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信長ちゃんの真実 ~間違って育った信長を私好みに再教育します~  作者: 牛一/冬星明
第3章「元親様も教育します。えっ、どうして世界が攻めてくるの?」
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20.天空城のその後!

どうしてこんな事になってしまったの?

那古野城の一室で『竹姫』の名を永遠と書状に書か続けさせられていた。

信長ちゃんと机を並べているのが幸せだけどさ!

書かないと千代女ちゃんに殺される。


「忍を殺せる人がいますか?」

「精神的に!」

「まるで私達が強制に仕事をさせているみたいに言わないでよ」

「これでもう百何十枚目を書いたのよ」

「それだけ多くの人が関係しているの!」

「なくても大丈夫よ!」

「そんな訳ありません」


事のはじまりは7日前!

京の武衛屋敷に書状が届けられた。

竹田城(安井ノ城)が織田に臣従した為に因幡守護山名 誠通(やまな のぶみち)と敵対することになった。

竹田城(安井ノ城)周辺の城主は山名 祐豊(やまな すけとよ)に付いたが、織田に降伏した祐豊(すけとよ)を頼りなしと見限る国人衆が続出し、但馬国の形成が大きく変わり、わずか4日足らずで劣勢に陥った。


そして、敵になった国人衆が容赦なく襲ってきた。

複雑の入り混じった谷間に多くの国衆が入り混じっていた。

少数で突入されると田畑や村に火を掛けられて全焼し、祐豊(すけとよ)派の村人らは一時的に城に逃げた。

いつもならば、すぐに報復で攻め返す。

ところが京の織田目付けから渡された織田目録には無用な戦を禁じられていた。

側近衆らは『馬鹿な!』と怒り狂った。


「殿、まだ織田が臣従を認めると言っておりません」

「そうです。攻め返しましょう」

「待て! 攻め返すのは良いがそれで臣従が認められないとなると我らは滅ぶしかない」

「認められてから戦を止めればよいではありませんか?」

「丹波衆の力を借りれば、数万の大軍を用意できます」

「それは織田の臣従が認められた後の話だ」


ぐぐぐ、側近らは悔しそうな顔をした。


山名 祐豊(やまな すけとよ)を山名当主にしようと企んでいた但馬国の国人衆らは、この裏切りにと怒っていた。

散々、但馬を襲ってきた連中と手を組んだのだ。

ある意味、当然の報復であった。

代わりに敵であった八上城の波多野氏ら始め、丹波の国人衆からお味方するという書状が多く届いた。

最初は反対していた側近衆らも織田の影響力を認めた。

これは勝てる。

但馬国を平定できる!?

(山名)祐豊(すけとよ)の側近衆が鼻の息を荒くするのはその辺りだ。

そして、何も知らない私が二度目の雲海ツアーにやって来て知らされた。


「えっ、どうして臣従したことになっているの?」

「普通、城を落とせば、そう思われるでしょう」

「そうなの?」


知らなかった。

私は雲海ツアーに利用させて貰うつもりだけだったのに?

千代女ちゃんは(山名)祐豊(すけとよ)が臣従したことを前提に準備を進めていたが、それより敵の但馬国の国人衆らが先に動いた訳だ。

もちろん、こちらから攻める戦闘は禁じた。

しかし、戦力差は大きく、(山名)祐豊(すけとよ)の勝ち目が薄い。

但馬国であっても織田が負けたという拙い。

急いで旧式の鉄砲1,000丁と焙烙玉100個を補充した。

武田軍が総崩れした『内山崩れ』を再現できるかもしれない?


