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信長ちゃんの真実 ~間違って育った信長を私好みに再教育します~  作者: 牛一/冬星明
第2章.尾張統一、世界に羽ばたく信長(仮)
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33.尾張統一前哨戦、 グァム沖海戦の事(1)

那古野では連日連夜で軍議が開かれていました。


飯が美味しいからでないと思いたい。


しかも清酒・焼酎のいずれか3合(お銚子3本)までなら好きな酒が好みで呑めます。


「すみません。天上の焼酎はございません」

「ならば、芋焼酎を!」

「某は米焼酎で」

「拙者は清酒を」

「この酢豚のおかわりを貰えるか!」

「しばらくお持ち下さい」


タカが3合で酔っぱらうものか?


どぶろくより度数が高いのは確かだけどさ、出来上がってないよね。


長門君から3合は多過ぎたと苦情を受けた。


今更、減らしたら大騒ぎになってしまうとよ。


落語じゃないけど、


1杯にして、人、酒を飲む。

2杯にして、酒、酒を飲む。

3杯にして、酒、人を呑む。


おかしいな、呑まれちゃっているよ。


そうなると、おかずと飯などの遠慮がなくなります。


酔っ払いに理屈は通りません。


(いくさ)前にケチっても仕方ないから大盤振る舞いだ』


食べ放題だ。


なんて、言った私が馬鹿でした。


それは大学のサークルメンバーが『食い放題』の店に入ったような光景です。


そう、焼き肉をテーブルに上に置いた瞬間、すべての肉を鉄板に落とし、瞬時に学生がさらってゆくのです。


生肉は駄目!


ちゃんと焼こうよ。


タレくらい付けようよ。


ハイエナの群れ、餓鬼の塊です。


見ているだけで気分が悪くなります。


続け様に出る追加オーダーに何と言えばいいのか?


鬼気迫る学生、顔が引き攣る店長、焼き肉屋のアルバイト、1週間で止めました。


精神が持ちません。


あれは『地獄絵』です。


そう、那古野の大広間はそんな餓鬼地獄が渦巻いているらしい。


「親方、豚の揚げ物が切れました」

「ミンチ肉を肉団子にしてぶっこんでおけ!」

「うっす」


材料は尽きる事はありませんが、材料があればできる訳もありません。


その手間をあざ笑うように追加が入ります。


賄い方はすでに戦場化しているようです。


みんな、ごめんね。


がんばれ、親方・賄い方のみなさん!


 ◇◇◇


話を聞きながら信長ちゃんがぽかんとします。


「忍様、私は軍議の話を聞いたつもりだったのですが?」

「うん、私も軍議の話しかしていないよ」

「酒と飯の話しかやってないのです」

「ごはんの話しかでませんでした」

「軍議の話題は、『今日の晩御飯』の話題で持ちきりよ」


軍議と言っても、「早馬は来ぬか」、「今日の今川はどこに着いた」で終わってしましって、後はご飯の話題しかない。


「鍛錬の状況や武具の確信はしなかったのですか?」

「特にないね!」

「斉藤家の話は?」

「特になし! でも、流石に今日の軍議で聞く事になるよ」

(山城から陣触れを出たからね)

「朝倉はすでに出立しているでしょう」

「美濃の山奥の情報は入り難いから特にないよ」

「そういう意味ではなく、土岐 頼純(とき よりずみ)は牛屋(大垣)城を奪還すると公言している訳ですから!?」

「そうだね!」

「信長様、那古野の方々は牛屋(大垣)方面を末森の管轄と思っているのでしょう。那古野は西三河の一部と戸田の渥美半島の管理を任されています。那古野の兵を使うとすれば、今川方面しかないと思って不思議はありません」

「なるほど! 千代女ちゃん、頭いい」

「ちゃかさない」

「まぁ、独断で西条とかに増兵するとか、言われなくて助かるわ」

「そうね」

「清州や岩倉への警戒は?」

「話題にすらならない」


はぁぁぁ、信長ちゃんが少し長い溜息を吐きました。


実際、長門君と林のおっさんと平手のじいさんの三人が舵取りをしているので問題はありません。


「信長様、そもそも大殿はご病気、当主は不在の状態です。代行の信勝様を祭り上げて、勝手に出陣できる状態ではありません。(安祥城の)信広様、(牛屋城の)信辰様、あるいは三河7城か、戸田から救援要請でもない限り、兵を動かせません。軍議とは形ばかりで、救援の要請を待っているだけになるのは仕方ありません」

「そうですね。その通りです」


信長ちゃんがほっとした顔になった。


しまった。


いい所を取られた。


私の馬鹿々々!


