表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
信長ちゃんの真実 ~間違って育った信長を私好みに再教育します~  作者: 牛一/冬星明
第3章「元親様も教育します。えっ、どうして世界が攻めてくるの?」
146/156

11.帰蝶ちゃんは蝮の娘でしたの事。

私は頼まれた用事を終わられると前回の終着点の若狭に戻ってきた。


京の荒れた廃寺も復興されて立派な寺に再建された。


名前は『本圀寺(ほんこくじ)』だったけ?


天文法華の乱〔天文5年(1536年)〕で焼失し、堺の成就寺に避難したらしい。

後奈良天皇は法華宗帰洛の綸旨で、天文11年(1542年)に六条堀川の旧地に再建されたらしいけど、山科の旧本圀寺は放置されて荒れていた。


去年は織田の物資が運ばれる謎の寺と大活躍し、再建が始まってほぼ完成した。


寺の山の奥には、謎の倉所が設置されており、倉から荷物を運び出してもいつの間にか、荷物が届けられているという名物『打ち出の小槌倉』がある。


尾張と堺を結ぶ、南蛮船海路もできたので不要になった訳だけど、言継のおっさんの要望で、各寺に運ばれる難民・流民の為に炊き出し米などをここから運ぶことになったのだ。


ここから運ぶを御利益があるとか?


ないよ!


まぁ、私がいなくなっても忍者達がこっそり運び込むので問題ない。


織田の公式文書では、私の護衛の忍者200人が運んでいることになっている。


私がお手伝いしているのだ。


八瀬ちゃんらの職名は『隠れ荷駄隊』だ。


もう少しカッコいい名前はないの?


『秘密戦隊 ニレンジャー』とか。


えっ、いやだって。


じゃ、じゃ、『ニカァー電撃隊』、『バトルニダァー』、『人足戦隊ニダマン』、『月の巫女守護ルナー』とか、全部却下された。


何故か、忍者のみなさんも不評だった。


おかしい?


こっちの方がカッコいいのに!


 ◇◇◇


『私は帰ってきた!』

「忍様の帰ってきたなのです」

「叫ばないといけないことか?」

「叫びたくならない?」

「ならない」

「……………」

「ならないのですが、今度は一緒に叫ぶのです」

「僕も叫びますです」

「すみません」

「ごめんなさい」

「我らはこれにて」

「?????????????????????????????????」


帰ってきたと叫ぶ派は一人もいません。

まったく、これだけ付き合っているのに慶次様はまったく理解してくれません。

宗厳様も興味なし。

好意的に受け取ってくれたのが、我が心の憩いの二人です。

蒼二点、藤八、弥三郎だ。

特別ゲストの護衛で付いてきた。


「慶次と宗厳は再教育しましょう」

「何をするのですか?」

「ふふふ、『海が好き』とか、『太陽のばかやろう』と叫んでいるドラマを流すのよ」

「時代劇はないのですかぁ?」

「しばらく、お休みします」

「しおしおなのです」

「残念、無念です」


おっと、私の味方にダメージを与えてしまった。


「にんじゃもの…………なんでもないです」


ドラマに忍者モノを流して欲しいそうなのは声を上げて、すぐに恥ずかしそうにしたのは、飯母呂(いぼろ)忍者の八瀬ちゃんだ。


もう少し我儘を言っても全然OKなんだよ!


特別ゲストの世話役に連れてきたのは、私付の下女になっている智ちゃんだよ。

藤吉郎のお姉ちゃんで人妻な13歳の女の子だ。


甲賀・伊賀・飯母呂の忍者200人は各々の姿をして散っていった。


これから巡る若狭の事前調査に赴いたのだ。


さっきからキョロキョロと挙動不審な行動を取っているのが、特別ゲストの帰蝶ちゃんだ。


ぱちぱちぱち!


「忍、さっきから一人で何やっているんだ?」

「人物紹介よ」

「意味あるのか?」

「慶次様、忍様のひとりごとは今に始まったことではないのです」

「そうだな。悪かった」


謝れても全然に嬉しくない。


「ここはどこです? なにが起こったのですか?」

「まぁ、落ち着いて」


朝起きて旅の用意をして昼前に玄関に来るとみんなが集まっていた。

私が帰ってきた瞬間に景色が変わった。

玄関にいたハズが鬱蒼とした森の中に変わったのだ。


そりゃ、慌てるよ。


慌てふためく帰蝶ちゃんを落ち着かせ、一瞬で移動できる転移を説明した。


「なるほど、すばらしい力です。若狭武田の本丸に突入して首を狩るのですね」

「やらないって!」

「寝所を入って、ずぶりと!」

「暗殺なんてやらないわよ」

「では、正面突破で全員を撲殺にするのですね」


この()、私の事をどう思っているのよ?