「無理よ!」


千代女ちゃんは否定した。


「武田軍の惨敗は諸国に知れ渡ったもの。皆、警戒しているわ!」

「そうなの?」

「武田軍も内山を支援したのは織田と思っているわ!」

「あの時点で支援はどう考えても無理でしょう? 実際、支援したのは私だけどさ! 流石に織田と結ぶのは無茶よ」

「本気で言っているの?」


千代女ちゃんが怒り出した。

尾張統一戦までは誰も織田が関与しているとは思っていなかった。

しかし、あっと言う間に伊勢・美濃・三河・遠江半国を制した織田は諸国の脅威でしかない。


「越後と相模と同盟を結び、北信濃にも影響力があると知れれば、どう考えても織田が関与したと思われるでしょう」

「だから、あの時点では無理よ?」

「そんな細かい事情が他の諸国に判る訳ないでしょう。自覚しなさい」


最近、千代女ちゃんが怒りぽくなった。


「誰のせいですか?」


この辺りは円山川に合流する川が多く、数珠繋がりで村が多くあり、小競り合いが絶えない。

攻めるもの厄介だけど、守るのも厄介な土地だった。

守るとなると拠点となる場所に堅固な砦がいくつか必要だった。


「ここと、ここと、ここと、後、ここね! 最低6箇所に砦を造れば守れるようになるわ!」

「なるほど!」

「忍、よろしく!」

「私、造らないわよ」

「いつものようにちゃちゃっと造りなさいよ」

「そういう風に頼るのはよくないと思うのよ。これからは砦も自分で造るべきよ」


千代女ちゃんから本気と聞き返してきた。

本気ですよ。

ともかく、これで城に籠って鉄砲で威嚇していれば負けることはない。

でも、今のままでは再建と防衛の両立は難しい。

という訳で、京で土木工事できる人材を400世帯ほど確保し、尾張から500人ほど人を借りて指導と教育を施すことになった。

護衛に傭兵1,000人ほど雇えば、何とかなるだろう。

補完する総兵力は2,000人くらいになる。

この地域ならば、これくらいあれば十分だ!


ごめんなさい!

千代女ちゃんに言われたようにした方が楽だった。

どうしてこうなるのよ。


「ねぇ、代わって!」

「織田に遊ばせている人はいません。右筆を貸して上げているので自分でやって下さい」

「千代女ちゃんの鬼!」


こうして、私は泣きながら書状に名前を書く仕事が増えた。

丹波の城主、領主、国人、村長など沢山の方に協力を求めて、兵を貸すという余計な協力者の丁寧なお断りの手紙を返す。

右筆さんが書いた書状に『竹姫』の名を書いてゆく。


京で集めた人は但馬国まで歩かないといけない。

丹波を通過する。

さらに物資を運ぶ必要も出てくる。

但馬国と京を結ぶ物流の確保に管領・丹波守護細川 晴元(ほそかわ はるもと)陣営に許可を貰い。

丹波の各城主、国人衆に根回しが必要になった。

こんなに手間だと思わなかった。


「忍様、どうして今回は砦を造られなかったのですか?」

「私に頼り過ぎるのはよくないと思うのよ。すぐにいなくなるつもりはないけど、私に頼り過ぎると、私がいなくなった瞬間に織田が崩壊するでしょう」

「織田でも同じことができるノウハウを身に付けるだったですね。なるほど、尾張と同じ理由でしたか!」

「そういうこと!」

「忍様がおられないと大変ですが、その分、仕事ができる者が多くなってきました」

「そうよ! その為に距離を置いているのよ」


私の誤算は続く、頼みに行くのも自分で行けって!

千代女ちゃんの鬼。

二度と近づかないと誓った京に戻り、朝廷と幕府にお願いをすることになる。

帝は喜んで協力してくれた。

御所に顔パスって拙くない?


将軍様は尾張に下向して不在だった。

なぜ、尾張?

