やマリア姉たちはきっと国を食いつぶしてくれることでしょう。
いやー、本当にマリア姉ってば傾国ですね。
5年後には傾きかけがベストです。
例のあれも私が成人する5年後までに形になっているように一緒に頑張りましょうねエレノーア姉さま!
ー▽ー
あれから月日は経ち、私は成人した。
その間にこの国は変わり果ててしまいました。
あの断罪劇の後しばらくして、陛下と王妃様は流行り病に倒れご崩御。
若くして第一王子が王になりました。
王になろうともやることは変わらず、マリア姉第一主義なため、彼女のいう事は何でも聞きました。
彼女の贅沢のために税は増え続け、失業者は増え、その失業者をマリア姉の思いつきで食べさせる炊き出しのせいでまた失業者が増えの負のスパイラルです。
私もそんなマリア姉のために商人を紹介したりと大忙しでした。
おかげで懐が温かいです。
たぶん、今この国で一番のお金持ちは私です!
しかも、何と、私、この度フィクサー侯爵家の女当主となりました!
お父様とお母様が私が成人してすぐになくなってしまいましたからね。
あーあ、残念です。
お父様の血を引いていないので微妙な立場だったんですが、平時ならともかく今はちょっと国が混乱しているのでゴリ押しました。
ついでに第三王子を婚約者にして後ろ盾にしました。
と言うかすでに結婚しました。
第三王子は昔からの縁で仲が良かったですからね。
私には絶対服従なんですよ。
さて、そんなこんなでこの国は絶賛混乱中です。
困りましたねー。
このままではいけないので、私の旦那様を王様にしましょう。
何しろ旦那様は第三王子ですからね。
彼を旗頭にして反乱を起こします。
既に他の貴族には根回しを済ませているので戦力は十分です。
元々、混乱しているから王家は見限られていますからね。
あっさりこちら側につく人も多いです。
あっという間に王都を包囲して城を落としました。
あんな浮浪者だらけの町。
簡単に落ちます。
で、第一王子じゃないや。
陛下の首を大々的に落として、旦那様が王様になりました。
私は王妃様です!
平民から大出世ですね!!
ああ、マリア姉は無事ですよ。
これでも血を分けた姉妹ですからね。
頭が悪いので有用な情報は得られないかもしれませんが、しっかりと私の監視下にあります。
それに、子供じゃなくて異世界の記憶を持った本人ですからね。
とても興味があります。
大丈夫、子供も一緒です。
攻略対象は知りません。
死んだんじゃないですか?
戦争でしたしね。
これで国も安定すると言いたい所ですが、元々が結構ボロボロですからね。
お金自体は私の下にありますが、少し経済が不安。
何しろ、特に王都はマリア姉のせいで失業した浮浪者がいっぱいですからね。
という事で試作した兵器の実験台にしましょう。
エレノーア姉さまの知識を基にして作った兵器。
見事に王都は焼け落ちました。
犯罪者予備軍の浮浪者も消えたし、私が昔組んでいた裏社会の連中も文字通り灰になりました。
これで、少しはこの国の犯罪率も減りますし、私の身も綺麗になりました。
ああ、もちろん王都は新しく別の場所に遷都していますよ。
あの場所、地政学的に良くありませんからね。
ですので消え去ったのは元王都という事です。
しかし問題があります。
元王都が消滅したのは誰の仕業かという事です。
実際は私が手配したのですが、隣国になすりつけて戦争を吹っ掛けました。
うちの経済を活性化させるために隣国を支配下において搾り取る必要があったのです。
もちろん負ける訳がありません。
さすがにバレてはいけないので王都を焼き尽くした兵器は使いませんでしたが、一部の部隊に他の兵器を渡しました。
剣とか槍とか馬しか使わない奴らに負ける訳がありません。
たまーに負けるようなクズもいるのですが、鹵獲された所でこれらの兵器はオーバーテクノロジーすぎるので解析も模倣も出来ないでしょう。
こうして、隣国を支配下に置き、少ししてどんどん領土を奪い取っていきます。
いやー、こう兵器で一方的に攻撃するのってなんだか爽快感ありますね。
正に無双って感じです。
この様子の感想文を書いてエレノーア姉さまに送りつけようかしら。
どんな顔をするのか楽しみです。
それともマリア姉と再会させようかしら。
姉妹は仲良くしないといけないですからね。
悪役令嬢だろうが、ヒロインだろうが、モブの妹だろうが。
私が世界を支配するまで、まだまだ時間がありますし。
お互い楽しく行きましょう。
主人公以外みんな不幸なんじゃないかな。
キャラクター紹介
メタリカ:主人公。野心的であり、幼いころから世界征服を本気を企んでおり、本気で実行してしまい、達成できそうになってしまっている人。いわゆる天才で、常人から外れた思考をしたり、話を聞いただけで大量虐殺可能な兵器を作ったりしてしまう。また、目的のためなら手段を選ばず、義理の姉を陥れたり、拷問に近いこともしたりする。さらには平気で大量虐殺を行ったりする。こうした異常な思考の持ち主ではあるが周囲にはそれを悟らせないように巧妙に動いている。本性を見せているのは絶対的に自分に逆らわないようになったときだけ。
エレノーア:悪役令嬢。良くある転生系の悪役令嬢。基本的におとなしく、臆病な性格のため、自身の保身を第一に動く。あくまでも常人なため、メタリカが考えたようなヒロインを暗殺するなどは思い浮かばない。第二王子は利用するつもりだったが本気で恋に落ちてしまっていた。さすがのヤバい妹もエレノーアの気持ちを組んで「前世の年齢を考えると、いい歳して笑」とは言わなかった。断罪劇を回避しようとしたが、どこかのヤバい妹が手を回したため、そのまま悪役令嬢としてシナリオの展開になり、失意のまま、馬車に詰められるが、メタリカに拉致され、地獄の日々を送る。もはやメタリカには逆らえないほどになった。たぶん一番メタリカが不幸にした人。
マリア:ヒロイン。良くある転生系のヒロイン。基本的に逆ハールートの事しか考えていなく、逆ハーを第一に動く。あくまでも逆ハーなので、エレノーアが記憶を取り戻したことや妹がヤバいことなんて思い浮かばない。妹曰く頭お花畑のキチガイ。どこかのヤバい妹が手を回したため実際にエレノーア(によく似た人)にいじめに合っていた。それをとても嬉しそうにしていたため、妹は引いていた。断罪劇を成功させようと頑張った結果、成功。そのまま第一王子とゴールイン。なんやかんやで無事王妃となって男を侍らせて幸せに暮らしましたとさ。からの反乱を起きて、没落。本人はヤバい妹ことメタリカに拉致られて、子供ともども実験体にされたりしている。一時期とはいえ、たぶん一番メタリカが幸せにした人。