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信長ちゃんの真実 ~間違って育った信長を私好みに再教育します~  作者: 牛一/冬星明
第2章.尾張統一、世界に羽ばたく信長(仮)
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43.尾張統一戦、稲生の戦いの事(3)

【 織田 信清 】

織田 信清(おだ のぶきよ)は夜半に訪れた見目愛らしい乙女に襲われたらしい。


「夜分、前触れも出さずに失礼します」

「女性に襲われるのは嫌いではない」

「そうですか? それはよろしゅうございました」

「何の用か、お聞きしてもよろしいかな?」

「もちろんです」


目を覚ました瞬間、喉元に突き付けられた刃より、愛らしい目をした乙女に魅了された。


喉元に突き付けられた小刀を仕舞うと乙女は跪いて控えた。


信清は立ち上がり、乙女を見下ろした。


そして、自分を殺しにきた者ではないことを理解した。


「護衛の者はどうした」

「しばらく、眠って貰いました」

「かなりの手練れであったと思ったのだがな!」

「私、一人では少し手を焼きますから手伝って貰いました」


気づかぬ間に乙女の後に男が控えていた。


「こちらは織田信秀様に仕える杉谷 長盛(すぎたに ながもり)という者でございます」

「信秀様だと!」

「わたくしは信長様に仕える望月 千代女(もちづき ちよじょ)と申します」

「望月、100万石か!」

「はい、その100万石の望月でございます」

「ははは、何用だ」


100万石の領主が夜半に訪ねてくるとは愉快であった。


「信秀様から信清様へのお願いでございます」

「うむ、いかに!」

「天下統一の手伝いをして頂きたい」

「俺に手伝えと!」

「信清様の父君は、信秀様の右腕でございました。今度は信長様の右腕になって頂きたいとお願いに参りました」


千代女と名乗る乙女の目は真剣そのものであった。


どうやら魅了されたらしい。


 ◇◇◇


注進、注進、注進!


那古野勢と岩倉勢が戦を始めて一刻が過ぎると、信安の陣に何やら慌てて伝令が走ってゆきます。


消極的になった岩倉勢が林軍の陽動にも付き合わず、つば競り合いのみ繰り返し、鉄砲の活躍の場がありません。


そんな岩倉勢に伝令が川を渡って本陣に入ってゆくのです。


「昼も近づいてきたし、織田 信清(おだ のぶきよ)が犬山城に入城した頃かしらね!」

「そろそろでしょう」

「信安さんらは大慌てね!」

「帰る所がなくなりますから、急ぎ引き上げることになります」

「長門君、首を持ちかえっても手柄にしないという信勝新法を徹底してくれる」

「判りました。もう一度、伝令を走らせます」


長門君が各部隊に伝令を走らせてくれます。

この時点で犬山城の信清の寝返りを知っているのは、私達だけだから林のおっさんも伝令が走った意図を察してくれるといいね!


さて、信清は岩倉領に入ると(偽装の)農民兵を稲生に逃がします。


『犬山殿、謀反』


信清は岩倉城を占領するより早く岩倉城が信清に奪われたという伝令が伝わるようにする為です。

もちろん、稲生に伝わった頃には、実際に岩倉城の占領も完了しています。


そもそも、城代が信清の家臣のような者です。


酒を振る舞って、酔い潰れた信安派を捕えるだけの簡単な仕事です。


どんな酒かって?


そりゃ、信じられないほど旨い酒だよ。


誤算は、信清派の半数も一緒に酔い潰れてしまったことくらいかな!


到着した信清が大激怒です。


「俺も我慢しているのに、何たる失態だ」


酒の恨みは怖いのです。



主戦派の家老の稲田貞祐(いなだ さだすけ)と組んで、反対する家臣や家臣を主戦派に変えていったのが信清です。


その信清が寝返るとは露程にも考えていなかったでしょう。


千代女ちゃん、戦をする前に終わらせていました。


残念なのは、この事実を公開できないことね。


全部、信光と信清の手柄となるのよ。


私が「ごめんね、損な役割で!」というと、「わたし、100万石を貰っているから、もう一生褒美は貰えないと思っているわよ」とけろっと言い返された。


ここからアドリブの時間です。


 ◇◇◇


信安の武将がどんなリアクションを見せてくれるのか?


その動きに林 秀貞(はやし ひでさだ)青山 信昌(あおやま のぶまさ)内藤 勝介(ないとうかつすけ)の能力も試されます。


本陣の信勝の役目もこれでおしまいです。


目付けの百地 三太夫(ももち さんだゆう)もご苦労さま!


