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信長ちゃんの真実 ~間違って育った信長を私好みに再教育します~  作者: 牛一/冬星明
第2章.尾張統一、世界に羽ばたく信長(仮)
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9. 千代女ちゃんがお怒りの事。

シドニーから転移で帰ると縁側に仁王立ちした千代女ちゃんが待っていた。


「おかえり、シドニーは楽しかったですか?」


なんて清々しい笑顔だろう。

とても千代女ちゃんとは思えない。


「千代女さん、おかえりなのです」

「お帰りなさい」

「ただいま。藤八も弥三郎も楽しかった」

「はい、毎日が日曜日なのです」

「日曜日です」


藤八と弥三郎は『日曜日』を誤解している。

絵草子の日曜日と言えば、楽しいイベントが盛り沢山だからね。


「それは良かったわね。楽しかったでしょうね。赤鬼一揆とか、赤鬼一揆とか、赤鬼一揆とか」

「急だったし、流石に迎えに行くのは無理よ」

「知らせるくらいは気にしなさいよ」

「知らせたら怒るじゃない」

「当然でしょう! つまらない仕事で忙しくしているのに、私だけ仲間外れって酷くない」


千代女ちゃん、(おこ)です。

マジ、怒です。

調略の仕事が地味で辛かったんだね。


「そりゃ、辛いなんてもんやありまへんで!」

「どのあたりが?」

「信頼を勝ち取る為に、付き合いたくない人のところに何度も足しげく通うなんて地獄ですわ。女子はんなら、酒の相手をしたり、誘惑したりとか」

「誘惑はしてないわよ。私は信長一筋だからね」

「なら、尚の事、話は進みませんな」

「そうなのよ。義清よしきよなんて、私達を疑って話が進みやしない。あんた、天上から落とせば、すぐに済むんだから、自分でやりなさい」


義清って、村上か!


北信濃の4郡を治める領主からすれば、頼ってきた海野一族を引く抜く不貞の輩だもんね。

織田と同盟と言われてもピ~ンと来ないだろうし、滋野望月家への佐久旧領安堵状なんて空手形は、気に食わないだろうね。


あわよくば、南下して佐久郡も切り取る気なんだよ。


鉄砲も内山崩れで大活躍だった為に注目されている。

その鉄砲を面会するだけで1丁貰えると言うから会わない訳もない。

でも、会ってからの交渉が大変な訳だ。


しかし、村上は城の数だけ鉄砲が手に入る。


村上家は労せずして、100丁くらいの鉄砲を手に入れた訳だ。


種子島に上陸したポルトガル人が2丁の鉄砲を売った代金は金1,000と残されている。


千両箱とすると、2丁6000万円相当かな?


国友に持ち込まれた時点で、10貫文(60万円)くらいに暴落している。

これが江戸時代になる頃では、2貫文(12万円)と駄々下がりだ。

仮に10貫文としても、100丁揃えば、1,000貫文と少々の火薬を貰える訳だ。


『会ってはならん』


そうは言えない。

鉄砲、欲しいよね。


「私らがずっと嫌味を聞いている間に楽しい事をしていたのね」

「別に楽しくないって」

「面白そうじゃない」


千代女ちゃんから罵倒が聞こえる。


あぁ~、色んな言葉が飛び交うな!


『このぉ、駄目美人』


ちょっとその言葉を何故知っているのぉ。

私の学校での仇名だよ。


「どうして、その事を!」

「絵草紙に書いてあったわよ。動くと美人が大無しになる美人を『駄目美人』って言うって」

「あれか!」


絵草紙を取り上げようかな?

駄目だ。

反乱が起きる。


特に、信長ちゃんとか、藤八とか、弥三郎とか、その他が判らん。


判らないが被害が甚大だと思う。

奥の女中衆とか、賄い方の人もよく借りてゆくもんね。

那古野には漫画文化が根付き始めている。


うむぅ?


「ねぇ、藤八、弥三郎は最近、『なのです』とか、『のぉ』とか語尾に付けるよね」

「はい、それを付けると、忍様が喜ばれると、千代女さんが言われました」

「いわれたのですのぉ」


やっぱり此奴か!

私はトンでもないモノをこの時代に持ち込んでしまったかもしれない。

あぁ、もうやり直せない。


デカルチャー!


 ◇◇◇


千代女ちゃん、真面目に仕事していた。


無造作に投げられた手紙を読みながら感心する。

滋野望月氏は当然として、それでも3割の海野一族を調略していた。


海野一族当主、海野 棟綱(うんの むねつな)が居るのが嬉しいね。

なんと砥石城に入っていた矢沢頼綱(やざわ よりつな)が入っていた。

頼綱は真田頼昌の三男であり、真田幸隆の弟だ。


頼昌は海野氏の庶流だったが、海野氏の当主である棟綱の娘を妻にしたと言う。真田家が棟綱を連れて、箕輪城主の長野業正を頼って上野国に逃げている。


「頼綱って、中々の豪の者だよね」

「織田に仕える条件が、あんたと一騎打ちを所望だったわね」

「えっ、わたしと? 面白くないよ」

「言ったけど、聞いてくれない」


えっ!?

屋代正重(やしろ まさしげ)正国(まさくに) 親子、雨宮 正利(あめのみや まさとし)って、村上の一族だよね。


長野市、川中島がある当たりの領主のハズだ。


「この内応って、何?」

「寝返るって意味よ」

「この人って、村上だよね」

「義清が織田と戦うと言った時は、織田に付くって言っているのよ」


よく判りません?


