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信長ちゃんの真実 ~間違って育った信長を私好みに再教育します~  作者: 牛一/冬星明
第2章.尾張統一、世界に羽ばたく信長(仮)
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46.尾張統一戦、北畠と志摩地頭十三人衆による志摩沖海戦の事(3)

あたたたた、たたたたた、たたたたた、たたたたた、たたたたた、たたたたた、たたたたた、たたたたたた おぅわったぁ!!


「よくぞ! 我が秘技『百列槍』を凌いだのです」

「ふん、ただの突きではないかぁ!」

「まだまだありますのです」


秘技でも何でもありません。

ホント、連続突きです。

敵の大将は冷静に捌き、避け、弾いて凌ぎました。


背中で爆発が起こり、爆発を背負って登場した藤八のテンションはMIX(マックス)まで上がっていました。


敵の大将の前にいた6人を突いて、払って、蹴飛ばして海に叩き落とし、猿のように飛び跳ねて移動し、後背の敵も海に突き落として、大将戦に持ち込んだのです。


周りには藤八の護衛が散って、大将戦を邪魔しないように体を張っています。


まずは正面から5段突き、飛んで側面から、さらに飛んで突きを繰り返してゆくのが、『百列槍』と名付けた慶次様の突きです。


何を読んで閃いたのかな?


慶次様は左右に少し飛ぶだけであり、真横や真後ろまで飛ぶことはありません。


船の上を四方八方に飛びながらの連続突きを繰り出す藤八は、オリジナルを凌駕しています。


「おのれ、ちょこまかと!」

「双打から螺旋なのです」


苛立った敵が強引に振り降ろす刀の横を槍で叩くと、くるりとまわった槍先が手首を切り落とし…………ませんでした。


惜しい!


千代女ちゃんの『螺旋』で籠手切りです。


襲い掛かる敵をするりと躱して、手首を切り落とす技だそうです。


あれはすばやく相手の刀や槍の横面を叩く『双打』と組み合わせたオリジナルです。


別名、『初見殺し』


腕自慢にやってきた剣士や槍士を小柄な藤八が返り討ちにしています。


模擬戦ですよ。


もちろん、剣道のような防具も付けさせています。


宗厳様や勝家などに負けるより、ショックが大きいみたいだね!


「某、自惚れておったようでございます」

「中々の腕前なのです」

「お戯れを!」

「本当のことなのです」

「よろしいですか」

「はい」

「どうですが、切磋琢磨する気があるなら倉街の警邏隊に入る気はございませんか」

「警邏ですか?」

「あなたと同じ強者が揃っております。練習に事欠きません」

「しばらく、お世話になります」


こんな感じで、ウチの子らに負けた剣士や槍士が倉街の警邏隊に入って、いつの間にか、500人まで膨れていった。


そんな剣豪・槍豪のマスコットである藤八は、みんなから『技』や『秘技』を学んでいる。


技の多彩さでは小姓の中で一番だ。


「むむむ、無念。皮一枚だけなのです」

「今の軌道は? おかしいだろう?」

「おかしくないのです。そういう技なのです」


藤八の技は宗厳様の父である家厳のじいさまが監修している。


藤八は器用なので教える方もおもしろいらしい。


基本の『燕飛(えんび)』、『三学』、『九箇』、『円之太刀』、『天狗勝』を伝授しているとか!?


その中でも『奥義之太刀』極意の「(ころばし)」、「西江水(せいこすい)」も教えている。


よく判らん。


何でも教える順序は、燕飛→三学→九箇で、熱心に学ぶ者には九箇までは教えてもよいが、それ以上については「真実之人」でなくてはならない。


なんのこっちゃ!


藤八ばかり褒めると悪いから弥三郎のことも言っておこう。


弥三郎は藤八のような器用さはない。


家厳のじいさま曰く、弥三郎は『鈍重』(※)だそうだ。


鈍重とは、反応がにぶいという、本来のののしる言葉ではありませんよ。


使い熟すと、古い家屋のように使い続けると、古く鈍い黒光を放つ何とも言えない光沢が現れます。


1つの事を成し遂げることができる才能という意味があるそうです。


山の頂に向かうのに、道は1つではなく、人それぞれだとか?


倉警邏衆に人気者なのは藤八であり、二人の対戦勝率は弥三郎の方が勝率がいいのです。


二人は仲良しであり、ライバル関係なのよ。


なんて考えている間に戦いが苛烈を増してゆきます。


直線的攻撃の『百列槍』から螺旋の攻撃に変わる初見殺しを防がれた藤八は、次の技に移ります。


螺旋が駄目なら家厳のじいさま直伝の円の攻撃です。


相手の周りをくるくると周りながら、槍もくるくると回して、縦横斜めから攻撃を繰り出します。


「圧倒的に勝っているのよね!」

「うん、藤八の方が有利。でも、相手の方がかなり上段者」

「ヤバい?」

「かなり、ヤバい。おそらく、船の上で戦うのに慣れていない。凌ぎながら色々試している」

「さっさと決めなさい!」

「無理、ずっと決めに掛かっているけど、全部凌がれている」


円の攻撃の中に必殺の一撃を織り交ぜているらしい。

家厳のじいさまの直伝?


