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信長ちゃんの真実 ~間違って育った信長を私好みに再教育します~  作者: 牛一/冬星明
第2章.尾張統一、世界に羽ばたく信長(仮)
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61.尾張統一戦、矢作川の戦いの事(3)

尾張統一戦ファイナル祭り!


統一戦最後まで投稿します。


信広の乗せた荷馬車が渡り場を去ってゆきます。


信広の安全を確保すると、他の兵も安祥城に引き上げを開始します。


織田の鉄砲はヤバかった。


今川方も鉄砲対策に木盾の厚みを倍にするという対策をしていましたが、気休めに過ぎません。


ズドォ~ンと受けた衝撃は盾を打ち破って足軽の命を簡単に奪います。


板を2枚合わせたくらいじゃね?


織田の弾は球体ではなく、現代の銃弾に近い形です。


爆発面を平らにすることで発射の威力を二倍増しです。

(飛距離は総重量が増したことで伸びていません。)


盾を持つ者は死に立ち向かうようなものです。


ご愁傷様!


武将達が足軽達に進めと檄を飛ばしても誰も前に進もうとしません。


そりゃ、死にたくないからね!


銃声が鳴りやんだことで岡崎勢もやっと上陸できました。


渡り場から安祥勢までの36町(4km)もある一本道です。

(もちろん、他に細い道が何本もあります)


でも、そのほとんどが狭い街道や農道であり、1町(110m)毎に土嚢を積んで進軍を阻んでいるのです。


安祥城まで続く大通りも左右交互に土嚢を積んで進軍を遅らせるようにしてあります。


土嚢の高さは4尺(1.2m)くらいです。


跨いで通れる高さですが、鉄砲を置くのに最適でした。


岡崎勢(松平広忠)に続き、鵜殿 長持(うどの ながもち)と共に三河衆が渡河を終えます。


鵜殿勢は渡り場を確保する為に残り、その他の東三河衆は岡崎勢を追い駆けるます。


しかし、思ったほど岡崎勢が進んでいないのです。


岡崎勢は各所に鉄砲隊の一斉射撃を受けて渋滞していました。


「身を屈め!」

「忌々しい」

「殿、焦ってはなりません」

「判っておるわ」


岡崎勢にとっても土嚢は鉄砲から身を隠すのに丁度いいのですが、身を屈めて足を停止すると、その度に岡崎勢の追撃が遅れるのです。


しばらく待つと鉄砲隊が自ら下がってくれますから、部隊は前へ前へと進めてゆけます。


苛立った岡崎勢が田を迂回しようとすると、田に入ると水(油)が流しており、ぬかるんだ田に足元が取られて思うように進めないばかり、鉄砲のいい的になってしまいます。


そして、油断していると將監さんらの甲賀衆200人が岡崎勢を襲うのです。


最後の鉄砲隊が門に飛び込むと將監さんらは逃げ遅れたように鉄砲隊を追い駆けます。


「今だ、門をくぐれ!」

「「「うおおおぉぉぉっ」」」


押し寄せてくる岡崎勢を押されながら後退し、將監さんらの甲賀衆は大外堀門を抜けられたように演出します。


すると、門を突破されたと壁にいた鉄砲隊が三ノ丸に逃げ出し、それを岡崎勢が追いかけてゆきます。


一方、將監さんらは逃げ遅れて、大外堀門の広場に取り残されます。


鉄砲隊(甲賀衆)に取り付いて、岡崎勢は三ノ丸門も突破しました。


「門を占拠しろ!」

「閉めさせるな!」

「ここは放棄だ! 撤退! 撤退!」

「追え、追え、逃がすな!」


三ノ丸が陥落したのを確信して、逃げ遅れていた將監さんら50人は壁に垂らしてあった紐を手に取って、一瞬で引き上げて貰って壁を飛び超えるのです。


おぉ、大外堀の広場から三ノ丸をショートカットして、二ノ丸に帰還です。


忍者っぽい!