村上は色々と条件を付けているけど、織田と同盟を組むと言っている。


「はっきり言うと、織田が今川や武田を破って甲斐・信濃に来ると思ってない訳」


あぁ、納得しました。


支援が欲しいだけか!


「義清は『儀』の人って言われるけど、根は卑しいと言うか、戦国武将なのよ」


嫌々、私以外は千代女ちゃんらも戦国時代の人間ですよ。

どうも那古野の人は感性がズレてきている。


「義清は織田が信濃に入ったら何かと文句を付けて織田と戦うつもりみたい。それを知って屋代正重さんと雨宮正利さんは、マジで織田が信濃に来るようならその力は本物だから織田に逆らいませんと約定を書いて寄越したのよ」


一族の当主を説得せずに寝返るのか?


戦国時代の武将は生き残る事に半端ないね。


でも、義清にしても、屋代正重、雨宮正利も織田から貰うモノは貰う気みたいだ。


「まぁ、いいでしょう。旧式の国友式種子島を送ってあげましょう」

「なんや凄い話やな! しかし、国友を旧式とは」


あぁ、変なおっさんに聞かれていた。


「言っておくけど」

「判っとるがな。他には絶対に言わへん」

「絶対よ」


で、最後に滋野望月家から人質って、何?


「それは葉紅(はくれ)が言い出したのよ」

「葉紅?」

「私の代わりに、望月盛時に嫁いでいった子」


あぁ~いたね。

那古野から離れたくないって泣いていた子だ。

余程、那古野が気にいったらしい。

可哀想だったから、送別会をやってあげたんだ。


「村上義清が人の土地で調略は許さない。信濃から出る事も罷りならんとか言うのよ」

「なんだよ。それで援助だけくれって!」

「屋代家と雨宮家が支援の見返りに人質を出すという事にしましょうと、あの子が言い出して、人質を出して家には支援が3倍にしてはと言い出した」

「あぁ、それで支援額が3倍になった訳か」


村上義清も屋代の正国の子供を養子に貰って織田に送ってくる。

村上家、屋代家、雨宮家が率先して人質を出す。


「何、人質を出すだと?」

「人質ではありません。諜報です」

「義清様、尾張は遠く、我々は織田の事を知りません」

「つまり、織田を探らせる訳か」

「はい」

「人質を出すなら、支援を3倍にして良いと申しております」

「なんと!」

「ご子息を出されるのが嫌なら、我が孫を養子とされて送りだされませい」

「よいのか?」

「屋代家も村上の一族、否とは申しますまい」

「良し、受けるぞ」


村上義清が受けたのだから他の家も人質を出す。

その人質に同行する者が何人でもお咎めはなしだ。

しかも同行者が多いほど保障金も増えると言う。


立場上、織田の人質だ。

しかし、竹姫の預かりになる。

私の家臣待遇だ。


葉紅ちゃん、中々の策士だ!


 ◇◇◇


「藤八、弥三郎。信長ちゃんに言って、返状を書いて貰って来て」

「判りましたです。」

「です」


この盟約は、織田が支援を開始した時点で有効となる。


銭と鉄砲は判るけど、米の支援をどうやるのか?


村上が難癖を付けるのが、この米の支援だろうね。

南信濃を武田が支配している以上、米の支援は越後の長尾に頼らなければならない。

しかし、その長尾家はお家騒動の真っ最中であり、支援してくれるどころか、逆に支援されることを欲している。

織田は村上に支援したくても道がない。


普通ならね!


村上の葛尾城、屋代の屋代城、雨宮の唐崎城の三城に銭2,000貫・鉄砲20丁・米2,000石の支援が始まった時点で同盟の条約は発動する。


その他の城は、これの10分の一だ。


毎年、貰える上に、人質を出した分だけ上乗せが貰える。


とりあえず、AIちゃん!


“国友種子島、30分で500丁ほど用意しておきます”


よろしく。


銭も米も収納庫に十分ある。


今日中に完遂だ。


「あぁ、それから調略から人質交渉に変わったから、代表も葉紅に代わって貰った」


葉紅に押し付けた。


千代女ちゃんも策士だ。


あとで、ファッション雑誌の服を一着とホールケーキを所望されました。


千代女ちゃんは高く付くな!



※).知っている嘘と知らない嘘

今更ですが、忍やその他の武将が、『信長様』、『信長ちゃん』なんて、普通は言いません。


信長ちゃんの本名は、


平朝臣(たいらのあそん) 織田(おだ) 上総介(かずさのすけ) 三郎(さぶろう) 信長(のぶなが)


です。


つまり、


(かばね) 苗字 通称(官職+名前) (いみな)


と表します。


中でも、諱(忌み名)は、呪いなどを掛ける時に使われる名前であり、親や兄弟、親しい者、あるいは、仕える目上の者にしか教えません。


まぁ、神社や寺などの起請文などには諱が書かれていますから、戦国時代では完全に秘密と言う訳ではなかったようですが、余程の親しい者しか『諱』で呼ぶなどあり得ないのです。


しかし、小説で、『三郎様』、『若様』、『お館様』、『殿』、『上総介様』などと、度々変わってゆくと判らなくなりますし、臨場感が無くなってしまいます。


『リアリティー』と『プレゼンス』


この2つを比べて、判り易さを取らせて貰っています。


リアリティーを追い駆けると、現代と違い過ぎて判り難くなってしまうんですよね。


小説は難しいです。


(大きな嘘を駆逐する為に、小さな嘘を付く、矛盾だ!)




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