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信長ちゃんの真実 ~間違って育った信長を私好みに再教育します~  作者: 牛一/冬星明
第3章「元親様も教育します。えっ、どうして世界が攻めてくるの?」
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3.『野良田の戦い』の見学ツアーの事。

多賀大社にお参り!

特に意味はない。

江戸時代に焼失する前に本殿を見ておきたかっただけだ。


『お伊勢参らばお多賀へ参れ お伊勢お多賀の子でござる』

『お伊勢七度熊野へ三度 お多賀さまへは月参り』


なんて言われているように、伊邪那岐命(イザナギ)伊邪那美命(イザナミ)の2柱を祀っている。


おそらく、スサノオ命が最後に座った都がこの辺だったのだろう。


でも、室町時代は神仏習合思想が浸透し、神宮寺(じんぐうじ)を創建して不動身王を祀っている。


「えっと、どなた?」

「某、久徳城、久徳実時と申します。願わくは、我が屋敷に御逗留して頂きたく参上いたしました」


多賀を治める領主様がお迎えに来てしまった。

浅井さんから貰った通行書はありがたかったが、関所を通ると先触れが出て、こういうのがお出迎えに来てしまう。


天野川流域の岩脇(いおぎ)氏・井戸村氏・嶋氏などが個別にあいさつに来た。

お招き頂いたが、きっちりお断りさせて貰った。

六角領に入ると、関所を守る太尾山城主の佐治太郎左衛門尉があいさつに来た。

続いて、坂田郡沼波館主で沼波三左衛門俊盛、朝妻城主の新庄蔵人直昌、菖蒲嶽城主の今井権六定清、定清の老臣で鎌刃城代の島秀安を伴っていた。また、石寺の住職を伴って、わざわざ茂賀山城主の小林宗正もあいさつに駆けつけた。


あいさつに来てくれるのはいいけど、うんざりだよ。


偶然、久徳実時は夕刻になったから泊めて貰ったけどね!


食事は琵琶湖の幸を振る舞ってくれた。


「竹姫様にお聞きしたい」

「答えられる範囲なら答えて上げるよ」

「我が久徳家は六角家と浅井家に挟まれております。同じく、隣接する高宮城の高宮頼勝も我が家と同じ宿命を負っておりますが、近年(浅井)久政と密になっているような気がするのです。果たして、(浅井)久政は本気で(六角)定頼様に臣従しておるのでしょうか?」


北近江の六角嫌いは筋金入りであった。


北近江守護京極を追い出した土豪らは六角の支配を拒んでいた。


まぁ、元々は反六角勢力です。


初代の浅井亮政が京極を追い出して得た独立です。

今更、六角の傘下に入りたくないというのが心情なのでしょう。


(浅井)亮政は京極の支援で仕置きに来た朝倉宗滴を説得し、六角と朝倉の干渉帯として生き残った。


舌先三寸で朝倉を追い返した手腕は凄いね!


『朝倉と浅井が同盟関係であった』


あれは嘘だ。


反信長連合として同盟を結んだのは事実だが、それ以前は虎と猫くらいの勢力が違う。


公文書で同盟を結べば、勢力差から臣従と明記しなければならなくなる。


対等な同盟なら朝倉宗滴が納得する訳もない。


あの『金ヶ崎の退き口の合戦』で、浅井は朝倉と同盟関係だから寝返ったというのは、完全な方便でしかない。


信長が事前に相談しなかったのが悪いとか言うのは無理だよ。


そもそも同盟なんてないんだからさ!


さて、初代様が亡くなって、二代目の浅井久政は家督争いに負けそうなので、六角定頼を頼って生き延びた。しかも嫡男の猿夜叉丸(後の長政)を人質に出すという醜態を晒した。


(浅井)久政に従っているが、北近江の国人・土豪は六角の影に怯えて従っているに過ぎないのです。


もちろん、(浅井)久政も何もしない訳ではなく、着実に自分を支持する者を増やしています。逆に北近江反六角も黙って潰されるのを待っていない。

密かに坂田郡の国人・土豪に内応するように働きかけていた。


久徳実時の質問は、(浅井)久政が本気で臣従しているのかという一点であった。


「そうだね! どこまで(六角)定頼を信頼しているのかまで私に判るハズもない。ただ、(浅井)久政は馬鹿ではない。(六角)定頼が善政をしている限りは裏切らないと思うよ。問題はその嫡男だね!」


