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信長ちゃんの真実 ~間違って育った信長を私好みに再教育します~  作者: 牛一/冬星明
第2章.尾張統一、世界に羽ばたく信長(仮)
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68.尾張統一戦、余談の戦いの事(3)

尾張統一戦ファイナル祭り!


統一戦最後まで投稿中、ラスト。

前田利昌は次男、3男の粗末な扱い、そして、利家への屈辱的な仕打ちを聞いて怒りを覚えておりました。


そこに信長ちゃんの同行者から外されたと聞いて勘忍袋の緒も切れたのでしょう。


「竹姫は前田家を取り潰すつもりです」


然もありなん。


そんな諫言を信じてしまったのです。


信長様や平手様は女狐に誑かされ、林様も骨抜きにされた。


頼るとこもなし、前田家はもうおしまいじゃと諦めた所に、信友様から忠義の手紙が届いたのです。


竹姫の悪行を正し、武衛様の元で正しい尾張の在り方を取り戻したいという助力の手紙に感動したのです。


武衛様の命ならば、主家を裏切ったことにならん。


そう自分に言い聞かせて討伐(謀反)に賛同したのです。


那古野城は信長様に返すという起請文も取りました。


当日、荒川城の近くに平手 久秀(ひらて ひさひで)が一団を引き連れて現れ、陣地を構築すると、そこに留まります。


荒川城の前田兵は500人ほどです。


対する平手は700人(警邏隊200人、黒鍬衆500人)もいるのに攻めてきません。

平手の倅(久秀)は何を考えているのかと首を捻ります。


それも昼になって物見が帰ってくると納得です。


清州勢は早朝の内に大敗喫して敗走し、逆に清州が攻められていると聞きます。


また、信安の岩倉勢も敗走している。


荒川城の前田家は取り残されて孤立無援になっているのです。


ははは、(前田)利昌は大いに笑いました。


平手の倅(久秀)は前田家が単独で動かないように見張っていただけなのです。


利昌は城に200人を残して、討ってでます。


久秀も待ってましたと黒鍬衆の援護なしで、警邏隊200人で戦いに応じるのです。


「この老人の悪あがきに付き合ってくれたことに感謝するぞ」

「豪の者と噂の利昌殿と戦えることを楽しみにしておりました」

「ならば、口上は無用。イザぁ!」


前田勢300人と警邏隊200人が正面からぶつかります。


数で前田勢が優勢ですが、警邏隊はすべてが騎乗しています。


決して有利とは言えません。


しかし、戦上手が揃っていたのか、中々に手強い。


警邏隊は取り囲まれないようにするのが精一杯で思うように動けないのです。


違いました。


前田の兵は大将同士の一騎打ちを邪魔されないように壁を作っているのです。


まぁ、完璧な壁ではないので割って入るのは簡単ですが、警邏隊に所属する者はそれなりの武士の子ばかりです。


そんな野暮なことは致しません。


がきん、ぎゃしゃん、がきぃ、かしゃ!


流石、利家や藤八のお父さんです。


槍捌きが巧く、慶次様が聞いたら後で悔しがることでしょう。


はっきり言って久秀では荷が重すぎました。


久秀の槍は一切通らず、利昌に一方的にやられています。


「そんなものか! 平手の小倅」

「ぐぅ、なんのこれからじゃ」


久秀の着ている白銀の鎧がぼこぼこにされてゆきます。


「倅の首が取られれば、平手の目も覚めよう」

「父上は騙されておらん」

「お主も女狐に騙された口か!」

「騙されておらん」


このじいい、滅茶苦茶TSUEEEEEEEE!!!!!


「ほれ、ほれ、腰が入ってないぞ。腕の振りも甘いのぉ。ほらぁ、脇が開いた」


手数で負けて、技で負けて、技量で負けて、久秀の敗色は濃厚です。


否ぁ、根性だけは負けていません。


ぼろ雑巾のなっても勝ちだけは諦めない『ゴキブリ』のようなしつこさのみ勝っていまいた。


流石、利昌様と敵も味方も思ったでしょう。


しかし、時間が経つと利昌は意外と渋い顔をしているのです。


「これが南蛮鎧か!」


一撃で形を変える柔い鎧と舐めていましたが、これほど丈夫とは思っていませんでした。


いくら叩いても通らないのです。


鎧の急所である肘、膝、喉元であっても致命傷に程遠い手応えが返ってきます。


「こな糞ぉ!」


ぐぎぉ!


ヤケクソ一撃でした。


技量の差を痛感し、一撃でもと思った捨身が入ったのです。


利昌の顔が歪みます。


動きがわずかですが鈍くなったと感じた久秀は無我夢中で放つのです。


「当たらん! 当たらん! そんなへなちょこの槍など、ぐぁ!」


捨身の一撃が何度も通る訳がありません。


守りを捨てたタダの大振りです。


当たる訳がありませんが、久秀は平手のじいさんと違って体格がありました。


警邏隊の実技指導官に任命された(柳生)家厳のじいさんから嫌というほど、走らされて体力だけはあり余っています。


渾身の捨身攻撃が、利昌の体力を削ってゆくのです。


利昌はいなし、はじき、かわしますが、三度に一度くらいはわずかに槍がかすり始めます。


かすり傷も数が増せば、流れる血も増えてゆきます。


まぁ、かすり傷ですからアドレナリンが出て痛みもないでしょうし、傷もすぐに塞がります。


それでも体力は削れてゆきます。


一方、本当なら死んでいそうないい奴を何度も喰らっているのですが通りません。


久秀はかっこよく勝って、勝ち名乗りを上げたいなんて欲は捨てました。


そんな尊厳など粉々に打ち砕かれました。


恥も外聞も()てて勝ちを(ひろ)いにいっています。


『生きろ! 強い奴が生き残るんじゃない。生き残った奴が強いんじゃ』


(柳生)家厳のじいさんの指導の賜物です。


まぐれの一撃が再び通ります。


利昌の体力を削る速度を加速しました。


久秀の槍が次々とかするようになってゆきます。


気がつけば、ぼろぼろ白銀の鎧をまとった久秀と血で真っ赤に染まった鎧を身につける利昌が戦っています。


がん、がん、がん、がん、がん、がん、がん、がん!