鉄砲隊(甲賀衆)は三ノ丸門から二ノ丸門まで、ぐだぐだで戦いながら、援軍に出て来た將監さんらに一度押し返されるも二ノ丸門も放棄して本丸に撤退です。


岡崎勢もマジで強いから被害が出ていますよ。


「ニノ丸も放棄する」

「撤退、撤退」


この將監さんらも遅滞戦のお蔭で、信広達は無事に帰城したのです。


「無事のご帰還、恐悦至極(きょうえつしごく)でございます」

「荷馬車は乗り心地が悪いな!」

「荷を運ぶものですから」

「であるな」


本丸に到着した信広が荷馬車から立ち上がると家臣らが驚いた。


ふふふ、信広は家臣らの空いた間抜けな顔を見て不敵に笑います。


「儂は不死身だ…………と言いたいが、竹姫様より特別な服を頂いた」

「殿、傷は、傷口はどうなっておるのですか?」

「刀は儂に届いておらんぞ!」

「しかし、出血が!?」

「鹿の血のことか?」

「その血は鹿のものですか!」


信広の家臣達は唖然とします。


「広忠の『寝返り』は偽りと申されて、これを着て頂きました」

「ならば、あそこで討ってしまえば!」

「あれは演技だ。この安祥城に誘い込む為の罠である」

「「「「「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」」」」」」」

「家次、黙っておってすまなかった」

「いいえ、信じておりました」

「見よ! 岡崎勢は俺を倒したと信じて、大外堀、三ノ丸に入り込んでおる。本丸以外はまだ何もない城だ。あやつらは袋の鼠だ」

「この『故に利にして之れを誘い』という『空城の計』でございます」

「空城は敵の警戒心を誘う策ではなかったですか?」

「はい、それは諸葛孔明が司馬仲達に用いた策で間違いありません。しかし、新野に20万の大軍に攻められたとき、ワザと城の中に誘って、火を掛けた策も『空城の計』と申します」

「知っておりますぞ。三方から火を放って、一箇所だけ逃げ道を作って敵を討ち取った策ですな」

「はい、その通りです」

「月久様が考えられたのですか?」

「いいえ、望月千代女様の策でございます」

「「「望月!」」」

「100万石か!」

「その通りです」


千代女ちゃん、西も東も人気大上昇中だよ。


 ◇◇◇


岡崎勢が一本道で停滞していた頃、織田勢がいなくなって今川勢は一斉に渡河を開始します。


まず、対岸に接岸します。


身の軽いものが土手に上がり、綱をひっぱって筏を固定すると渡河が開始です。

筏を繋ぎ合わせて仮設の橋を作り、筏から板橋を掛けて土手に上がるのです。


同時にいくつもの仮橋が作られて、今川勢が一斉に渡り切るのです。


土手周辺の道は織田勢が通る為に広く整理されていますが、安祥城と並ぶように立っている松平 信孝(まつだいら のぶたか)の山崎城や高木 清秀(たかぎ きよひで)の高木城へ続く道は細く、さらに土嚢が積まれて行く手を遮ります。


渡河した1万2千人の内、井伊ら1万人を安祥城に向わせ、残る2,000人を1000人ずつに分けて山崎城、高木城に向かわせます。


雪斎の本隊である駿河・遠江衆3,000人はゆっくりと追い駆けます。


ゆっくりとです。


先頭に岡崎(広忠)衆3,000人、

次軍に東三河衆3,000人、

中堅に遠江(井伊直盛ら)衆3,000人と駿河・遠江の新兵7,000人、

後詰めに雪斎の駿河・遠江衆(若武者で構成)3,000人、

渡り場確保に鵜殿勢1,000人、

(牧野勢は撤退済み)