嫡男の義賢(よしかた)はプライドが高かったのか、三好を毛嫌いする傾向が強かった。

将軍義輝を担いで三好と戦うが敗戦を重ね、和睦して義輝を京都に戻して面目を保ったが、すでに没落が始まっていた。


永禄3年(1560年)に起きた『野良田の戦い』に負けたことで没落が明らかとなる。


六角2万5000人の大軍が1万の浅井軍に打ち破られたのだ。


そりゃ、浅井長政の名声が上がり、(六角)義賢が地に落ちた訳だ。


それでもお家騒動を起こさなければ、(六角)義賢は無視できない存在として君臨しただろう。


そして、(足利)義昭の上洛に際して、信長ちゃんと三好の実力差を見誤ったことで滅ぶことになる。


うん、(足利)義昭の上洛に参加しないが上洛の邪魔もしない中立を保てば、信長ちゃんの天下はなかっただろうね。


(六角)義賢は名門にしては肝が小さすぎたと私が思う。


但し、史実と違って、今将軍義輝は(六角)定頼と三好(長慶)を取り込んでいる。


(六角)定頼が死亡すると思われる天文21年には東日本の統一は終わっているから、(六角)義賢の出番は回ってこない。


さて、どう答えたものか?


「(六角)義賢様に難ありと?」

「今の段階ではね! もし、(六角)定頼に何かあれば、(六角)義賢では浅井を抑えられないだろうね。強圧な事を言って暴発を招くことになる。でも、それを今から考えるのは愚策だよ。(六角)定頼が生きている間はそういう問題は起こらない。起こったとしても巧く押さえてくれるんじゃない」

「なるほど、得心いたしました。竹姫が見初めた織田様が如何に素晴らしいお方か、知る思いでございます。争うようなことがあれば、この久徳家、織田に付かせて頂くことのみ、お伝え下さいませ」

「判った。でも、たぶん、問題ないと思うよ」


(久徳)実時はもう一度だけ小さく頭を下げた。


 ◇◇◇


石寺だ!


私は約束通り、茂賀山城主の小林宗正の元にやってきた。


石寺の裏は荒神山(標高284m)という小山があり、『野良田の戦い』になった戦場が一望できるのだ。


私達は(小林)宗正の案内で山を登った。


大軍を動かすのに都合のいい大きな平野が広がり、その中央部に犬上川が流れている。


六角の大軍2万5000人が自由に動けるスペースが要し、浅井は犬上川を渡河して攻めなければならない不利を背負うことになる。


『野良田の戦い』


浅井賢政(長政)がクーデターを起こし、(浅井)久政を押し込めた。


それに怒った(六角)義賢が、寝返った高野瀬備前守秀頼の肥田城を攻めたのが『野良田の戦い』の始まりである。


肥田城は犬上川の南側にあり、宇曽川と愛知川に挟まれた場所にある城であり、二つの川が天然の堀となっており、攻めるのに厄介な城です。


(六角)義賢は土塁を積んで川を堰き止めて水責めを行った。


この水責めを愚かと罵る者も多いだろう。


どう考えても賢政(長政)を誘い出す罠以外にない。


彦根の東には、石田三成の居城を置いた佐和山が横たわり、琵琶湖と山で狭い街道を作っている。


ここで待ち構えられると、大軍の有利さを失ってしまうのだ。


もし、賢政(長政)が誘いに乗らなければ、味方を見殺しにした臆病者として支持を失うことになる。


賢政(長政)は救援に行かざるを得なかった。


(六角)義賢も馬鹿ではなかったのだ。

でも、考えが短慮であり、傲慢過ぎた。

また、配慮が足りなく、足元が疎かだった。


名家の坊ちゃんにありがちな自惚れという奴だ。


当主が油断していたのだから、六角軍も油断していた。


大軍相手に本気で掛かってくると考えず、高野瀬備前守を救援に来たが力及ばす、引き上げたという形だけの戦に終わると思っていたのだろう。


緒戦は概ね、予想通りの戦いが続き、先鋒に蒲生定秀と永原重興が有利に戦いを進めていたが、突如の賢政(長政)の一騎掛けで戦況ががらりと変わった。


先鋒を隙間から中央を攻めると、第二陣の楢崎壱岐守と田中治部大輔らを蹴散らせて本陣へと迫った訳だ。


第二陣以下は物見遊山で戦う気構えがなかった。


突然、攻めてきた敵に右往左往して、軍が乱れて組織的な反撃ができずに引くことになった。


大崩れを起こした六角軍は大将の(六角)義賢が引いたことで戦が終わった。


この戦の死者は『江濃記』に六角軍は920人、浅井軍は400人と残されている。


大軍で戦った割には少ない死者である。


簡単に引いたから死者の数も少なかったんだね。


信長ちゃんはこの賢政(長政)の勇姿を自分と重ねて、お市ちゃんを嫁がせることに決めたのかもしれない。


さて、この戦場は田んぼというより沼地と荒地が多い気がする。


大雨の度に3本の川が氾濫するので開発も間々ならないのだろう。


灌漑すれば、豊かな田畑になるのにもったいないことだ。


まぁ、こうして私達の『野良田の戦い』の見学ツアーを終えたのだ。


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