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信長ちゃんの真実 ~間違って育った信長を私好みに再教育します~  作者: 牛一/冬星明
第2章.尾張統一、世界に羽ばたく信長(仮)
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64.尾張統一戦、あづき坂の戦いの事(3)

尾張統一戦ファイナル祭り!


統一戦最後まで投稿中。


月ちゃん(鉢屋 久月(はちや ひさつき))が30人の鉢屋を伴って安祥城の裏手通用口から城下町を経由して飛び出すと南下します。


安祥城から南3kmは火計で炎が上がっており、斜めにショートカットできない。


南1kmの古井城をパス、

南2.3kmの堀内城もパス、

南2.7kmの桜井城(城主:松平 清定(まつだいら きよさだ))もパス、

南3kmの姫城(城主:内藤 清長(ないとう きよなが))辺りから東に進路に向けた。


米津の船着き場を迂回するより近道になるだろう。


渡河はどうするのかって?


大丈夫、30人という人数の少なさが功を奏します。


なんといっても土手には緊急用に小型の舟が小屋に納めてあるのです。


二手に分かれれば、15人ずつくらいで一度で渡ることができます。


もちろん、止まってくれていることを祈っています。


將監さんなら船着き場で追いつけるハズです。


しかし、その願いは叶いません。


矢作川を渡河した時点で、その希望は絶たれました。


索敵で放たれている甲賀衆と合流すると、今川藤林家の長門守の今川伊賀衆らに將監さんの足を止めさせていることが判明したからです。


やってくれます。


何でも長門守は今川伊賀衆400人で將監さん200人を止めているといいます。


邪魔と防御に徹しているらしく、中々に道を開けてくれないそうです。


一方、信広はあづき坂の手前で雪斎に追いつき、坂を上って騎馬隊500人で突撃し、それを足軽隊が追って坂を登っていると言うのです。


逃げる敵をちぎっては投げちぎっては投げ、頂上付近で遂に雪斎の旗を追い付けたみたいですね。


「あの猪無茶が!」

(無茶と武者を掛けているつもり)


渡河した敵を蹂躙するだけの作戦であり、逃げた敵は放置するハズです。


雪斎の旗に吊られて追い駆けてさせられている。


疑う余地がありません。


あづき坂はそこそこ街道であり織田と今川が2度もここで決戦を行っているのよ。


それもそのハズ!


このあづき坂は岡崎と参河国府(豊川市白鳥町)を結ぶ、鎌倉街道なのよ。


雪斎は信広に見つかるまで矢作川を南下していた。


そこで怪しいと思わないのが、信広を『脳筋』と月ちゃんが呼ぶのです。

(元々、忍がそう呼んでいました)


信広は坂の頂上付近まで攻め上がりますが、そこで雪斎の軍が反転攻勢を掛けて、戦は膠着します。


信広の兵は坂道で長く延びてしまっています。


「私だったら、ここで横槍を入れて分断する」


おぉぉぉぉぉぉ、そんなことを月ちゃんが呟くと、あづき坂の分け道から伏兵が横槍を入れてきたのです。


信広の兵は半分に分断され、慌てる信広の兵が次々と討ち取られてゆきます。


「最悪」

「どうします」

「甲賀衆は何人いるの?」

「こちらは10人です」

「赤玉は?」

「2個ずつ預かっています」


岡崎方面から援軍がこちらに向かってくるのが見えます。

半刻(1時間)も掛からない内に到着するでしょう。


「10人預ける。あちらを混乱させて、少しでも到着を遅らせて!」

「承知」

「こっちは6個持っている。全部使わせていい」

「感謝します」


そういうと甲賀衆10人が走り出し、鉢屋衆10人が付いてゆきます。


岡崎城から向かってくるのは、(朝比奈)泰能の別働隊3,000人です。

(それが苦戦するようなら(岡部)親綱おかべ ちかつなの駿河衆8,000人と(庵原)忠胤の兵3,000人も加わります)


20人で『止めろ!』というのはかなり無茶です。


無茶を承知で月ちゃんは命じたのです。


退路を断たれては勝ち目が無くなってしまうからです。


 ◇◇◇


うらうらうらぁぁぁぁ!


信広は6尺(180cm)もある大柄な体に、5間半(5m)の長槍を振って無双しています。


見た目は蜻蛉切(とんぼきり)のような笹穂の槍身で、(やいば)はタングステンをチタンでサンドイッチにした『リアル斬鉄剣』モデルです。


名刀と呼ばれるほどの切れ味はないのですが、とにかく硬いタングステンは量産品でありながら一流の切れ味を維持し、ミクロン単位までチタンで両面をカバーしているので折れません。


最高の『人斬り包丁』と(柳生)家厳のじいさんから最高の褒め言葉を頂いています。


刃こぼれしない槍の刃は血のりで切れ味が落ちても、その威力を維持していました。


これほど実践的な刀や槍はないらしいのです。


しかし、それは信広のみです。


雪斎は器用に後と前の足軽を入れ替えてきます。


対する信広の兵は疲れから前衛から次々と討ち取られてゆくのです。


信広が無双して膠着が維持できているだけです。


そこに横の細道から横槍が入ったのです。


信広の兵は前衛1,000人と後続の2,500人に分断されてゆくのです。


「信広様を助けよ」


横槍に混乱する兵にそう叫んで鼓舞するのですが、一度瓦解した兵は簡単に立ち直りません。


「殺される!」

「引け、引け!」

「ええい、引くな! 戦え!」


押しのけて逃げる兵が邪魔をして組織的な抵抗もできなくなり、混乱のままに織田の兵が討ち取られてゆくのを見るしかありません。


さらに分断された前衛は絶望的です。


信広はただ一人で善戦しますが、前後に挟まれて、兵が次々を討たれてゆくのです。


退路を断たれて混乱する兵をまとめるにが、信広のような武将が4人はいないと無理です。


信広の周りにいた兵にいくつもの槍が突き刺さります。


「田子ぉ」

「甚平」

「伊之助」

「玖珂」


お付きの者の命も消えてゆきます。


糞ぉ、糞ぉ、糞ぉ、糞ぁがぁ!