「八瀬ちゃん、転移で送ってあげるから藤八の代わりに戦える?」

「死ねというなら死ぬ」

「死ぬ?」

「この装備があるから死なないけど負けると思う」

「八瀬ちゃんの方が藤八より強いよね!」

「船上では別。あの藤八にも勝てる気がしない」


そうですか!

万策尽きた。

敵さん、笑っているよ!


「みんな、あぁなる」

「そうなの?」

「藤八と死合は凄く楽しい。沢山のびっくり箱が出てくるみたい」

「もしかして、負けている?」

「負けていない。でも、危ない。うん、藤八も判っている」


同じ技を繰り返した瞬間に負けるらしい。


「まだまだ、なのです」

「さぁ、俺を殺してみろ!」

「もちろん、そのつもりなのです」


ギシ、ギャン、ギシン!


「円は無限なのです!」

「隙アリ!」

「隙なんてないのです。蒼天なのです」


わざと緩慢な攻撃を入れて反撃を促し、急加速の反転で相手を切る。


宗厳様の技だ!


「ちぃ、無念なのです」

(ヤバイ、ヤバかった!)


膝を狙った一撃でしたが、わずかに足を上げて防がれます。


「惜しい! もう少し体が大きければ、相手を転倒させる事ができた!」

「そうなの?」

「うん、片足であの衝撃を受けることはできない。藤八が軽過ぎた」


藤八はちっちゃいからね!

でも、ちぃっちゃいのが可愛いんだ。

大きくならないで欲しい!


でも、藤八の槍の横腹に刃を追加して上げよう。


また、円の攻撃に戻りますが、今度は速度をぎりぎりに上げます。


刹那!


一瞬で動きが止まり、直線的な攻撃が入ります。


「うだだだぁ、螺旋槍!」


森三左衛門の突きだ!


槍を回転させて撃ち出すので威力は倍増される。


敵は上体を逸らして何とか回避した。


「惜しい」

「三左衛門の十文字槍なら致命傷だったのに!」

「藤八の腕力であれを持たすのは無理」

「あぁ、そうか!」


藤八の槍は私が最初に造った何の装飾もない槍だ。

装飾を付けると扱いが難しくなる。


藤八の槍は軽くって、固くて、丈夫というだけの何の特徴もない槍だ。


「忍様、十分、それで名槍」


閃いた!


硬糸髭を付けてあげよう。


炭素繊維で作った最凶の糸だ!


触れるだけ切れてゆく奴だ。


「凶悪そう」

「八瀬ちゃんもいる?」

「うん、欲しい」


欲しいらしい!?


上体を逸らした敵は無理をせずに後に倒れ込んでから起き上がった。


『藤八様、もう十分です』

「わかったのです」


荒尾衆が通り過ぎたので、藤八は後ろに飛んだ瞬間!


「逃がすと思うか!」

「わちゃ、なのです」


ガシャン!


瞬動と思うほどの突撃で間合いを詰めて、刀の一撃が藤八を打ちつけた。


もちろん、槍で受けたのでダメージはありませんが、着地点に足場がありません。


ざぶん。


「貰った…………ちっ!」


後から投げられた玉が3つ、止めを刺そうとした手を止めて後に下がります。


ぴかぁ!


赤玉(爆列弾)はもうなくなっていたので、白玉(照明弾)でした。


まばゆい光が放たれると、そこには藤八の姿はありません。


「はい、そこにお座りなさい」

「はいなのです」

「正座」

「はい」


照明弾が光った瞬間に転移で連れ戻したよ。


さぁ、お説教の時間だ。


 ◇◇◇


北畠 具教(きたばたけ とものり)

海戦はあまり好かん!


旗艦に乗って指示を出すだけで終わってしまう。


「具教、あまり余計な事をするな。おまえが活躍する場所は海戦の後だ」

「親父、判っている」


数で勝っているなら、さっさと熱田を目指せばいいのに湾口で敵を待つ。


敵もこちらと同じ横列に陣を引いた。


ダダダァァ~~ン!


鉄砲の音が鳴り響き、味方がバタバタと倒れていった。


なるほど、鉄砲はヤバいな!