別働隊として、山崎城と高木城へ傭兵衆各1,000人ずつで2,000人、


岡崎城待機の(岡部)親綱と(朝比奈)泰能の駿河・遠江衆1万3,000人


以上の陣立てで挑んでいます。


岡崎勢が安祥城に取り付いた伝令が走ると、井伊勢らも手柄を一人占めされてなるもかとさらに急ぐのです。


井伊らはすでに突破されたという三ノ丸、二ノ丸に入っていったのです。


これでは手柄が岡崎勢の一人占めです。


しかも三ノ丸、二ノ丸の中は何もない城でした。


二ノ丸を占有した岡崎勢が本丸の門を襲い、三ノ丸に到着した井伊らはどう本丸を攻略しようかと思案します。


鉄砲は本丸の大手門に集中しているようで、三ノ丸への攻撃は少なく、鉄砲は脅威ですが、数が少なければ、どうということもないと思っていました。


散発的な温い反撃の中で、仮作りの長梯子を制作などして、安祥城の攻略に頭を使います。


七城の領主と(戸田)康光らが弓でがんばって反撃をしています。


鉄砲を預けなかったことが重要なのです。


その頃、囮で使った黒鍬隊が休憩を入れ、残る黒鍬隊4,000人がクロスボウと火薬筒の準備をしていました。


鉄砲がない訳じゃないよ。


最初に預けた武器で勝つことがテーマなのよ。


その気になれば、迫撃砲(花火砲)で岡崎城ごと今川を全滅させることだってできる。


それでは織田が勝ったことにならないから禁じた訳ね!


その分、月ちゃんらに苦労を掛けています。


本丸の一角で敵の様子を窺っていた月ちゃんの所に將監さんが戻ってきました。


「ご苦労様でした」

「大したことはない」

「そうですか!」


將監さんらと鉄砲(黒鍬)衆は接戦を演出しながら、安祥城まで追い詰められたように演じて戻ってきました。

同じことを鉢屋衆でやれと言われでも無理です。


力の差を感じます。


「様子はどうだ!」

「順調です」

「そうか!」

「でも、少し問題ありかも?」

「何がだ?」

「敵の数が少なすぎる」


將監さんも敵の様子を窺います。

4万人が取り囲んでくれれば、一網打尽して終わるのですが、千代女ちゃんの指摘した通り、城の中に突入した数は2万人に届きません。


作戦失敗です。


但し、想定通りです。


千代女ちゃんの予想は安祥城攻略の放棄です。


城の防御力を警戒する(今川)義元は安祥城を取り囲んで無力化し、安祥城を素通りして末森を目指すと読んでいました。


最悪は『三方ヶ原の戦い』のように安祥城の兵を吊り出して、野戦で決戦を挑むのが理想でしょう。


2万対4万。


数で不利な上に、戦闘で使えそうもない人夫を1万も抱える織田の不利は目に見えています。


もちろん、それを避ける為の策も千代女ちゃんは用意しています。


安祥城と岡崎城の南北3kmずつカバーした全長8kmが罠のエリアです。


その外側を迂回された場合はお手上げよと開き直っています。


しかし、予想に反して今川は最高の形で安祥城に攻めてきています。


問題は今川方の兵の数が少ない。


「半数近くが渡河してないのか?」

「はい」

「想定外だな!」

「はい、拙いかもしれません!」


今川の意図が読めません。

月ちゃんと將監さんが同時に頷きます。

現場優先です。

千代女ちゃんの策は一度忘れるという合意もできました。


さて、この後は月ちゃんの判断に任せです。


どうする?


『申し上げます。信広様、出陣されました』


???


信広の再出陣は千代女ちゃんの作戦です。


もちろん、火を放って敵を追い込んだ後の話です。


敵の出方で変わると何度も言ってきました。


徹底的に今川を叩く為に安祥城を南下し、西吉良を結ぶ米津で大橋を渡って西吉良領内へ入ります。


米津にも船着き場に渡河する舟はあるのですが、3,500人を一度に渡河させることができません。


しかも米津から小島まで1kmほど川を上る必要があるのです。


そういう訳で米津大橋を渡って西条城(西尾城)を目指します。


矢作川は小島地域から二つに割れて、現在の矢作古川に本流が走っていました。


西条城から東の花蔵を目指すのです。


吉良の西条城(西尾城)と東条城の間の花蔵にも船着きの渡り場を作ってあるからです。


何故、花蔵なのか?


信広は火計に反対したからです。


単に自分の活躍の場がないから駄々を捏ねたといってもいいでしょう。


今川が出陣しており、策を変える余裕はありません。


困っている月ちゃんに私が花蔵に3000人くらいが一度の渡河できる軍港があるといって上げました。


嘘もホントにすればいい!


その晩に花蔵に行って、森の中に軍港を作ったのです。


森の中になったのは、織田普請で余っている土地が少なかったからなんだけど…………。


敵から隠す為に森に作ったみたいでカッコよくなったね!


