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信長ちゃんの真実 ~間違って育った信長を私好みに再教育します~  作者: 牛一/冬星明
第2章.尾張統一、世界に羽ばたく信長(仮)
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2.三河、三ヶ寺の事。

本證寺(ほんしょうじ)と言うけど、石垣に囲われた水堀、その内側に土塀があり、これは城です。


寺の中央の本堂がなければ、城以外の何ものでもありません。


うん、城と認定。


門前町も破壊されて、何となく申し訳ない気がするね。

信長ちゃんを擁護に回れば、僧侶に店が壊され、僧侶に味方すれば、一揆で壊される。


やるせないな~!


でも、助けない。

空誓と言う馬鹿が長島の檄に乗っかるからこうなった訳だ。

責任は彼らで払って貰おう。


「赤鬼様」

「怪我はしていないかい」

「はい、大丈夫です」

「この子は信長ちゃん、私の主人よ。あなた達を心配して付いて来てくれたのよ。感謝しなさい」


私がそう言うと、信長ちゃんも軽く声を掛ける。

若様に声を掛けられて感涙にむせぶ者もいるね。


そんな嬉しいのかな?


民たちが信長ちゃんに感謝の言葉を述べてゆきます。


「信長様」

「信長様、ありがとうございます」

「来て頂いて感謝します」


『信長様~!』


少し後になると、絶叫するように信長ちゃんの名前を連呼する者が多くなってゆきます。


信長ちゃんのジュニアアイドル率が急上昇中よ!


コンサートを開いて歌でも歌わせれば、親衛隊ができちゃうかもね。


親衛隊は15歳以下の男の子に限る。


えへへぇ~。


いいかも、凄くいいかも。


「忍、顔が崩れているぞ」

「忍様は表情が豊かですものね」

「そういうのじゃ、ねえだろう」

「可愛らしいお方だと慶次は思いませんか?」

「信長はもの好きだね」

「私も忍様が好きなのです」

「俺も、俺も」


最近、慶次様は辛辣になってきた。

うん、それはそれでいいんだ。


慶次様らしい。


信長ちゃんも藤八も、ついでに弥三郎も私の天使だ。


「まぁ、そりゃいいけど、警戒を怠るなよ」

「はいなのです。僧侶の方は殺気が消えておりません」

「警戒です」


おっと、いけない。


仕事中だったよ。


 ◇◇◇


壊れた門をくぐると、関羽雲長の青龍偃月刀を思わせる大きな薙刀を構えた僧侶が三人立っていた。その中央の僧侶は怖い顔でぎょろりと私と信長ちゃんを睨みつけます。


「怪しき術を使う輩め」


こらぁ、こらぁ、威嚇するな!


慶次様と宗厳様が喜んでいるでしょう。


「まだ、やりたりないなら付き合ってやるぜ」

「ふん、こちらの負けだ」

「おい、おい、そりゃねえだろう」

「この身1つの命に非ず、すまんな!」


漏れだす、殺気は悔しさで一杯と言う所なのかな?

個人の武ではどうしようもない。

薙刀を後ろの僧侶に渡すと、膝を付いて平服した。


「私はこの寺を預かる空誓と申します。何卒、私に従った者をお許し頂きたい」

「拙者、安楽寺の中島と申す。空誓様は尊い血筋のお方。何卒、拙者の首でお許し下さい」

「同じ、円光寺の桜井と申します。空誓様をお助け下さい」

「お願いします」

「どうか、空誓様を」

周りの僧が一斉に平服する。

おぃ、慕われているね。


先陣を切って戦う住職ってどうなんでしょう?


私の肩を言継のおっさんがつんつんしています。


「なぁ、なぁ、空誓って、蓮如の孫やから、殺すと石山本願寺も矛を降ろされへんなるで」

「関係ないです」

「そりゃ、竹姫はんには関係ないやろうけど、公家衆の一部も敵に回りまっせ」

「別にいいですよ。丸ごと潰してしまいますから」

「そうか、それやったら好きにすればええ」

「最初からそのつもりです」


私と言継のおっさんの会話を聞いて、僧侶の方々から殺気が生まれます。


面倒臭いね!


