51.尾張統一戦、赤鬼・青鬼の清州陥落の事(2)
尾張統一戦ファイナル祭り!
統一戦最後まで投稿中。
ドガガガガガガガ~~~~~~ン!
火薬箱、火薬筒の導火線を調整して、ほとんど同時に爆発するように調整した箱だ。
5,000貫箱を六つくらい重ねたくらいの大きな箱は2人で楽々に持てる。
が、その威力は山をも砕く。
離れているのに、矢盾を吹き飛ばし、荷馬車ごと慶次様達を押し倒すかと思うほどの爆風が吹き荒れた。
「びっくりした」
「死ぬかと思いました」
「威力があり過ぎるな!」
「今度からもう少し小さい箱を用意して貰いましょう」
慶次様と可成がその惨状を見て、そんな事を言っています。
扉が吹き飛んだのではなく、大手門そのものが無くなっています。
大手門の残骸が敵の頭上に落ちたみたいで…………南無!
あぁ、かわいそうな事になっています。
慶次様は深呼吸して声を上げます。
「野郎ども、行くぞ!」
「「「「「「「「「「「「うおおおおおおぅぅぅぅぅ!」」」」」」」」」」」」
赤い迷彩服を着用した慶次様が先頭に突っ込んでゆきます。
後に緑の迷彩服を着た倉街警邏衆もついてゆきます。
武器は槍、刀、二刀の小刀、鎖鎌、狼牙棒、薙刀と統一感のなさが目立ちます。
さらに、私が作った方天戟、青龍刀、蛇矛、月牙鏟、バスタードソード、モーニングスター、金棒、爪篭手と世界の武器の見本市です。
可成のおっさんには十文字槍をプレゼントしてあげましたよ。
慶次様達は盾すら持たず、軽装で思い思いの武器を持って飛び込んできます。
「放て!」
瓦礫の大手門を抜けると、清州の兵が矢を慶次様に放ちます。
ぴゅう、ぴゅう、ぴゅう!
飛んでくる矢と慶次様はさっと避け、あるいは、槍で叩き落とします。
『矢切の但馬』は健在でした。
でも、可成のおっさんはそんな無駄な動きをせずに、顔を腕で隠しながら突進します。
タングステンとチタンで織り込んだ迷彩服は伊達ではありません。
「まさか、まさか、まさか!?」
華麗に矢を捌かれると、思わず、敵も息を呑みますが、矢が利かずに突き進んでくる武者に度肝を抜かれます。
というか、あばれ牛の集団が襲ってきたみたいで逆に怖い。
可成が最短距離を走って敵中に入ると、一瞬で敵の大将の胸を一突きです。
ちっと慶次様が舌を打ちます。
矢も槍も利かぬ存在、それを人外と申します。
そう、鬼です。
「ご注進、ご注進!」
「如何した」
「敵、大手門を突破して本丸に向かっております」
「早すぎる! 早すぎるぞ! 何をやっておる! それに先ほどの大きな音は何だ?」
「敵は爆薬を使って大手門を爆破し、城下町を無視して馬出門に向っております」
「なぜ、正門に向わん」
南の大手門から城下町を通って、三日月湖を横切って北の正門に行くのが正規ルートです。
馬出門は道が狭く、大軍が通り難い上に、仮に馬出に突入しても本丸から矢の雨が降ってきます。
まず、突破は不可能でした。
一方、北の正門が正規の攻略ルートですが、一門、二門、三門と幾つも門を潰していかねばならないので、相当な犠牲を強いられる。
どちらも厄介です。
そう、普通ならです。
「大将、馬出門はこれを使いましょう」
「それは?」
「火薬箱から一束抜いてきました」
ふっ、慶次様が笑いてしまいます。
火が付けば、その場で全滅しかけない危険な火薬筒を束ごと腰にブラ下げて持ってきているのです。
正気の沙汰でありません。
「仕掛ける名誉を与えよう。行ってこい!」
「ははぁ」
飛んでくる矢を腕で庇うように走ってゆくと、馬出門の前に火薬筒の束を置いて、腰から簡易火打ち石の『ライター』を取り出して火を付けます。
導火線に火が付くと、矢など気にも止めずに逃げるのです。
ズドオォォォン!