敢えて聞くまい。

でも、幕府の事務方が協力して、通行の要請書を発行してくれました。


丹波の城主や国人は協力的であり、必要なら兵も出すと返事が戻って来る始末だ。

それにも『竹姫』の名を書いたご遠慮の返書を出さないといけない。


「千代女ちゃん、もう少し人を回してよ!」

「言っておくけど、尾張はすっごく忙しいのよ。人手は足りないの!」

「そろそろ一年も経つのよ。少しは手が空いて来ているでしょう」

「その理由を聞きたい?」

「言わないでいい。聞きたくない!」


千代女ちゃんは教えたくて仕方ない。

聞けば無視できなくなるので聞かないようにしている。

信長ちゃんも忙しい。

だから、暇も持て余す帰蝶ちゃんと北条ちゃんを連れ出して遊んでいる。

千代女ちゃんは仕事を部下に任せて、お目付役として時々参加する。

書状ができると京の山科邸に転移した。


「竹姫はん、今日は早やありませんか!」

「来たくて来ている訳じゃないわよ。はい、これお願い!」

「任せてや! ばっちり配っておくさかい。それと新しい感謝の書状も届い取るで! あれが昨日の分や!」

「まだ、あるの?」

「竹姫はんは丹波の人気もんやからまだまだ来ますで!」


ほとんどがお断りのお手紙だ。

どうして頼んでもいないのに兵を出すとか言ってくるのよ。

そりゃ、京で兵は募集しているけどさ!

別に但馬国の制圧するつもりはまったくない。

竹田城(安井ノ城)周辺を守るだけだよ。


「慶次、兵の募集はどうなっているの?」


京での段取りは(柳生)宗厳(むねよし)様と慶次様らに任せてある。

宗厳(むねよし)様は食糧や炊き出しなどの手配を担当し、人集めは慶次様が準備している。


「藤八、弥三郎、状況はどうなっている?」

「募集兵1,000人に対して、昨日で5,000人を越えましたなのです」

「同じく、移住者400世帯に対して、1,200世帯が集まって来ております」


昨日の倍以上になっていた。


「忍、どうする? 予定日まで待っていると、確実に一万人を越えるぞ?」

「そうね、今日出発しましょう」


織田様に付いてゆくと、土地が貰えると噂になっていた。

土木作業が終わったら、お帰り下さいなんて言わないけどさ!

家を上げると書いたけど、土地を上げるなんて書いてないよね!

追い駆けて来たらどうするって?

まぁ、いいわ!

但馬国まで追い駆けてきたら受け入れることにしよう。

責任は持つわ!


竹田城(安井ノ城)まで33里(127km)の道を徒歩で移動する。

傭兵は槍を持っているが、鎧は粗末だ。

移住者は浮浪者と見間違うほどのボロを着ており、子供を含めて9,000人余りの人々が移動するのだ。

軍隊の移動というより、難民の大移動だ。

途中で乱暴・狼藉をする不埒者が出るかもしれない。

あるいは関所の門を閉めるかもしれない。

そう言うことがないように手紙を送って段取りを取った。

警護の兵をお願いし、物資を先に送り、炊き出しを村人らにお願いしている。

残った物資は村に献上する。

横領する気が起きないほどの食糧を先に送ってある。

炊き出し村人らはどこでも大歓迎だった。


「他の丹波の道に比べて歩き易いのです?」

「石ころ1つないですね!」

「荷馬車も楽々なのです」

「忍様ですか?」

「そうよ、夜中の間で手を入れておいたのよ」

「なるほどなのです」


歩く道幅を確保して土を固めただけの簡単な作業だ。

道が悪いと荷車が止まって、5日で到着できないかもしれない。

もう終わらせたい。


「忍様、よろしいですか」

「何かしら?」


宗厳(むねよし)様、気になることがあるのか聞いてきた。


「竹田城(安井ノ城)ですが、当初の予定ならば、2,000人程度ですから問題なかったと思いますが、9,000人が泊まる宿舎と食糧の確保はどうされるつもりですか?」

「そう言えば、そうだな! 住む家はあるのか?」

「そうなのです。もうすぐ冬なので大変なのです」

「大丈夫よ!」


一昨晩、千代女ちゃんが同じ指摘をされた。

その夜の内に但馬国に転移した準備した。

竹田城(安井ノ城)からの景観を損なわないように、朝来山で隠れるように南の山の頂上付近を平らに削った。

伊由谷川と多々良川の間に800町 (800ヘクタール)の土地を整地する。

これで耕作面積は一万石を超す。

(正条植を伝えれば、四万石も夢じゃない)

北は朝来山、東は青倉山、南は多々良川が流れており、敵の侵入を防いでくれる。

さらに多々良川の上流の川を堰き止めると盆地の水として利用できし、奥地に黒川を堰き止めて湧水の元も作っておいたので水に困ることはない。

場所としては、竹田城(安井ノ城)と生野銀山の中間点で利用もし易いハズだ。

基本的な家も建て終わっており、すぐに利用できる。

翌朝に完成し、千代女ちゃんに最終チェックを頼んだら溜息をつかれた。

何故だ?