「よく聞きなさい。首なんて欲しくないのぉ。あんたの汚い首を見ても嬉しくないのよ。死にたい奴だけ、余所に行きなさい」

「汚いとはなんだ!」


中島が怒りに任せて立ち上った瞬間、慶次様の槍が喉元にぴたりと付いていた。


「悪いが、ウチの姫様に近づかせるつもりはねえぞ」

「慶次殿の縮地なのです」

「素早いです」

「……………」

「あなたの相手ではありません」

「……………」

「申し訳ない。戦いたいなら、後日、私がお相手致しましょう」


宗厳様も私の前に一瞬で出ていた。


中島は二人の動きにまったく付いていけていない事を悟って膝を折った。


「中島、助けて下さると言っておるのだ。感謝しましょう」

「申し訳ございません。拙僧では力およびませぬ」

「は、は、は、相撲なら何とかなるであろう」


くすくすっと周りの僧たちが笑う。


空誓は負けず嫌いのようだ。


「要点だけ言うわよ。一揆をした民・百姓に報復をしない」

「当然の事でございます」

「織田への臣従」

「承知」

「仏敵、織田信長の撤回と他の寺の説得」

「可能な限り、尽くさせて頂きます」

「門前町を貴方らの金で復興させなさい」

「もちろんでございます」

「以上よ」


へぇ?

平服していた空誓が間抜け顔を上げた。


「本證寺の引き渡しは?」

「いらないわよ」

「人質は?」

「面倒よ」

「赤おぃ、いいえぇ! 竹姫様の討伐命令の撤回は?」

「やれるもんならやってみなさい」


にやりと笑って言ってやった。

ウチの連中も破顔している。


「言っておくが、俺は忍に勝てないぜ」

「我が父も、拙者も負けもうした」

「このおっさん、柳生宗厳と言って、俺よりちょっと名が売れていると思うぜ」


剣豪、柳生 家厳(やぎゅう いえよし)の名は、塚原 卜伝(つかはら ぼくでん)上泉 信綱(かみいずみ のぶつな)に及ばないものの、それなりに伝わっていたようだ。


宗厳様が卜伝や信綱に及ばないと言われて、眉を一瞬だけ少し吊りあげていた。

言い返さないのは大人対応だけど、慶次様みたいに、「なぁ、忍。卜伝と信綱を探そうぜ!」と言ってくれた方がすっきりするんだけどね。


空誓が「家厳も敵わぬのか」なんて呟いていた。


武術家って、変な所で情報通だよね。


 ◇◇◇


「さぁ、そこでぐちゃぐちゃ言っている暇はないよ」


戦が終われば、怪我人の治療だ。

収納庫から在庫が少ないアルコール100%の消毒液を取り出した。


「一度、水で傷口を流したら、新しい布に消毒液を付けて綺麗に拭いて上げなさい。それが終わったら、この布を捲く」


綿で作った布と包帯をその場に出すと治療を始めます。

メキシコにサツマイモを回収に行った時に綿も回収してきた。


季節外れで綺麗なコットンボールはなかったが、それをAIちゃんの索敵能力で回収すると、後はモデリングで布と包帯を作成したのだ。


地面に落ちた数少ない種も簡単に回収できる。


AI様々だね。


西三河の碧海郡(へきかいぐん)に撒いた木綿の種は、発芽から2週間くらいで苗に成長する。

それを畑に移植すると、8月には花を咲かせ、10月にはコットンボールが作られる。


成功すれば、来年から安定して綿花を作る事ができる。


「こらぁ、おっさん! それは飲み物じゃないんだから」

「ちょっとだけ、ホンのちょっとだけ」

「完全蒸留した品だから、美味しくもなんともないよ」

「ちょっとだけ、な、いいやろ!」

「飲んだら、もう二度とお酒を上げないからね」

「ケチやな、わかったわ」


言継のおっさんが公家であろうが付いて来た限りこき使う。

傷を拭き終わったタオルに顔を埋めて、臭いだけでも楽しもうとしているよ。

どんだけ酒が好きなんだよ。


「赤鬼様、弟を助けて下さい」

「無理を言うな! もう死んでいる」


腹が潰されて虫の息だ。


AIちゃん、治療ってできる?


