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信長ちゃんの真実 ~間違って育った信長を私好みに再教育します~  作者: 牛一/冬星明
第2章.尾張統一、世界に羽ばたく信長(仮)
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78.変わりゆく尾張と赤鬼の旅立ちの事(2)

あっという間に12月だ。


出て行くと宣言したのはいいけど、雑務処理に追われて中々旅立てないでいた。


一番に大きなイベントは帰蝶の輿入れです。


斉藤家の輿入れが決まったと聞いて、北条が慌てて日程を合わせてきたんだよ。


ここで後れをとる訳にはいかないという北条の意地です。


こうなると相模守護である北条 氏康(ほうじょう うじやす)です。


養女といえ、叔父の娘を貰い受けた。


守護代風情の風下に付く訳にいきません。


北条家は守護なんですね!


北条家は天文元年に北条氏綱が従五位下左京大夫に任官されるとともに、正式に相模守護職となっているのよ。


北条が本気で腰を上げたと見るや、六角 定頼(ろっかく さだより)が千代女ちゃんを養女に向かい入れて、信長ちゃんの側室に入れると言い出しました。


使者は望月出雲守です。

(お忍びできた定頼が信秀に申し出ていたから、形式だけどね)


信長ちゃんの家臣を勝手に養女にするのが無礼ですから、まず嫡男の望月与右衛門を尾張に入れて、千代女ちゃんと役目を引き継ぎます。


ここで望月島が甲賀島(こうかとう)と名を改めて、与右衛門に引き渡されたのです。


みんな、望月島っていい続けたけどね!


実家に帰って千代女ちゃんは、六角家の養女となって織田に嫁ぐことになった。


大金星が飛び込んできた。


もちろん、北条に負ける訳にいかない。


半分自腹で結納品の大行列を伴って尾張入りを果たしました。


っていうか、物品に輸送に手伝わされてました。


千代女ちゃん、人使いが荒いよ。


そうなると(斎藤)利政もただ黙っている訳にいきません。


守護の養女二人が輿入れするとなると、帰蝶は側室ではなく妾と見られかねません。


それを防ぐ為に、土岐 頼芸(とき よりあき)の養女として嫁がせたいと申し出ると、頼芸は大喜びです。


養女といえ、自分の娘が信長ちゃんに嫁ぐのですから義理の父として堂々と上座に付ける訳ですね。


断る理由はありません。


かくして、信長ちゃんは同じ日に守護の娘3人の側室を娶ることになったのです。


順位は六角、北条、土岐です。


六角が正室に拘らなかったのであっさりと落ち着きました。


そういえば、尼子から使者が来て、私も同日の結婚しないのかと聞いてきたね?


私は「しない」と答えると肩を落として帰っていった。


尼子 晴久(あまご はるひさ)、それを機会に何かするつもりだったのかな?


狙いは毛利 元就(もうり もとなり)当たりか!


元就は安芸国で勢力を伸ばしている。


大内の被官として頭角を現してきている時期だ。


しかし、元々は祖父の尼子 経久(あまご つねひさ)の家臣である。


でも、私が嫁ぐのと何か関係があるかな?


「あいかわらず、自分のことは疎いわね」

「どういうこと?」


千代女ちゃんに呆れられた。


どうして、六角、北条、土岐が養女を送りたがるかを考えなさいと言われてしまった。

そりゃ、織田と好を通じておきたいからだ。


「あんたが信長様の正室になれば、晴久は信長様の義理の父になる訳よ」

「そういう設定だったわね」

「織田の水軍を派遣して欲しいと頼める訳よ」


おぉ、そういうことか!