足軽は柴田勝家、前田利家、津々木 蔵人(つづき くらんど)らに引き継ぎます。


藤吉郎と弥助は万が一に備えて、A級装備〔忍が用意した武器〕に換装中だよ。


鉄砲は射程距離が長く、後ろから弾を入れることができる『島左近スペシャル』、クロスボウは火薬筒を収納できる中空矢を発射できる『クロスボウ(改)』、さらに本物の迫撃砲だ。


完全な過剰戦力だ。


間違って押し返されたら、圧倒的な火力で応戦して終わらせる。


「秀吉様、最初からこれを使えば、圧勝できたのはですか?」

「この戦は織田の戦いであって、竹姫様の戦いではない。この武器を使った時点で織田の負けじゃ。負けが続けば、見限られて織田は滅ぶ。これは那古野の民に被害がでないようにいう竹姫様の思いやりでしかない。今後も使うことはないぞ」

「難しいことはよく判りません」

「要するに、これを使わずに勝てというお達しじゃ」

「なるほど」


秀吉は出番のないことを祈った。


「おぉ、本陣が動いた」

「撤退のようですな!」

「うん、ここまで予定通りね」

「林様が喜びそうですな」


長門君がにやりと悪い顔で笑います。


この作戦は私も信長ちゃんも反対なんだ。


千代女ちゃんも長門君も怖いね!


軍師悩を持つ二人は、時として冷徹だ。


信長ちゃんは追撃をせずに逃がして、改めて降伏を勧告すると言った。


当然、当主は交代で蟄居させる。


私も信長ちゃんの意見に賛成だった。


しかし、二人が反対したのだ。


「忍様は時々、甘くなられる」

「そ、そんなことないわ」

「蟄居くらいで大人しくする連中じゃないわよ」

「責任を取らせて腹を切らせましょう」

「長門守、それは止した方がいいわ。それをすると織田が恨まれるわ」

「では、どうされます?」

「織田が許してくれると噂を流すのよ。そうすれば、敵同士で勝手に主戦派の首を取っくれるわ」

「その首を持ってきた者も処罰して、『織田は裏切り者を許さない』としますか」

「そう、いい案でしょう」


敵同士を戦わせて、恨みを裏切り者に押し付けるって事だね!


(発想が)怖いわ!


でも、その案を実行するにしても数が多すぎると処理が大変らしい。


「家中の人も手柄が欲しいでしょう。活躍の場を奪う必要はないわ」

「追撃し放題ですか!」

「一度、彼らのうっぷんを抜いておきましょう」

「各城や屋敷の攻略も放置しましょう」

「ははは、千代女殿は怖いですな。那古野の家臣も振いに掛けますか」

「一緒にやった方が楽でしょう」

「そうですな!」


千代女ちゃん、下策とか言って、信安との正面対決を反対している振りをして、織田の武将の間引きを一緒にするつもりなのよ。


たとえば、信勝の側近である津々木 蔵人(つづき くらんど)らはもう見限っている。


まぁ、騒ぎを起こしたくらいで蟄居処分することはできません。


兵を与えてしくじって貰おうと言うのです。


「手柄を立てれば、今までの罪は許して上げると言ってあげましょう」

「奮戦してくれるでしょう」

「乱取り、虐殺をすれば、軍規違反で厳しく罰しましょう

「さぞ、がんばってくれるでしょう」

「信勝様には、あらかじめ身分を問わず、乱暴・狼藉を行った者は厳しく処分をすると言って貰えば、おそらく!」

「大抵の者は手柄があれば、許して貰えると勘違いする」

「しかし、今回は容赦しない」

「その為にも、何度も言って聞かせておくのよ」

「では、武将以下の首を持ってきた者は褒美を与えない。さらに命令違反で処分すると誓詞を取っておきましょう」

「誓いは大事ね!」

「岩倉領で『乱取り』を行った者は、(はりつけ)にするとはじめから告知します」

「表札を立てて、各武将にそのことを徹底させる。自分の家臣が勝手にやりましたは許させない。織田では、今後『乱取り』がご法度であることを見せしめる必要があるわ」

「それを信勝様に出させるのですか?」

「信長様の方がいい? 名声が手に入るけど恨まれるわよ」


ちょっと、ちょっと、ちょっと!


千代女ちゃんと長門君で何を決めているの?


