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信長ちゃんの真実 ~間違って育った信長を私好みに再教育します~  作者: 牛一/冬星明
第2章.尾張統一、世界に羽ばたく信長(仮)
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14.森可成は縄文人顔(?)の事。

ロサンゼルスへ向かう大圏航路は、日本を北上し、北緯49度(千島列島・春牟古丹島と越渇磨島の間)の偏西風を捉えて、太平洋を横断する。


アメリカのワシントン州シアトル辺りにも寄港地が必要かな?


あとは西海岸沿いに南下すれば、ロサンゼルスに入港できる。


帰りはメキシコのアカプルコまで南下し、貿易風を捉えてグァムとマリアナ諸島に戻ってくる。


グァムとマリアナ諸島から黒潮を捉えて北上する。



一方、シドニー、メルボルンへの航路は、小笠原諸島沿いに南下してグァムとマリアナ諸島へ至り、少し東周りコースを取って南下して、シドニー、メルボルンを目指す。


帰りはほとんど直線的に北上して、グァムとマリアナ諸島へ至り、黒潮に乗って戻ってくる。


つまり、グァムとマリアナ諸島はどちらの航路でも使う絶対に確保しておきたい海域な訳だ。


どの航路でも片道10日は掛かる。


風が悪かったり、時化で流されると倍以上の日数を要する事もある。


寄港地で新鮮な果物と水の補給は欠かせない。


私は地図を広げて、帆船の航路とグァムとマリアナ諸島の重要性を説明した。


伊賀のみなさん、何人出してくれるのか判りませんけど、余裕があれば、他の拠点もいくつか抑えたいな!


ハワイとか。


夢が広がるよ!


蛮族スペインに好きにさせないぞ。


 ◇◇◇


それはともかく!


「慶次、調子が悪いの?」

「悪くなかったわ。むしろ、調子がいいくらい」

「どこが?」

「あぁ、忍でも判る。かなり押されてたわね」

「いつもと違くない?」


私は庭で観戦している藤八と弥三郎を手招きして呼んでみた。


「おはようございますなのです」

「今日はお早いです」

「今日の相手は誰?」

「今日の相手は強敵なのです」

森 可成(もり よしなり)と名乗る浪人です」


森可成?

そりゃ、大物だ。


森家は河内源氏の棟梁鎮守府将軍八幡太郎義家の7男である陸奥七郎義隆の子孫にあたる系譜で、美濃守護の土岐頼芸に仕えているハズだ。


顔は爽やかな縄文人顔で、目が大きく、彫りが深く、眉間が突き出している。


「顔は縄文人と弥生人の中間くらいが私の好みなのよね」

「あんたの好みは聞いてないって~のぉ~」

「そうぉ、私は千代女ちゃんの細くて長い手足や細い指が好きだけどな!」

「そうぉ!? ありがとう」

「それが縄文人の特徴の1つなのよ」

「ふ~ん」


千代女ちゃんは余り興味がないようだ。


可成の体がほっそりしていい感じだ。


「顔が良ければ、小姓にしたのに!」

「声、出ているわよ」


おっといけない。


百地三太夫をはじめ、みんなが生温かい目で見守ってくれている。

いい家臣を持ったよ。


(まぶた)が二重とか、耳が福耳(分離型)というのも縄文人の特徴の1つだ。


唇が厚く、体毛が濃いのは、苦手なんだ。


顔は縄文人で、体付きが弥生人と言うのが一番駄目だね。


『NO、ゴリラだ!』


可成の息子、森 長可(もり ながよし)は、鬼の形相から『鬼武蔵』と恐れられた。

あの大きな目をさらに見開いて、眉間を狭めれば、口を結んだら吽形(うんぎょう)像にそっくりだ。


それは槍を振り回せば、さぞ恐ろしかろう。


可成は大きな目を『カッ』と開いておらず、常に笑みを零しているので怖くない。


まぁ、その笑みが慶次様をカッカとさせる原因になっているみたいだ。


こりゃ、負けだ。


 ◇◇◇


槍の応戦を見て違和感があった。

慶次様らしくない。


「慶次、槍ってこんなのだった?」

「違うのです。もっとパァとバァなのです」

「そうです。パァパァで、バァバァバァです」


藤八と弥三郎は擬音だらけで要領を得ません。


「要するに慶次が攻めてない事じゃない」

「それだ」


宗厳様と慶次様の攻防は、常に慶次様が攻撃を仕掛けている。


突き出し、振り回し、切り返し、なで打ちと慶次様が攻撃を仕掛け、宗厳様は受け流し、払い流し、切り返しで反撃を加える。


主導権は常に慶次様にあるのだ。


「そりゃ、宗厳さんの刀は『総受け』だからね」

『総受け』

「で、慶次は『全攻め』ね」

『全攻め』


そうか、宗厳様は受けで、慶次様は攻めだったのか!


“逃がさないぜ! 俺の槍を受けてみやがれ!”

“できるものならやってみな”


ぐへぇ、ぐぐぐぅぅぅふふふ。


いいわ、いいね!


“宗厳様は受けで、慶次様は攻め、いいわ!”