天文13年(1542年)に元就は三男徳寿丸(後の小早川隆景)を竹原小早川氏の養子に出した。


竹原小早川氏の持つ水軍を手にいれる為だ。


まぁ、小早川氏を掌握するまで右往左往するんだけど、結局、大内氏の手を借りることになる。


それはともかく、瀬戸内から下関海峡まで海域が大内氏の生命である。


そして、織田の船団は単独で制圧できる戦力を有している。


安芸国も山側と海側から攻められたら一溜りもない。


利口な元就ならそれを理解できるハズだ。


「違う!」

「何が違うのよ」

「忍は毛利が後の覇者になると知っているから警戒しているけど、尼子の敵は大内よ。そりゃ、『吉田郡山城の戦い』の記憶も新しいから警戒はしているでしょうけど、家臣か、同盟者として見ていないわ」

「毛利は大内の一部でしかないのか!」

「そうよ」


失念していたよ。

伯耆国(ほうきのくに)但馬国(たじまのくに)備後国(びんごのくに)の山名氏、周防国(すおうのくに)長門国(ながとのくに)石見国(いわみのくに)豊前国(ぶぜんのくに)筑前国(ちくぜんのくに)の大内氏の方が重要なんだね!


安芸国(あきのくに)の毛利はその一部でしかない。


特に備後国(びんごのくに)に手を伸ばした尼子にすれば、瀬戸内の情勢を変えたい。


織田の船団で脅せば、瀬戸内の海賊を一手に味方にできると考えた訳か!


「でも、信長ちゃんがそんな約束をするかな?」

「しないでしょうし、要求もしてこないでしょう」

「でしょう!」

「でも、月山富田城から出航し、瀬戸内海経由で尾張を目指し、所々で祝砲を撃って欲しい程度なら聞くかもね。まぁ、祝砲なしでも通過するだけでビビってくれるかもしれない」

「瀬戸内海の海賊が尼子に付けば、戦も終わるって訳ね」

「六角より派手な行列にしたいと言い易いでしょう」


そういうことか!

六角より派手となれば船団を組むしかない。

これなら信長ちゃんに頼み易い。


色々と考えてくれる。


 ◇◇◇


「じゃぁ、ちょっと行ってくる」

「忍様、もうすぐ正月です。年を越してからでもよろしいのでは」

「年を越すと動き難くなりそうじゃない」

「ですが、私はまだ学ぶことが多く」

「3年なんてすぐよ」

「忍様」


熱田神社で婚儀の儀式を終えると色々な式典が待っており、中々に出発できなかった。


それに新婚さんの邪魔はしなくないよ。


信長ちゃんと別れて船に乗ると、見知った二人が先に乗っていた。


「清州の大将と大垣の大将がどうしてここにいるのかな?」

「辞めてきた」

「同じく」


清州城主の孫(信光)さんと大垣城主の信辰さんが困っているだろう。


「倉街の連中ならともかく、俺が大将なんて柄じゃないだろう。副将のおっさんに押し付けてきた」


副将って、滝川 一益(たきがわ かずます)だったわよね。


「鉄砲部隊はどうするのよ」

「掛け持ちでがんばってくれるだろ」

「こちらは信辰様自らが代理になってくれるそうです」

「それでいいの?」

「どうせ、しばらくは攻めてくる所はないので、のんびりと訓練を楽しむと言っております」


信辰さん、いい人だね!


でもいいの?


伊勢で何かあれば、信辰さんの軍が動くことになっているのよ。


伊勢と言えば、長野家が内戦を制して織田に臣従した。


家督を継いだ北畠 具教(きたばたけ とものり)が藤八との再戦に乗り込んできた。


藤八はやる気だったけど私が止めた。


船上で互角でも地上では、卜伝から奥義である一の太刀を伝授されたといわれるような剣豪と互角で戦えるとは思えない。


森 可成(もり よしなり)がいたから相手もさせたら、可成が僅差で負けた。


藤八の再戦はなしだ。


ちょうど訪ねてきた矢沢頼綱(やざわ よりつな)と二人掛かり稽古をしてやったんだ。


具教の刀と頼綱の槍を反射転移で2・3度防いだ後に、3mを超す大阪名物『はりせんチョップ』で瞬殺して片付けた。


具教は笑いながら臣従を申し出てきた。


あっさりしたもんだ。


頼綱は利家とちょっと似ているのか、10回くらい挑戦して諦めてくれた。


あまりちょこまかと避けるので思わず、城外ホームランを打ってしまった時はちょっと焦った。


あれだけ超加速で飛ばされて無事なことを先に不思議に思えってのぉ!


