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信長ちゃんの真実 ~間違って育った信長を私好みに再教育します~  作者: 牛一/冬星明
第2章.尾張統一、世界に羽ばたく信長(仮)
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73. 日出ずる処の天子、書を日没する処の天子に致す。恙無(つつがな)きやの事

「いけません」


信長ちゃんに怒られた!


「天子を名乗るなど、恐れ多いことでございます」


我が国で天子を名乗れるのは天皇のみだ。

真面目な信長ちゃんは私の不注意な発言を叱った。


私が再教育されてどうするのよ。


「国王は名乗って貰うわよ。それをしないと舐められるからね」

「それも守護様を差し置いて名乗るのはどうかと?」

「信長様、尾張の国を治める斯波 義統(しば よしむね)様の家臣として国王を名乗るのは問題が多いと思われます」

「長門、その通りだ」

「ちょっと!」

「最後までお聞き下さい」


長門君が私を制止した。

何か考えがあるなら聞いてやろう。


信秀も孫(信光)さんも特に言うことがないのか、世界の大国相手の話なので要領が得ないのか、口を挟もうとしない。


藤吉郎らははじめから聞いているだけだ!


今日、千代女ちゃんはいない。


末森家老方々から奉公衆の頭人(とうにん)を賜って、牛屋(大垣)の後始末が終わると、今度は普請方らを連れまして三河と遠江を走り回っている。


三河と遠江を一手に任された訳だ。


よく、古参の家臣団が文句いわないと思う人もいるだろうけど、織田の家臣団は美濃や伊勢や三河・遠江などにかまっていられない状況に追いつめられていた。


簡単に言ってしまうと、助命嘆願(じょめいたんがん)で忙しかった。


以前に言ったと思うけど、今回の内戦で織田の家臣の三割の武将が『織田仮名目録』(信勝新法)に違反していた。


婦女暴行に加担した者は身分に関わらず、磔だ。


また、それを許した武将は領地没収の上に家督を譲らせる。


摘発者が三割もいれば、ほとんど家臣が一族や親戚、あるいは、与力などの主従関係を持っている中に咎人が出てくる。


「どうか、某に免じてお許し下さい」

「罪状をもう一度吟味し直そう」

「ありがたき幸せ」


こんな感じの助命嘆願がずっと続いている訳なのよ。


領地没収は武士にとって死活問題だからね!


という訳で、孫(信光)さんらも大忙しであり、他国のことなんか構っている暇もないのよ。


駄目な奴は排除し、新しい当主を吟味して城代に据えて、隠居した旧当主に新領地(蝦夷地・樺太)を与える。


最初から与えてはありがたみがないので、願い出た結果、温情を与えるという流れで織田の組織改革を断行している真っ最中なのだ。


これで尾張の三分の2は信秀の直轄となり、それを守護の斯波 義統(しば よしむね)に返還する。


そうなると信秀以外の領主が返還しない訳もいかない。


こうして、尾張の領地は義統の元に返され、それを宰相となった信長ちゃんは統括する。


信長ちゃんを中心とした中央集権国家が完成する。


但し、信秀は隠居して、義統の相談役に入って院政を引くことになる。


義統 ⇒ 信秀 ⇒ 信長


義統は神輿であり、支配者が信秀、実行者が信長という関係よ。


現代風に言えば、


行政府(軍事を含む)は信長ちゃんが預かり、立法・司法府は義統(信秀)が預かる。


二権分立です。


立場上、法律と裁判を持つ信秀の方が偉い訳です。


そんな訳で織田家中が揉めているので、内を固めるのが長門君、外を駆け回るのが千代女ちゃんの役割になっている訳なのよ。


那古野倉街の定例会議では、決戦より5日も過ぎたのでそろそろグァム島の連中が元気を取り戻してきた。


急遽、500人近い奴隷が織田の島民となってので、伊賀衆の手伝いをやって貰っています。


言葉も通じない中を悪戦苦闘していますよ。


今は私と信長ちゃんは自室でのんびり過ごしていることになっています。


まさか、尾張を駆け巡っているなんて思いもしないでしょう。


問題は捕虜の方です。


あまり放置していると、捜索艦隊がやってきそうなので早々にご退場して貰う必要があるのですが、その際にスペインとポルトガル国王に親書を持って行って貰うつもりなのです。


で、その書き出しを


『日出ずる処の天子、書を日没する処の天子に致す。恙無つつがなきや』


にしようと言ったら、信長ちゃんに怒られた。


聖徳太子の名文句ですよ。


でも、みんな聖徳太子って言っていますけど、あれは嘘です。


聖徳天皇、あの時代風に言えば、聖徳大王(しょうとくおおきみ)が正しい名称なのです。


もっとも否定派の方が多いですけどね!