という訳で、信広は花蔵で軍船に乗り換えて川を上流に上って、適当な所で渡河する為にと花蔵へ急いだのよ。


千代女ちゃんの作戦は敵の本隊がすべて渡河しているのが条件なのよ。


半数が残っているのでは使えません。


精鋭1万人以上の今川勢が残って所に突撃を掛ける馬鹿がいますか?


いました。


「申し訳ございませんが、追って頂けますか?」

「承知」

「こちらの処分が終われば、すぐに追い駆けます」

「頼む」


誰だ、勝手に門を開いた奴は!

そう怒りたいけど、城下町の責任者を責められない。

月ちゃんが責任者だから確認してきますなんて言えない。

止めてくれたと思うけど、ふりきって出陣したのでしょう。


信広のばかやろう!


月ちゃんは心の中でそう叫んだのです。


 ◇◇◇


岡崎城で雪斎は安祥の兵が引いてゆくのを確認して、広忠に授けた『埋伏(まいふく)の毒』の効果があったことを確信しました。


「さて、どれだけ成功したのか?」

「整然と引き上げてゆくのを見ると失敗しやもしれません」

「信広に手傷を負わせれば、それで十分であろう」

「そうですな!」

「又太郎、玄忠、岡崎は任せる。見誤るな!」

「はぁ」


雪斎は朝比奈 泰能(あさひな やすよし)岡部 親綱(おかべ ちかつな)に岡崎城を任せると、雪斎は矢作川を渡河します。


主力の駿河・遠江勢で構成される1万3千人が岡崎城に残ったのです。


渡河した先陣は井伊 直盛(いい なおもり)です。


井伊家は花倉の乱(はなくらのらん)河東の乱(かとうのらん)で、義元と対立した遠江の有力な国人です。

福島 正成(ふくしま まさしげ)についたこともあり、冷遇されていました。


井伊勢に加えて、遠江国36人衆、さらに駿河の新兵(足軽)衆を預けられて張り切っています。


直盛って、次郎法師(じろうほうし)井伊 直虎(いい なおとら))のお父さんだよ。


次郎法師には許嫁の直親(なおちか)がおり、当主直盛の養子になった。


直親のお父さんは直盛の弟であり、反今川の急先鋒だったのかな?


家老で今川氏与力の小野政直と仲が悪かった。


一昨年(天文13年、1544年)に小野政直の讒言(ざんげん))で、井伊直満が義元への謀反の疑いをかけられて自害させられた。


その子、直親も謀殺されそうになった為に逃げ出しました。


許嫁であった娘は出家して『次郎法師』を名乗ったのが、「おんな城主、井伊直虎」のきっかけです。


天文5年(1536年、10歳)生まれという説もあるけど、どうなのかな?


いずれにしろ、直盛はここで活躍しないと今川家が滅ぼされるとばかり、がんばりました。


織田の弓隊もなんのそのです!


直盛さん、危ないよ。


ここで死んだら、『次郎法師』が家督を継ぐことになるんだよ。


10歳の女の子を城主にするつもりなの!


安祥城の二ノ丸・三ノ丸には岡崎・東三河勢が入り込み、大外堀と三ノ丸には井伊が率いる駿河・遠江勢が押し寄せます。


城の外では後詰め(駿河の新兵)2,000人が待機しています。


なんと、傭兵達の一部が城内への突入を拒否したのです。


傭兵なんて肝心な時には役に立たないと直盛は思いました。


石造り城なんて、はっきり言って得体が知れないというのが本音でしょう。


さて、三ノ丸に突入すると屋敷の1つも建っていないのです。


高い壁に覆われる本丸をどう落とすのか、直盛はない頭で悩んだのです。


一方、山崎城、高木城に回した分隊も城に接近すると鉄砲や弓の攻撃で近づくことができないようです。


戦闘は完全に膠着していました。


 ◇◇◇


今川方、

矢作川の戦いは今川義元が仕掛けた(松平)広忠という『埋伏の毒』で信広が討たれるという事態になって混乱し二ノ丸まで陥落した。


陥落したという一点を見れば、今川の勝利です!


織田方、

信広が討たれたと演出して、敵を安祥城に引き込む作戦が成功しています。


引き込んだという意味で、織田の優勢です。


結局、どっちが勝っているの?


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