具教は一発で気づいたのは大したものだ。


頼綱もまったく気づいていない訳じゃないけど、どこかに隙があるか確かめずにいられないタイプにようだ。


こうして那古野に新しい住人が増えた訳だ。


北畠の当主でしょう。


城に帰れよ!


城下に屋敷を貰って、そこで政務を行っている。


まぁ、隠居した前当主の(北畠)晴具(きたばたけ はるとも)がいるから問題ないようだ。


伊勢はまず街道の織田普請をはじめたばかりである。


街道が終われば、治水、農地改革、主城の建築と家臣の屋敷を建て、次に廃城へと繋がってゆく。


伊勢の段取りが今後の織田の手本となってゆく。


トライ&エラーだ。


伊勢の経験が続き生きてくると思う。


 ◇◇◇


津島行の船が出ると、信長ちゃんは土手の上を走って追い駆けてくる。


『忍様』


信長ちゃんに胸を打たれて、船を止めたくなったが我慢した。


土手の上に上がっているのが信長ちゃんだけではない。


町中の人が私も見送りに来てくれている。


人ごみに隔てられて、信長ちゃんがドンドンと小さくなっていった。


「しかし、意外だったな! 千代も付いてくると思っていたんだが」

「千代女ちゃんは忙しいのよ。それに新婚さんよ」

「そういやそうだったな」


私が作ってあげた特製大型ベッドで4人一緒に寝ている。


まだ、おままごとね!


信長ちゃんが泣いてくれていた。


それがとても嬉しかった。


 ◇◇◇


「こらぁ、殿がこれくらいで泣くじゃありません」

「すまん」


千代女ちゃんに叱られて信長ちゃんは城に戻ると政務を行った。

私がいなくてもちゃんとやれる。

そんな気概を持って仕事に打ち込んだ。


私がいなくてもできると証明するために!


そして、部屋に戻ってくると私達が食事をしていた。


「信長ちゃん、遅かったね!」

「忍様、どうして?」

「食事に帰ってきただけよ」

「出て行かれたのでは?」

「ちゃんと今日は大垣までいったのよ。明日には北近江に入るわ」

「そう意味では?」

「ここ以上に美味しいものが食べられないよ」

「どうせ、そんなことだと思ったわ」

「千代、どういうことだ?」

「2・3日もすれば、戻ってくると思っていただけよ」

「そうか」

「忍様がいるのです」

「どうしてですか?」

「藤八、弥三郎、私がここにいるのは内緒よ。私は那古野にいないことになっているんだから」

「はいなのです」

「もちろんです」

「さぁ、ご飯を食べなさい。ご飯が済んだらみんなで入浴よ」


私はこのパラダイスを手放すつもりなどない。

ごろごろさせてくれないから出ていったなんて言わないでよ。


私の目的は観光なの!


初心に戻って、観光に行くだけなのよ。


「日帰り観光ね!」

「なんか文句ある」

「いいえ、こちらが暇になったら連れて行って下さい。そちらの方がおもしろそうだし」

「千代女ちゃん、素直じゃないわ。このぉ、ツンデレ」

「誰がツンデレですか!」

「なら、僕もいくのです」

「俺もです」

「私は…………駄目ですね」

「信長ちゃんは大歓迎よ。長門君に許可を貰って行きましょう」

「はい」


明日は北近江だ。


第2章『尾張統一、世界に羽ばたく信長(仮)』(完)




ここまで読んで頂いてありがとうございます。


 ◇◇◇


天皇陛下、即位礼!

おめでとうございます。


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