そもそもあの時代に宰相という役職はありません。


歴史の改竄です。


崇仏派と言えば、蘇我氏と歴史の教科書で教えられますよね!


でも、仏教を伝来させたのは物部氏ですよ。


百済王に仕えていた物部氏の一族が、日本最古の仏像『阿弥陀三尊(あみださんぞん)』を持ってきたんですよ。


えっ、嘘ぉって思うでしょう。


善光寺の阿弥陀如来様は物部氏が持ってきた。


ですから、善光寺のお近くに物部守屋の墓もある訳です。


元々、善光寺は物部守屋鎮魂の為に建てられた寺ですしね!


<<< 崇仏派の蘇我馬子 VS 廃仏派の物部守屋 >>>


天下の大嘘です。


改竄に次ぐ、改竄で聖徳天皇は消え、太子に降格、歴史学者の中には架空の人物であったなんていう人が出てくるんですよ。


酷いと思いません!


歴史書を調べると、色々でてきますよ。


 ◇◇◇


長門君も信長ちゃんが国王を名乗るのに反対を言った。


「ちょっと!」

「最後までお聞き下さい」


なら、聞いて上げるわよ。


「この日の本を治めておられますのは、帝でございます」

「であるな」

「然れど、忍様が治められている国は日の本ではございません」


そりゃそうだ!

この時点では、蝦夷地も琉球も日の本じゃない。

況して、北米やオーストラリアを日の本と呼べない。


「織田領と呼んでおりますが、織田国と言っても差し支えございません。帝はその土地のことすらご存じございません。信長様が国王で差し障りないと考えます」

「私が国王?」

「そうでございますな! 忍様」

「全然、OK!」


信秀は複雑そうな顔をしている。


もしかして、自分が欲しかった?


でも、それは口にしないみたいだ。


孫(信光)さんは世界地図とにらめっこしている。


「致し方ありません」


よっしゃ、信長ちゃんの言質とった!


「では、ここは聖徳太子にあやかって、スペイン国王と信長ちゃんは対等であると表明します」

「それがよかろう。南蛮人に舐められていかん」

「よく判らんが、世界を相手に喧嘩を売るというのであろう。派手にいこう」


聖徳太子も大国『隋』を相手に対等外交を望んだ。


高句麗と争う隋は、倭国(日の本)を絶対に味方にしておきたかった。


それゆえに、無礼な相手であっても外交の門を閉めなかった。


織田の国力はスペインに遠く及ばない。


でも、私が授けた知恵はいずれスペインを凌ぐ国家を作るハズだ。


総力で劣っていても、織田には戦列艦がある。


戦列艦を預けている限り、互角以上に戦えるハズだ。


まぁ、私の領民に手を出すならタダでおかないけどね!


 ◇◇◇


5隻分の船員には水と食料を十分に積んだガレオンに押し込んでお帰り頂いた。


預けたのは織田国の信長王の国書だ。


奴隷は解放させて頂いたが織田家は海賊ではない。


壊れたキャラックは3隻を金300貫で買い取った。


修理を待って何ヶ月も逗留されては堪らないからね!


江戸幕府が最初にイギリスから購入した船『千歳丸』は、34,000ドル(340万円)であったという?


イギリスなのに、何でドル?


それが高いのか安いのか全然判らないよ。


1貫文=1石=6万円

(100貫文=100石=600万円)


すべて奪われて当然だから、逆に喜ばれた。


ただ、私は失念していた。


ビタミンなどの補給を考えて積んであげたドライフルーツ10樽が、ポルトガルの首都リスボンで6000万円相当の銀貨で売れて元手以上に儲かったことを。


砂糖でコーティングしたドライフルーツがそんなに高価とは知らなかったよ。


めずらしい東洋のくだものが混ざっていたのも値段に拍車を掛けたらしい。


さて、スペイン・ポルトガル両国王に送った国書を送った。


ここから織田領だ!


ウチの領民に手を出したらタダじゃおかないぞ!


かなり高圧な態度の国書だ。


国書には、私が書いた翻訳を添えてある。


織田領が判るように世界地図も添えてある。


その世界地図は当時としては考えられないほど精密なんだ。


知り合いに織田領を周知するように船長にも1枚贈呈した。


で、船長らには、島の暮らしでトラブルを避ける為に意思疎通のあんちょこ本(翻訳本)を貸していたことを忘れていた。


回収してないよ!


地図とあんちょこ本を写本させるだけで金儲けできるなんて知らなかった。


ドライフルーツで儲けた上に、地図とあんちょこ本でさらに儲けたとか!


一財産を築いたそうだ。


一割を返せ、馬鹿やろう!



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