「忍、声に出ているわよ」

「気のせいです」

「まぁ、いいけど。絵草紙の話じゃないわよ」

「わぁ、判っているわよ」


庭先で慶次様と可成が戦っている件だ。


「慶次の顔に傷を付けたら死罪って話ね」

「いや、いや、いや、それはないから」

「死罪になってもおかしくない話なのです」

可成(かなり)、強いです」


千代女ちゃんの説明では、慶次様は攻める間をまったく作らせて貰えないらしい。

宗厳様は総受けなので慶次様が攻めるのを待ってくれるが、可成はそれをさせてくれない。


絶え間ない虚実の突きが慶次様に襲い掛かり、慶次様は慣れない受けに回っている。


「一歩後退しながら、躰を左右に開いて相手の攻撃を外し、直ちに反撃する抜き技、そして打ち落としと続けているでしょう」

「うん、うん、そんな感じ」

「その慶次の槍を捲き落としで外しているから反撃できない」

「巻き落としって?」

「槍の先をくるっと捲いて弾くのよ」


相手の槍を螺旋状に撒いて、槍を奪ったり、違う方向に弾く技があるらしい。


「慶次殿の得意技の二段突きや大車を出す隙ができないのです」

「慶次さんの双打を受けても、可成(かなり)は飄々としています」


双打?


「慶次の技の1つで、相手の武器を叩く技よ。強く握っていれば、手が痺れるし、最低でも相手の武器の軌道を逸らして、懐に飛び込むタイミングを作る技ね」


なるほど、慶次様は向かってくる可成の槍を横から殴打する。しかし、一瞬で体を入れ替えて、逸れた槍がつばめ返しのような曲線を描いて戻ってくるので、慶次様は攻撃する間もなく、戻ってきた槍を防がねばならなくなる。


「可成は廻り、背筋受け、巴返し、清流水返し、撥ね返しと体捌きが上手ね。特に点足と言う踵を付けないで爪先の足で躰を躱すのが上手、私達と同じくらい、体の使い方が巧いわ」


専門用語が多くで全然判らないわ。

つまり、フットワーク!

すり足とつけ足の使い方が上手と言う事だ。


「慶次の方が沢山動いているのに」

「それだけ、無駄が多いって事ね」

「千代女ちゃん、どっちの味方?」

「模擬戦だからね」


千代女ちゃんはシビアでした。


あっ、慶次様が吹き飛ばされた。


「慶次、がんばれ!」


 ◇◇◇


【 滝川慶次 】

ははは、中々にヤバい。


宗厳のおっさんみたいに巧く受け流しでできない。


「ほら、ほら、ほら、小僧行くぞ!」


がしゃん、がしゃん、がしゃん!


受けるので精一杯っていうのが悔しいね。


巻き技が決まるのは誘われた時のみだ。


こっちの槍筋を見切られている証拠だ。


間合いを切っても槍が延びてくる。


同じ三間半の槍なのに、四間半にも、三間にもなると言うのは奇妙な使い方だ。


「小僧、逃げているだけでは勝てんぞ」

「そんな事は判っているよ」


1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、間っ!

槍を捌きながら、一瞬の間に体を放り込む。


ぎゅいん!


『螺旋槍』


捻りを加えた槍が目の前に飛んでくる。


判っていたよ。


誘ったんだろ!


この槍が厄介なのは、受け流しが利かない事だ。


体を崩して強引に避ける。


後方回転蹴りを槍で受けて後転しながら立ち上ると、槍の猛攻がやってくる。


くそぉ、舐められている。


『慶次、がんばれ!』


げぇ、今日に限って早く起きやがった。


寝とけば、いいのに!


これでタダ、負ける訳にはいかんな。


舐めているが、油断している訳じゃない。


同じ受けをすれば、さっきの捻じり突きを誘っているのが判るハズだ。


カン、カン、カン、ガチャン!


ここで強引に突っ込む。


刹那!


グウィ~ンと、捻じった一閃の突きが討ち放たれる。


受け流すように槍を当てるが、捻った槍は合わせた槍を弾くのみだ。


但し、俺ごと、体ごと弾かせる。


『蒼天』


宗厳のおっさんの技を真似るのはムカつくが、足捌きで一転して、その鋭い加速で横殴りにする。


宗厳のおっさんが忍に対峙した時に使った技だ。


中国の故事、『蒼天已死』から取った技は自らの守りをすべて捨てて、一撃に掛ける技らしい。


変わった足さばきの技は、槍では殴打するだけで必殺の一撃にならない。


だが、ちょっとでも度肝を抜いてやる!


ギュ~~ンと横から伸びてくる槍先に可成は槍を戻して守りに入った。


ちぃ、届かねえか!


ぐほぉ!


 ◇◇◇


慶次様の槍が回転して可成の横顔を襲った。


守った?


おそらく、はじめて守った。


攻守が入れ替わった瞬間、可成の左足が飛んで慶次様の顔面を捉えていた。


慶次様がそのまま倒れた。


私は走る。


「慶次、大丈夫!」

“息はあります。問題ありません”

「脳内出血とか、後遺症とかあるかもしれないでしょう」

“脳内スキャンを開始します”

“問題ありません”

「そう、よかった」


うぅぅぅ、慶次様の意識が戻ってきた。


「負けたか?」

「うん、負けた」

「ダサいな」

「大丈夫、私の中では勝っているから」

「そうか」

「とりあえず、これで顔を冷やしておきなさい」


濡れた冷たいタオルを収納庫から出して渡す。

この腫れた顔の恨み。


「宗厳さん、とっちめてやりなさいっ!」

「御意」


あぁ~~~~~マジで懲らしめたよ。


宗厳様は頼りになるね。



ここまで読んで頂いてありがとうございます。



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