「どうして、そんな危ないことをしなきゃいけないのよ。タダの観光よ。綺麗な景色を見て、おいしいモノを食べるだけよ」

「お姉様、お隠しならなくても大丈夫です。私は勉強しております。諸国漫遊の悪人退治に協力させて貰います。これでも腕に自信はあるのです」


ねぇ、この()は何を言っているの?


 ◇◇◇


雪の山道、標高364メートルの深坂峠(ふかさかとうげ)を超えると、美しい美浜の海岸が見えてきた。


「お姉様、海ですわ!」

「見えてきたね。目的地の美浜よ」

「それでどんな悪人をやっつけるのですかぁ?」

「まだ言っているの?」


何度、説明しても納得して貰えない。


 ◇◇◇


帰蝶ちゃんがどうして付いてきたのかを説明しよう。


昨日、尾張出島の学校教師の協力に疲れた私は若狭に戻ることを決めた。


御飯を食べた後、お風呂に入るまでは憩いのタイムだ。


みんなが楽しみにしている上映会を開催している。


信長ちゃんの旅行記を撮ったダイジェストムービーの上映会を大々的にやってから、食後の上映会が恒例になっている。


智ちゃんが怪獣に捉まって、信長ちゃんが助ける。


『グァム島の英雄記』


みんなに大受けだった。


那古野に勤める方々衆はホームスクリーンプロジェクター機能で映し出される映像のことを知っている。


絶対に口外してならない織田の最重要機密の1つだ。


食事の後の憩いのタイム。


最近はちゃんばらの放映が主だった。


その日の護衛と女中と賄い番の料理人が一緒に観戦できる栄誉が与えられる。


誰がなるかは、くじを引いて決めているらしい。


当たった子を大喜び、外れた子は次回の挑戦だ。


全員が順番になっているけど、その次回がいつになるか判らないから今日の勝利に意味があると力強く勝ち誇っている。


私が帰ってくると、賄い方がいつもざわついた。


勘のいい帰蝶ちゃんは私が帰ってきていると予想を付いた訳だ。


浮かれる女中の後を付け、あとはすべての客間を順に回った。


「お待ち下しい。お方様」

「急いでおる。退け!」

「お方様」

「どけと言っておろう」


バババーンと障子を派手に開けて飛び込んできたのだ。


してやったり!


帰蝶ちゃんが信長ちゃんと私を見つけて勝ち誇った顔をした。


しかし、次の瞬間!


クライマックのドラマの音楽が掛かると目を奪われた。


えええ、えっ~~~~~~~~~~~~~~~!


ホームドラマ『ちゃんばら時代劇』を放映している最中であった。


ホームスクリーンプロジェクターなんて500年後の技術だぞ!


驚いて当然だ!


絵の中で人が動いているのだ。


しゃべっているのだ。


パニックなんていう生やさしいのじゃない。


『デカルチャ!』


流石、そうは叫んでくれなかった。


残念!


お茶を飲んで休憩タイム、落ち着いた所で話が戻った。


 ◇◇◇


「三番目の側室と言えど、無暗に織田の秘密を探りに来るのは首を刎ねられても文句は言えないわよ」

「千代女様、申し訳ございません。私らもお止したのですが、力足らず、このような事態となりました。しかし、どうかお許し下さい」

「お願いします」

「後生でございます」


帰蝶ちゃん付きの女中が頭を下げて千代女ちゃんに懇願する。


三人の下女は言わば、スパイだ。


美濃斉藤家に織田の情報を伝える為に帰蝶ちゃんに付いて来ている。


帰蝶ちゃんより危険な状態で首が先に飛ぶのはこの子らからだ。


「よろしいではないですか! 先ほどの説明で花火と同じ娯楽だと言ったではありませんか」

「娯楽であっても機密は機密よ」

「信長様、この帰蝶をお嫌いでしょうか。一緒に楽しむことをお許し頂けないのでしょうか。帰蝶は悲しゅうございます」

「千代、許してやれんか」

「はい、はい、最初から許すつもりですよ。女狐さん、笑いが見ていますよ」


あぁ~~~確かに袖で口元を隠しているけど笑っている。


信長ちゃんの人の良さに付け込んでいる。


「笑っているのではありません。喜んでいるのでございます」


帰蝶ちゃんは否定せずに体を信長ちゃんに預けた。


信長ちゃんも慣れたように背中を叩いてやっている。


帰蝶ちゃんと千代女ちゃんの間で見えない火花が飛んでいる。


わぁ、怖い!