「どうしてこうなるのよ?」

「何か拙い?」

「いいえ、言うか…………呆れただけよ。すぐに村の見取り図を書くから仕上げてくれる」

「うふふふ、千代女ちゃんも観念したか?」

「忍には負けました。そうね、多々良川の対岸にも同じような土地を造ってくれる」

「そんなにいらないでしょう?」

「たぶん、いるようになるわ」


千代女ちゃんがいるというなら造るけどさ!

そう言う訳だから1万人くらいの移住者は余裕なのだ。

慶次様に笑われた。

私は自分のやったことに責任を取っただけなのに?


10月末が近づき、雪がちらほらと振り始めた。

全員に毛皮の外套(がいとう)(コート)を配給し、食べ物も温かい物を中心に配膳する。

野宿は可哀想なので簡易テントと寝袋も渡しておこう。

朝、転移してきて、誰かが凍え死にしていたなんて聞きたくない。

過保護と笑う奴は好きに笑え!

5日後に予定通りに到着した。

山名 祐豊(やまな すけとよ)に引き渡す。


「これは竹姫様、わざわざのお越しを感謝します」

祐豊(すけとよ)、多々良の土地は見てくれたかしら?」

「素晴らしい土地が広がっておりました」

「あの土地を貴方に預けます。村を追われた村人、連れてきた者と分け隔てなく、分け与えなさい」

「畏まりました」

「織田から500人を連れてきております。特にこの10人は織田のやり方をよく知っています。この者達の声は私の声と思い、織田のやり方をよく学びなさい」

「判りました」


引き渡し終了だ。

運営は竹田城(安井ノ城)の山名 祐豊(やまな すけとよ)に一任しよう。

村人が全員、移住者と同じ所に住むのもありだ。

焼かれた村を再建するより楽だろう。


建てた家は隙間風など吹かない、尾張の煉瓦式の新居住宅だ。

大広間に囲炉裏があり、団欒が進み。

寝室には二段ベッドを4つ用意し、すべてに布団を引いてある。

さらに各部屋に暖炉を完備している。

冬の寒さも物ともしない。

一家に一台の風呂も併設してある。


千代女ちゃんの見取り図に合わせて、奥に炭、刀、煉瓦などを作る工場区、中央を農業区、西側を商業区、兼、侍が住む住宅区になっている。

倉庫街の土倉には、一万人分の装備と刀、槍を入れて置き、鉄砲3,000丁を追加しておいた。

守るだけならそれで十分だろう。


土地のキャパシティは5万人くらいかな?


私はそんなに深く考えていない。

この時代だ。

無償で土地と寒さの震えない家が貰えるという意味を解っていなかった。

雪の中で生死を賭けて、人が押し寄せてきた。

但馬国の人口が10万人くらいであり、そんな中に5万人の中都市が生まれる意味を理解していなかった。

しかし、それは来年の雪解けを過ぎた頃の話だ。

(山名)祐豊(すけとよ)は内政だけで身を削って奔走することになる。


昼間は晴れて温かく、夜になると冷え込んだ。


おぉ、いいタイミングだ!

翌朝、信長ちゃんを連れだって、竹田城(安井ノ城)にやってきた。

日が出てくると、雲の上に浮いた城が浮き上がる。


「すばらしい景色です」

「雲の上に浮いているなのです」

「不思議です」

「忍が見せたかったのは、この景色なのね!」

「うっとりだわ!」

「はい!」


みんな、気に入ってくれた。

努力した甲斐があった。

この景色を見たいだけの為に酷い目にあったよ。

やっと完成!

遅くなりました。


次は三島神社だ!

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