一体どれほど打ち合ったのでしょうか?


どちらの槍も力なくぶつかっています。


どれほど長く打ち合ったのでしょうか、夕日が二人を照らしていました。


「くぅ、血を流し過ぎたわ!」

「こちらも疲れてまいりました」

「ならば、そろそろ決めよいか!」

「同意いたします」


うおおおおぉぉぉぉぉ、お互いに渾身の力を振って槍を突き出し、槍は交わることなく、お互いの心の臓を貫くのです。


ぐわぁ!


その一撃は久秀の鎧にヒビを走らせたのかもしれません。

しかし、槍先も限界を超えて砕け散り、まるで心の臓を突き刺しているように見えるのです。


一方、久秀の槍は心臓を突き刺して背中まで達しています。


「ぐぅぐぐぐ、よき戦いであった」

「一生忘れませぬ」

「ふふふ、ふっ」


利昌が崩れて馬から落ちてゆきます。


武士の本懐を果たしたのです。


勝負がつくと義理は果たしたとばかり、前田の兵は武器を捨てて降伏します。


戦場の片隅で小さな小さな戦いに幕が閉じました。


後の評定で、前田家を最後まで擁護したのが久秀であったことはいうまでもありません。


 ◇◇◇


岩倉への追撃戦は予想通りの混乱が起こりました。


降伏した者への虐殺禁止を破った者がどんな罰を受けたのか?


殺して金品を奪った方が儲かるなって考える傭兵を生かしておく訳がありません。


織田の『100叩きの刑』は刑罰によって、上・中・下に分かれ、相手を殺害した場合は上刑になります。


馬台に繋がれて、手ぬぐいを口に噛みしめて、こん棒で尻や背中を100回叩かれます。


大衆に上刑の理由を告げてから刑が執行されます。


見せしめです。


まず、ほとんどが死にますね!


中刑は革の鞭で100叩きです。


革の鞭は皮を削り、一生消えないミミズのような傷が残ります。


出血多量で死に至ることもあります。


殺害以外の重刑がこれです。


軽犯罪は竹の棒で100叩きですが、こちらは死なないように気を使います。


体調が悪そうなら中止して後日に延期もあります。


死に至らない罪だけど、それなりに厳しい罰です。


でも、強姦は磔だよ!


乱取りは強盗で小刑と中刑の中間だけど、強姦は例外なく重大刑だ。


これだけは私が譲らない。


これからの織田では、乱取りも乱暴も起こさせない。


これだけは絶対の命令だ!


少なくとも信長ちゃんは賛同してくれています。


乱取りを許した領主は領地没収の上、加増された新領地を与える。


「話が違う!」


罪を許されたと安心、織田勝利に付き加増という言葉に騙されたという領主が続出です。


聞く耳はありません。


拒否権は一切認めない。


でも、安心して欲しい。


ちゃんと約束通りに息子か、親戚の者を新しい城代として入れてあげるよ。


領主ではなくなりますが、その土地に残れます。


間違いがないように領主一人に3人の戦目付けを付けて、トリプルチェックをしたんだよ。


結局、信秀の家臣3割が対象だ。


私も蝦夷(北海道)と樺太の人材も確保できて大万歳だ!


ちょっと可哀想なのが岩倉の(織田)信安だ。


素直に降伏してくれれば、岩倉の城代くらいに復帰させるつもりだったのに、何を思ったのか戦いを挑んだ。


岩倉城を奪われたことを恨んだのかな?


武士の義理か!


(織田)信安の呼びかけに応じて、織田 信清(おだ のぶきよ)は討って出ました。


無茶ですよ!


(織田)信安は少ない兵力で信清に挑んで、鎧袖一触(がいしゅういっしょく)で追い払われた。


命からがら逃げてきた兵士は数で負けて、士気で負けています。


信清が攻め掛かる前から兵が逃げ出して戦いになりません。


そして、逃げた信安は美濃を頼って家老らと稲葉山城に入ったそうです。


一方、家老の山内は兵の助命嘆願の為に残って捕えられました。


山内 盛豊(やまうち もりとよ)の黒田城は召し上げられ、城代として帰って貰います。


最初から戦に反対派であったことは信清の証言から判りますから、むしろ那古野に呼んで役職を与えようかという話になりそうですね!


とにかく、織田は過度の人材不足なのです。


美濃の斉藤家を頼った信安は、織田との決戦を言い出したので(斎藤)利政〔後の道三〕に見限られて、放り出されて浅井家に落ち延びたそうです。


取り巻きの家老らが、尾張守護代の肩書きで何とか岩倉を奪還する気みたいなのです。


戦の被害より、戦の終わってから不幸になる人が多そうだね!


君たちの尊い犠牲は無駄にしないよ。


こうして統一戦が終わりました。


長い長い1日でした。


といいつつ合掌。


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