「忍、さっさと正室になりなさいよ」


千代女ちゃんがトンでもないことを言う。


「ど、ど、どうして! そんな話になるのよ」


信長ちゃんは大好きだけど夫にするのは別の話だ。


第一、大切な信長ちゃんを自分で穢すなんてできる訳もない。


愛でて楽しむのがショタの鉄則よ。


「信長様も忍を妻にしましょうよ」

「千代、それ以上言うな!」

「なら責めて、嫉妬に狂う。その馬鹿に説明して上げて」


そういうことか!


帰蝶ちゃん、私に嫉妬して千代女ちゃんに当たっていたんだ。


うん、判るわ。


私も小学校の頃は元気な女の子していたのよ。


女の子も男の子も分け隔てなく、楽しく遊んでいた。


小学5年生になった頃から女の子と男の子のグループが分かれるようになったけど、私は変わらなかった。


ある日、突然に女の子のグループからつまはじきにされた。


所謂、村八分の虐めだ。


教科書を破られたり、男の媚びを売る女とか落書きされたり、靴に画鋲なんて定番だった。


原因は隣の男子だ。


顔が整っており、身長が高く、柔道の好きのスポーツマンだった。


元々、人気が高かったが県大会を優勝したことで火が付いた。


大フィーバーだ。


私は興味なかったから気にも掛けない。


でも、私の知らない所でその子が私を好きだと言ったらしい。


それが虐めのキッカケだ。


たぶん、私が一人でいる事が多くなったからだと思う。


その子が告白してきた。


興味ないから丁寧にお断りしたよ。


これで一軒落着と思うとそうでない。


理想の王子様を悲しませた憎い女として、虐めが激化したんだよ。


どないせぇっちゅうねん。


私が大人と付き合っているという合成写真が出回って、知らない無記名のIDで待ち合わせのメールも送られて来て、母親を呼び出される大事になった。


つまり、私が貧困女子にされたのよ。


馬鹿らしい。


私を貶めても、その子に降り向いて貰える訳じゃないのに!


何故か、学校の先生らに怒られた。


「「「信じていたのに!」」」


最後まで信じろよ。


母さん、私を信じて警察に訴えて学校の責任を追及した。


写真は合成とすぐにバレた。


メールもIDから本人が特定されて、子供のイタズラだった。


女の子らのしたことが明るみに出た。


ホント、馬鹿だ!


でも、幼くても女の子だ。


嫉妬に狂うと何をするか判らない。


帰蝶ちゃん、馬鹿だね!


私を責めると信長ちゃんに嫌われると思って、千代女ちゃんに当たっていたみたい。


千代女ちゃんを蹴落として、自分の方に向いて貰える訳じゃないにさ。


「忍、全然に判ってないでしょう?」

「判っているよ。私だって女だからね!」

「ほらぁ、やっぱり判っていない」


えっ、何か違っていた?


「あんたって、信長様に甘々でしょう」

「そりゃ、恩人だからね」

「何が恩人か知らないけど、信長様はあんたの事をべた褒めなのよ」

「当然であろう」

「こんな感じ!」

「???」


信長ちゃんが私を特別に扱っているのがすぐに判る。


うん、私もそれに甘えている。


私が自由にできるのも信長ちゃんが私を守っていてくれるからだ。


私に居場所をくれた。


少しくらいは恩を返さないとね!


「この馬鹿、私を排除すれば、信長様を操って、あんたを好き放題にできると勘違いしているのよ。あんたがそんな大人しい玉じゃないって、どうして判らないのかしら? 私があんたを操っている。はぁ、無理でしょう」


えっ、帰蝶ちゃん、私を裏から操るつもりだった?


やっぱり蝮の娘だわ。


あっ、信長ちゃんが怒っている。


「帰蝶よ。よく聞け! 忍様は私にとって尊いお方である。忍様を害する者は誰であろうと容赦はせぬ。さらに、忍様を我が物にしようなどとは微塵にも思っておらん。努々、忘れるでない」


帰蝶ちゃんが目を丸くした。


そして、怒っている信長ちゃんの目から視線を逸らしている。


近所の子供と同じだ。


と言う訳でって、何がと言う訳なんだよ!


千代女ちゃんの命令で、帰蝶ちゃんをしばらく預かることになった。


うん、千代女ちゃんが私を操っていると思われても仕方ないよね。


自業自得だよね。


「妹キャラが欲しいって言っていたでしょう」


千代女ちゃん、怖い!


怒っている。怒っている。私の心の中を覗かないでよ。


帰蝶ちゃんも罰として、私の事を『お姉様』と呼ぶことになった。


好き勝手に決めるな!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