馬出門も一撃で粉砕です。
「このまま、突っ切るぞ!」
「「「「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉ!」」」」」」」」」
爆発音が再び本丸にも届きます。
「な、何の音だ!」
「馬出門を破壊されました」
「兵を馬出にまわせ! 矢の雨を射かけろ!」
「はぁ」
「守護はどうした! 武衛様は!」
信友が叫びます。
奥の手です。
卑怯と罵られようと、守護殺しの大罪を那古野に負わせると脅す為の最後の切り札でした。
「それが、すでに蛻の殻でして、一人も残っておりまぬ」
「逃がしたか!」
どうやって逃がしたかなど知る由もありません。
万策が付きました。
横にいる河尻与一・織田三位もうろうろするだけです。
「左馬丞、大膳は何をしておるかのか!」
「織田が仕掛けてより見かけませぬ」
「大手門に行って討死でもしたのか?」
「そのように聞いておりません」
「もうよい、鉄砲を集めてまいれ!」
大膳は大手門が迫撃砲の砲火に晒されているのを見て、この戦に勝ち目はないと見きったのです。
ある意味、その嗅覚だけは戦国クラスだったのかもしれません。
織田が大手門と搦め手門に気が取られている間に、水門を開いて小舟で清須川(五条川)を下って逃げていました。
そういえば、史実の孫(信光)さんが清州を落としたときも、大膳は服部の荷ノ上城に逃げていたわね!
馬出に突入した慶次様の頭上から矢の雨が降ってきます。
しかし、慶次様達は平然としています。
「鬼じゃ、あれは鬼じゃ! 鬼には矢が利かん!」
まったく利いていない訳ではありません。
チクチクして多少は鬱陶しく、特に強弓で撃ってくる矢は強烈であり、装甲のある場所で受けないと、マジで痛いのです。
「裏手門に仕掛けた! みんな隠れろ!」
裏手門に火薬筒を仕掛けると一目散に逃げ出します。
ズドオォォォン!
「掛かれ!」
慶次様が叫び、倉街の警邏隊の強者が本丸に突入します。
「死にたくなくば、武器を捨てよ。俯いて腹這いになれ!」
「武器を持っているなら突き刺すぞ」
「お助け!」
「そのままうつぶせて、手だけ上げておけ!」
可成が大声で叫びます。
腹這いになっていても武器を持っていれば、危険な事に変わりありません。
「強い奴はいぬか! 俺に挑む奴はいないか!」
慶次様はまだ物足りないと叫びます。
落城寸前の清州城にそうそう強者が残っている訳もありません。
倉街衆も皆が強敵を求めて戦っているので早い者勝ちです。
当たりを引けない慶次様は本丸屋敷に突入して、部屋をドンドンと進んでゆきます。
「御大将、油断召さるな!」
「大丈夫だ」
襖をボンと蹴り飛ばすと、その先に大層ご立派な服を着た御仁が立っていたのです。
「放て!」
ダダダ~~ン!
鉄砲5丁が慶次様に向いており、それが一斉に火を拭いたのです。
「慶次殿」
「「「大将」」」
可成のおっさんと一緒に入って来た武将が叫びます。
うずくまる慶次様!
『ううううぅぅぅぅ、い~~~~~~~~~~てぇぇぇぇぇ!』
それは、それは、大きな声で『痛い』と叫んだのです。
ふっ、可成のおっさんと武将達が中に押し入って制圧します。
慶次様は膝を折って、胸を抑えています。
「だから、油断召さるなと言ってでしょうに!」
「まさか、鉄砲を構えて待っていると思わんだろう」
「それが油断というものです。忍様のご寵愛に感謝するのですな」
「まったくだ。命拾いをした」
ふふふ、慶次様には、スペシャルインナーを着て貰ったのよ。
タングステン・チタンの迷彩服の内側にゲル状の緩衝剤入りのインナーを着せて行かせたのが幸いしたわ!
それでも肋骨にヒビが入っていたんだ。
慶次様は動きが悪くなると嫌がっていたけど、私、グッジョブ!
流石に全員分は渡していない。
可成のおっさんらは厚手の木綿の服を着て貰っているだけよ。
死んでなければ、何とかなるでしょう。
守護代信友、家老河尻与一・織田三位もお縄に付いた。
これで慶次様はお役御免!
というか、辞退した。
あとは各城や砦に降伏の使者を送り、抵抗するなら討伐するという地味な作業だ。
(臣従という選択はない。降伏か、討伐だ)
人の手柄を取る趣味はない。
可成のおっさんは、倉街衆の中でも話の判る者を50人ばかり選んで、『火付け』や『乱暴取り』をしないか、その監視に人を付き添わせた。
国人、土豪、村や城下町の長と交渉するのは、勝幡の信実に押し付けた。
それが正しい。
慶次様は那古野から送られた助っ人に過ぎない。
手柄が大き過ぎて、みんな忘れちゃっているけどね!
みんな、清州の城主は慶次様がなると勝手に思っている。
でも、押し付けた事を慶次様は後悔する。
蜂須賀城の降伏を勧告に行った使者が降伏後に戯れの一戦を行ったのだ。
蜂須賀城は蜂須賀氏が追放されて、他の城主が治めている。
城主に雇われた傭兵の中に元城主の倅がおり、倉街の豪者と勝負をしたという。
「負けたのか?」
「申し訳ない」
名を蜂須賀 正忠という。
「信長様に紹介すると賭けておりました」
「判った。話だけは通してみる」
「申し訳ございません」
戯れといえ、真剣勝負です。
糞ぉ、俺が行けばよかった。