孤軍奮闘(こぐんふんとう)とは、今の信広軍の為の言葉だったみたいね。


この3ヶ月、苦楽を共にした家臣達も消えてゆくのです。


信広は返りで、血の涙を流しているようにも見えました。


「この鬼神め!」

「矢を入れ!」


気狂いした信広は、バーサーカーのように槍を振り回すのです。


堪らず、今川の兵も後に下がります。


下がった所で矢の嵐が降り掛かります。


すべてを薙ぎ払うような技能は持ち合わせていません。


矢が次々と信広の肩や背中に刺さりますが、それでも信広は止まらないのです。


否ぁ!


止まりました。


赤と金を基調とした『紺糸威胸取仏朱塗二枚胴具足』を身に付けた武者を見つけたのです。


『今川義元』


そう叫んで動きを止めたのです。


まさか、まさか、まさか、横槍を入れた張本人が義元とは思いませんでした。


「降伏しなさい。さすれば兵の命は助けましょう」

「今、それを言うか!」

「家臣らを助けたいのならば、槍を捨てなさい」


今川の兵達は距離を置いて槍を織田に向けます。


織田の兵も信広の返答を待ちます。


助かる?

助かるかもしれない?


足軽達はそう願いながら信広を見ます。


信広は馬を反対に返すと義元の方へ向けたのです。


ゆっくり、ゆっくり、馬が進んでゆきます。


そして、勢いを付けて走り出すのです。


味方も掻き分けて義元を目指し、義元に迫った瞬間、今川の兵の槍が信広に向けられます。


「残念です」


ぐはぁ!


槍が信広の胸元に刺さり、信広が止まりました。


また、1本の槍は信広の頬を掠め、兜を噴き飛ばします。


額から赤血が流れ出し、信広がにやりと鬼歯を見せて微笑んだのです。


うりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


突き刺さる槍ごと、今川の兵を薙ぎ払ったのです。


「ばぁ、馬鹿な!」


はぁ、はぁ、はぁ、あきらかに苦しそうな表情が無傷でない証拠です。


ですが、勢いのままに数本の槍を受けて、まだ動けることが脅威でした。


「ぐわぁ、掛かってこいや!」


鬼気迫る迫力に今川の兵が怯えます。


ずどどどどど~~~ん!


今川義元の後背から爆炎が上がり!


今川の兵が吹き飛ばされます。


その間隙を突いて織田の兵が突っ込んできます。


「赤玉」


ずどどどどど~~~ん!


さらに脇路へ爆裂の玉が放り投げられ、後続の足を止めると、わずかな手勢で今川の兵を沈黙させるのです。


敵中で爆散が起こり、敵が混乱すれば織田の兵に活気が戻ります。

しかも、次々と敵将の首を狩ってゆくのが見えれば、勇気百万倍です。


「俺達も続け!」


うおおおおおぉぉぉぉ!

織田の兵が今川に突っ込んでゆきます。


雪斎も織田の動きを感じ取って兵を押し出そうとするのですが、ずどどどどど~~~んという激しい音と共に爆裂弾が味方を吹き飛ばすのです。


その隙を突いて、月ちゃんが義元に襲い掛かります。


ガキン!


ちぃ、外した。


「なんという無茶ぶりや!」

「お褒めの言葉と頂きます」

「褒めておらん」


突如、現れた手勢はわずか20人ばかりです。

その数で敵中突破など信じられない行動です。


あづき坂に割って入った義元の兵は500人を超えていました。


さらに割って入ろうとしています。


それを押し留めるように月ちゃんらの鉢屋衆が分散して抑えるのです。


鉢屋衆の半分は雪斎のいる前衛に向かい、月ちゃんと残り半分が義元の周囲を狩る後衛に分かれます。


「慌てるな! 爆裂する玉の数など知れておる」


正解!


月ちゃん、ちょっと額に冷や汗です。


でも、月ちゃんらは正々堂々と戦うつもりはありません。


使っている小刀には毒が塗られており、ちょっとして掠り傷でも死に至ります。


頬に擦り傷、それでOK!


すれ違い様に4~5人を葬ってゆけば、一人で50人を倒せばクリアーです。

(ちょっと無理かも!?)


それでも密集地帯の爆裂弾は効果絶大です。


絶大ですが、実際に倒せるのは2~3人なのです。


肉の壁が殺傷能力を軽減し、他の者は巻き添えを食って倒されているだけだったりします。


月ちゃん、あわよくばと義元に切り掛かりますが、受けられてしまいます。


代わりにお土産を置いてゆきます。


ずどどどどど~~~ん!


義元の居た場所が爆裂して、周辺の護衛が吹き飛ばされます。


ちぃ、勘のいい奴だ。


義元は刃を交わした瞬間、馬を前に飛ばして直撃を避けたのです。


あぁいう奴は嫌い。


勘のいい武者と忍びは相性がよくありません。


月ちゃん、宗厳様や慶次様に完膚なきほどにやられています。


泣かされています。


弱っちいと馬鹿にされます。


月ちゃん、弱くないよ。


あのメンバーが異常なんだ!


でも、隙は作りました。


信広と前衛の生き残りが通り抜けるには十分過ぎる隙間です。


あとは脇路の今川軍をもう少しだけ食い止めれば、任務完了…………えっ?


あの猪無茶!


『今川義元』


大声で叫んでいます。


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