「前衛に伝えろ! 盾を二重にしろ! いずれ弓が届くようになる。長弓は力の限り撃ち続けろ!」


ちぃ、全然聞こえていない。


「親父、ちょっと前に行ってくる」

「邪魔をするな!」

「判っている」


旗艦の弁才船から降りて、小早で前に出てゆく。


「落ち着け! 盾を二重にしろ! よく見ろ! 敵はもう目の前に近づいているぞ。耐えよ! 耐えれば、勝機が見えてくるぞ!」


少し乱れたが何とか立ち直ってくれた。


最初の一斉射撃は驚いたが、何発か撃つと散発的になっている。


やはり、連射に問題がある。


敵の南蛮船、弁才船、関船は連続で撃ち続けているので厄介だ。


だが、弓ほど早くない。


「よく狙え! 一矢も無駄にするな!」


もう少しだ。


もうちょっとだ。


『放て!』


すべての船からあらん限りの矢が放たれた。


ふふふ、志摩地頭十三人衆には弓の名手が多いと見える。


鉄砲、恐るるに足らず!


「鉄砲の打ち手を狙え! 左右に船を広げろ! 囲い込め!」


ズドォ~ン!


なっ、なんだ?


「くじら矢でございます」

「あれがくじら矢か!」


恐ろしい威力だ。


一撃で小早が沈んでいまった。


あれを使うと関船も一撃なのか!


「弁才船、関船は南蛮船に近づくな! 打ち合わせ通りに後続の船も左右に分かれさせよ! 急げ!」


あの南蛮船を黙らせないといかんな!


「南蛮船に取り付け! あれを落とせば! 我が勝ちぞ!」


むむむ、近づけばくじら矢の餌食、遠くでは鉄砲の餌食、どうする?


他は勝てそうだが南蛮船を残すと厄介だぞ。


どうする?


どうする?


うおおおおおおぉぉぉぉぉ!


敵が迂回して左翼から突っ込んできた。


しまった!


後の奴に右手を回られた。

失態だ。

正面に気を取られ過ぎた。


拙い、崩れるぞ!


「この小早を前に出せ!」

「若様、それは大殿の命に反します」

「あれを自由にさせれば、包囲網が崩れるぞ!抜けた穴を北畠の小早で埋める。逃がしてはならん! 今、止めを刺さぬと厄介なことになる。この北畠の小早を奴らの前に押し出せ!」


だが、南蛮船は俺の予想を遥かに超えていた。


帆を張ったかと思うと、風上に向かって進み始めた。


我が小早が遮らんと前に殺到したが、いとも容易く押しのけて進んでゆく。


それは、取り付く好機と俺は思った。


だが、それも早計であった。


ズド~ン、ズド~ン、ズド~ン、ズド~ン、ズド~ン!


あれが噂の焙烙玉か!


取り付いた我が方の小早を海の藻屑に変えてゆく。


取り付く間がない。


あれを止めるには、弁才船をぶつけねばならん。


だが、近づけばくじら矢の餌食か!


なっ、なんだ!


近づいてくるぞ?


八艘跳び、義経か!



ここまで読んで頂いてありがとうございます。



 ◇◇◇


■柳生の剣

『三学』:「身構え」「太刀(太刀路)」「手足」の基本

一刀両段

斬釘截鉄

半開半向

右旋左転

長短一味

燕飛(えんび)』:懸待表裏は一隅を守らず。敵に随って転変し、一重の手段を施す。

燕飛

猿廻

月影

山陰

浦波

浮舟

切甲

刀棒

『天狗勝』:敵に応じて形を成すを本原する。

花車

明身

善待

手引

乱剣

二刀

二刀打物

二人懸

『九箇』:間合い、先読みを型の扉を開き、「先の先」を極める。

必勝

逆風

十太刀

和卜

捷径

小詰

大詰

八重垣

村雲

『奥義之太刀』:はかりごと幃幄いやくうちめぐらして、勝つことを千里の外に決す。

添截乱截

無二剣

活人剣

向上

極意

神妙剣

『円之太刀』:盤を走る珠の如く円転自在な働きが出る


教える順序は、燕飛→三学→九箇で、熱心に学ぶ者には九箇までは教えてもよいが、それ以上については「真実之人」でなくてはならない。

(剣は専門外なのでよく判りません)


※).鈍重:昔、中国の河北省(かほくしょう)尚雲祥(しょううんしょう)という少年がいました。尚雲祥は拳法が習いたく形意拳(けいいけん)李存義(りそんぎ)という拳法家に学びますが、不器用な彼は五行拳(ごぎょうけん)の基本である劈拳(びーけん)がなかなかできなかったのです。そこで李存義は崩拳(ほうけん)のみ教えたのです。尚雲祥は3年の間、ずっと崩拳のみを鍛錬したのです。3年後、李存義は尚雲祥の崩拳を見て、拳訣(けんけつ)を極めたと高く評価したのです。


不器用とは、1つの事を貫き通す1つの才能なのです。


安岡正篤先生曰く、『鈍』は時に大成のための好資質と言います。


人を評するに秀才だの、鈍才だの全く意に介するに足りないのです。


鈍はごまかしがききません。


おっとりと時をかけて漸習(ぜいしゅう)するのです。




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