“不可能です。そういった機能はありません”


ですよね!


“転移で欠損部を排除し、モデリングで接合は可能です。砂糖入りの食塩水を血液の代わりに投入し、ウイルスと寄生虫を転移で排除すれば、生存確率を上げる事は可能です”


それって、治療って言わない?


“言いません。治療とは完治を意味します。抗生物質や活性薬剤のない時点で、すべて運任せとなり、治療とは言えません”


まぁ、いいよ。

お願い。


“了解しました”


寺の外に出ると死体が並べられている。


あぁ~、沢山死んだね。


“すでに死んだ肉体の欠損部を集めて、蘇生に挑戦しますか?”


できるの?


“知りません。壊れた頭部などを他のボディーに挿げ替えれば、9割程度の完全体に戻せます”


頭ごと挿げ替える?


それも臓器移植って言うのかな。


そりゃ、駄目だ。


この時代では完全に倫理に反しそうだな。

でも、それで生き返るの?


“判りません。ただ、我が能力を駆使すれば、余った欠損部をかき集めて、100体ほどの完全な人造体を作成してみせます”


今、何って言った。


“人造体です”


人造人間を作ってどうする!

この世界に反逆の機械人形なんていないよ。

キメラもフランケンシュタインもいらない。


ホラーだ!

それは恐怖だよ。


“安心して下さい。細胞の拒絶反応を緩和する薬剤がありません。一週間以内に死亡します”


作る意味ねぇ!


なんて、AIちゃんと漫才している間に怪我人を治療してゆく。


“治療ではありません”


ぐちゃぐちゃに潰れた欠損部が整形されて、傷一つない体に戻れば治療だよ。

実際は一回り小さくなるか、中身が空洞になっているんだけどね。

そんなの見た目で判らないよ。


「なんや、これぇ! 信じられへん!?」

「南無阿弥陀仏」

「南無阿弥陀仏」

「南無阿弥陀仏」

「南無阿弥陀仏」

「あんた達、拝んでないで仕事しな!」


どうして私だけが仕事しているのよ。

本證寺(ほんしょうじ)は、勝鬘寺(しょうまんじ)〔岡崎市針崎町〕、上宮寺(じょうぐうじ)〔岡崎市上佐々木町〕と言う三河における浄土真宗の拠点となる寺の1つです。

住職の第十代空誓(くうせい)は蓮如の孫と言う尊い血筋であり、三ヶ寺の中で一番発言権が大きかったようです。


浄土真宗がなぜ、これほど大きくなったのかと言えば、門前町で『楽市楽座』を開いて、寺院を中心とした商工業・運輸業者、農民、武士たちによる強力な門徒集団が形成されていたからです。


この『楽市楽座』と言えば、織田信長を想像する人が多いですが、座を廃して、自由に物を売れるようにしたのは、浄土真宗の門前町が最初なのです。


それらを認める形で六角家や今川家が大名として認めるようになっていったのです。


織田信長は近江に進出する事で『楽市楽座』を追認しただけであり、率先的に取り入れていた訳ではないのですよ。


守護不介入の門前町で『楽市楽座』を開いた三河の寺々は、家康の父である松平広忠ひろただが与えた「不入」という治外法権の特権を得た事が合わさって、大量の銭を抱える勢力であり、大名を脅かすほどの力を持っていたのです。


この家康が「不入」という治外法権の特権を犯した事から三河一向一揆へと発展したのです。


特に三河は土豪の力が強く、土豪と深く関わっていた寺々と結託して、家康に逆らったのです。


また、本證寺の空誓は鉄棒をやすやすと振り回せる大力の持ち主であったと伝えられ、他に安楽寺の中島と円光寺の桜井も怪力僧であったと伝えられます。


住職自ら鼓舞する本證寺は厄介な寺だったでしょうね。


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