横で聞いていた平手のじいさんが口をあんぐりと開けて気絶しているわよ。


「いやぁ、気絶はしておりません」

「目の焦点があっていないから、気を失ったのかと思ったのよ」

「余りにも苛烈さに唖然としたまで」

「平手殿は反対する?」

「いいえ、織田の悪名。すべて信勝様に被って頂きましょう」

「じい、それは余りにも!?」

「信長様、じいめも覚悟を決めもうした。倅が約定を破るようですなら、じいが介錯いたします。恨みを買いますが、信勝様も名声を得るのです。決して悪いことではございません」

「………………………そうか、良きに計らえ!」

「「「「「「ははぁぁぁ」」」」」」


おぉぉぉ、こんな場面で『よきにはからえ』が見られました。


時代劇、いやぁ、戦国だ。


織田の規律を示した『信勝目録』は戦がはじまる前に武将に伝えられました。


もちろん、土岐川(庄内川)の向こう岸で林の居城を守る林ファミリーの皆さまにもです。


 ◇◇◇


この『稲生の戦い』は、戦いより戦後処理が難しい。


それは史実でも同じだね!


史実の『稲生の戦い』にも信長ちゃんが勝利した。


末森城に迫った信長ちゃんに母の土田御前が信勝の助命を願い信勝は命を救われる。


信勝は一門衆の一人として生かされた。


林秀貞と柴田勝家のように『再チャレンジ』の機会を与えられたのだ。


しかし、信勝はそれを生かそうとしなかった。


否、武士として死ぬことを許されなかったことを恥じたのではないだろうか?


それとも自分より劣っている兄の下に付くことを否定したのだろうか?


現実が見えないお坊ちゃんなんですよ。


信長ちゃんも温情など掛けず、出家か、追放にでもしておけばよかったのだ。


まぁ、結果は同じだろうけどね!


でも、そうしておけば、千代女ちゃんがいう戦場で死ねる武士の誉れが守られた。


美濃を追放になった斎藤 龍興(さいとう たつおき)がいい例だ。


打倒信長の急先鋒の一人として、歴史に名を残して死んでいった。


本人が満足だったかは知らないけどね!




現代と価値観が違うんだ。




信勝を切り捨てろとかっこいいことを言いながら!


イザぁ、大量に頭を切るとなると尻込みをする。


矛盾だね!


でも、人が死ぬのを見るのは嫌なんだ。


時代が違うからと言って、信念まで曲げたくない。


パコ、パコ、パコ、チ~ン!


閃いた。


領地替えだ。


さっそく、千代女ちゃんと長門君に聞いて貰った。


「忍って、やっぱり私より鬼畜ね!」


えっ、どうして?


「忍様、この長門守、感服致しました」


死ぬのは勝手、死んでも許して上げるつもりはない。

領地召し上げか、領地替えか、どちらかを選択しろと言っているだけですよ。


しかも領地替えに応じた家は、一族の誰かを織田の家臣として城代にするというお得な話です。


「奥州より北の領地なんて、島流しより酷いわよ」

「どこが?」

「蝦夷に、樺太でしょう?」

「うん、そうよ」

「川の水を凍る極寒の地で間違いございませんか?」

「北国だからね」


「「鬼畜ね(ですな)」」


「10倍の加増よ」

「城代という人質を取るなど、某には思いもつきませんでした」

「人質じゃないし! お米は取れないけど、麦は作れるし、甜菜(テンサイ)を売った代金でお米を買えば、問題ないわ! サトウキビと同じで、砂糖になるからが高価な値段で買い取って上げられるわよ」


「「鬼畜ね(ですな)」」


これで殺して首を持ってくるより、生かして捕えてこいと堂々と言える。


城攻めの前に必ず降伏を勧告するという軍規が目録追加だ。


軍規を無視して馬鹿が城攻めをするだろうな!


那古野の武将であっても破った者にも樺太だよ。


これで千代女ちゃんが願った敵も味方も在庫整理ができる。


私は人手が手に入る。


もちろん、乱取りは禁止で破れば磔が待っている。


この見せしめは千代女ちゃんと長門君が折れてくれなかった。


『目には目を、歯には歯を』


人が誰かを死に至らしめたなら、その殺人者も処刑される。


ハンムラビ法典だ!


誰一人、殺すことなく、『乱取り』したら、どうするかって?


うん、『100叩きの刑』でいいんじゃない。


江戸式は死なないように叩いた。


でも、1週間くらいは痛みで寝ることもできなかったそうだ。


大陸式は棒で叩くので、途中で死ぬこともあったとか。


どちらを採用するかは、二人に任せよう。


甘いかな?


「「「鬼畜ね((ですな))」」」


どうしてそうなるのよ。


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