 ◇◇◇


きらりと海上から光が見えました。


「光信号なのです」

「解読です」

「「ワ・レ、テ・キ・カ・ン、ミ・ユです(なのです)」」


藤八と弥三郎が鏡を使ったモールス信号を解読してくれた。


「信長ちゃん、敵だってさ」

「判りました」

「みんな行くよ」


海岸の火を消して、護衛の忍者も戻って来ます。


『転移』


一瞬で甲板に移動すると、智ちゃん達も配置について階段を降りて、中に入ってゆきます。


本来、最低船員80名の戦列艦を練習船1番艦の40名で動かしています。


プラスの慶次様らが加わっても全然足りない訳なのよ。


特に砲撃手とか!


智ちゃんらに撃つくらいで覚えて貰って頂きましたよ。


シドニーに向かう時も考えてね!


海戦が始まってから教える訳にもいかない。


撃った後に、『きゃあ~!』とは叫んで喜んでいました。


遊び気分だったね。


練習船2番艦が到着しても、最低船員80名に達するだけで人手不足は同じなんだよ。


 ◇◇◇


佐治船長が私に双眼鏡を渡して西を指差しました。


西から見えて来たのは艦隊5隻です。


先頭がガレオン、残る4隻はキャラックです。


5隻とも、標準的な(全長30m)排水量500トンクラスです。


あれっ?


出島の2番ドックのキャラック船って、(全長60m)排水量1,500トンですよ。


熱田と津島に貸し出す約束したけど、よかったのかな?


まぁ、この戦列艦が(65.18m)排水量3,100トンもありますよ。


大きさにビビッて帰ってくれないかな?


普通、キャラックは貿易船で武装しません。


でも、アフリカの喜望峰を回ってくるような船で武装しないなんてありません。


バリバリの武装艦です。


そう言えば、種子島に鉄砲を伝来した船もキャラックだったハズだ。


東アジアの主力はまだキャラックなのかもしれない。


AIちゃん、当時の船の数とか、大きさの統計とか残ってない?


“ありません”


そっか、仕方ない。


 ◇◇◇


さて、ミゲル・ロペス・デ・レガスピが来るのは1565年じゃなかったの?


〔今は天文15年(1546年)です〕


なんて自問自答しても始まらない。


そもそも彼らは太平洋を横断して来るから東だ。


何故、西から?


「忍様、射程に入りましたが、どうされますか?」


佐治 為景(さじ ためかげ)、佐治船長が私に聞いています。


決まっているでしょう。


私がにやりと笑うと、佐治船長もにやりと笑います。


「話し合いしたし、旗上げ」

『キロ、旗揚げ』


佐治船長が大声で叫びます。


国際信号旗を含む万国海法会(ばんこくかいほうかい)が成立したのは19世紀だ。


16世紀のスペイン人に通用するとは思わないけど、これが織田の新しい海のルールと佐治達に教えてある。


そして、おそらく南蛮人はそれが通じない野蛮人とも教えている。


相手が野蛮人だと言って、こちらも野蛮人になる必要なない。


これは教育だ。


躾けだ。


「悪いわね。付き合わせて!」

「世界最強の戦艦に乗せて頂いているのです。これくらいは当然の礼儀です」


慶次様は意地の悪い顔でにやりと笑っている。

あぶない事が大好きな子だからね。


信長ちゃん、千代女ちゃん、宗厳様も当然と言う顔している。


長谷川と山口はちょっと困った顔って感じかな?


おっと、見えないと思ったら藤八と弥三郎はシュラウド(静索:マストに登る縄梯子)を昇って、トップ(檣楼)を通り過ぎるとメインマストの頂上まで上って双眼鏡を覗いている。


ホント、あの子らは身軽だわ!


『進路変わらずなのです』

『停船する気なしです』


そりゃ、そうだ!


さて、西から来る船団と言う事は、スペインの船団しかない。


スペインのフィリピン植民地化は享禄2年(1529年)から始まっており、すでに17年が過ぎて、主な島を占拠がはじまっています。


今は大航海時代だ。


スペイン人はコンキスタドール(征服者)の真っ最中だ。


彼らはすべての文明が劣っていると見下している。


グァムか、マリアナ諸島しかない海域に友好親善が来るとは思えないな。


しかし、失敗だ。


メキシコのアカプルコとルソン島の銀を運ぶ銀航路が生まれるまで、グァム・マリアナ諸島に来ないと勝手に思い込んだ。


これは私の完全なミスだ。


伊賀グァム領の警備を見直す必要があるな!


くそぉ、(スペインの野郎)やってくれる。


そんな事を考えていると、敵の船団との距離が詰まってゆきます。


「野郎ども、撃ってくるまで、撃ち返すな! 撃って来たなら、誰に喧嘩を売ったか思い知らせてやるぞぉ」

「「「「「「「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」」」」」」」」」」」」


佐治さんと水夫のみなさんもノリがいいな!


さぁ、開戦だ。



ここまで読んで頂いてありがとうございます。





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