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信長ちゃんの真実 ~間違って育った信長を私好みに再教育します~  作者: 牛一/冬星明
第2章.尾張統一、世界に羽ばたく信長(仮)
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59.尾張統一戦、矢作川の戦いの事(1)

尾張統一戦ファイナル祭り!


統一戦最後まで投稿中。

私に転移能力があるからといって一度にすべての戦場を見ることはできない。


牛屋(大垣)は千代女ちゃんに任せた。

宗厳様と家厳のじいさんを付けたから大丈夫だろう。

南宮社も千代女ちゃんの管轄だけど、実際に指揮を取ったのは、藤林 保豊(ふじばやし やすとよ)だ。


三河の国は、千代女ちゃんの叔父さんで將監さん、(望月 長重(もちづき ながしげ))にお願いしようとしたが断られた。


どこまでも自分は影だそうだ。


これ以上は望月の者が前面に出るのは避けたいらしい。


望月家は甲賀でも別格になってきている。


そのせいか、甲賀五十三家では私付の小姓としてショタと少女を育成しているという?


千代女ちゃんだけでなく、我が家にもご寵愛を得ようと必死になっている。


そんなに期待されても困るよ。


可愛い子はありがたく頂くけどね!

ホント、頂くよ。

大切なことだから二度いいました。


將監さんに断られたので月ちゃん(鉢屋 久月(はちや ひさつき))にお願いした。

サポートには、將監さんと千賀地 保元(ちがちし やすもと)が入る。


保元のお父さんは服部半蔵だよ。


半蔵さんのご主人は榊原 長政(さかきばら ながまさ)と言い、祖父が伊賀守護の仁木 貞長(にき さだなが)です。父に代で伊勢国一志郡榊原村に移住して、榊原を名乗っています。旧領の仁木郷に戻って、対岸の下村城を任されています。

格式だけは守護並です。


「半蔵、此度(こたび)はどうなっておる」

「息子がご迷惑をお掛けしました」

「それはもうよい」

「此度は、私や殿が出陣すると要らぬ騒ぎになりますので、山内 玄以(やまうち げんい)に500人の兵を引き連れて岡崎に行って貰いました」

「それがよい。玄以は今川の与力だ。誰も疑うまい。しかし、よいのか? お主の息子が安祥城を守っておるのであろう」

「影働きゆえに名は連ねておりませんが間違いないかと」

「お主も辛いであろう」

「これもさだめ故に」

「しかし、いつ陣触れを出した。仁木郷にでも出したのか? 儂は聞いた覚えはないぞ」

「傭兵を買い入れました」

「そのような金があったのか?」

「迷惑料を頂いて参りました」

「ははは、息子殿も困ったであろう」


半蔵さんは敢えて仕事をしません。

動けば必ず疎まれます。

動かないことが、身の安全を立てることになるのです。


と言っても、3人程度の見張りの目を誤魔化すのは簡単なことでした。


話を安祥城に戻しましょう。


月ちゃんは私付きの女官です。


いつも連れ歩いているので、三河七城の城主に説明する必要がありません。


この一か月、月ちゃんを通して、あるいは一緒に共だって行ったいたので、彼らには説明はいらないでしょう。

(大浜城の長田重元と稲熊氏、天野氏、永井氏、長田城の長田氏、棚尾城の熊谷若狭守、東端城の神谷與七郎、石川丈山城の石川信英、木戸村城の石川式部、西条城の吉良義昭)


安祥城(あんじょうじょう)の援軍にやって来た七城の城主(吉良は代理の家老が参戦)と田原城の城主の戸田 康光(とだ やすみつ)を前に月ちゃんが言ったのです。


「安祥城主の信広は猪突猛進な所がある。城から勝手に討って出て、討死しようとも安祥城のみは死守せよとの竹姫様よりの厳命である」

「「「「「「「ははぁ、畏まりました!」」」」」」


(戸田)康光は月ちゃんが信広の生死を軽々しくいうことに驚き、七城主が同意したことに二度驚いたのです。


織田家の庶子嫡男は信広が三河を預かっているのではないのか?


「康光、何か変ですか?」

「いいえ、三河西岸は信広様が治めておられるのではないのでしょうか?」

「うん、平時は信広が治めている。竹姫は(まつりごと)に興味がない。でも、(いくさ)は別です。信広の直臣3,000人以外は竹姫の兵です。私はその裁量権を預かって来た。何か、不都合ですか?」

「いいえ、西三河衆は信広様の家臣と思っておりました」

「ははは、信広様など、竹姫に比べれば、『金魚のフン』だ」

「いかにもいかにも、信長様と竹姫様は別格じゃ」

「竹姫様が従えとおっしゃるから従っているにすぎん」

「その通りだ!」

「某は大殿から竹姫様の命に従えと聞いております。竹姫様が月様の命に従えと言うのであれば、我らは月様に従うまでです」

(月じゃなく、久月ですと心の中で呟いた)

「ありがとう。よろしく、お願いする」

「「「「「「「はぁ」」」」」」」


康光の顔色が悪かった。


「何か困った?」

「いいえ、信広様と月様が同時に命令された場合はどうしようかと悩んだだけでございます」

「その心配は無用です。あなた達の命令は私からしかでない。小娘の命令は聞きたくない?」

「いいえ、そのような事はございません」

「そう、よかった」

「それで我らの出撃はいつになりますか?」

「ない。このまま安祥城を死守する」

「しかし、信広様は矢作川で今川と対峙しております。まさか、見捨てるという訳にはいきますまい」

「見捨てます」

「………………」


さらに康光は顔色を悪くしていた。


軍議が終わると、康光は密かに使者を出しますが、今川方に届くことはありません。


月ちゃんに従ってきた鉢屋衆30人がそれを許す訳がないのよ。


 ◇◇◇


両軍は矢作川を挟んで対峙しています。

信広は矢作川の西側に布陣し、今川勢の先鋒である松平衆と牧野衆、少し後に鵜殿衆が東側に布陣します。


信広は総勢で3,500人です。

信広本隊を渡し場に2,000人を残し、岡崎城の対岸に1,500人を並べています。

土手の上に土嚢(どのう)を積んで、鉄砲と弓で待ち構えています。


この土嚢も織田の新兵器の1つなのよ。


対する今川勢の先陣は(松平)広忠衆3,000人、鵜殿衆1,000人、牧野衆1,000人、その他3,000人と計8,000人が対岸の渡し場に船と筏を並べて布陣します。

(その他の中に榊原の傭兵も混ざっています)


今川方の先陣大将は鵜殿 長持(うどの ながもち)が指揮です。

長持は義元の妹を妻に迎えて一門衆並の扱いを受けている。

三河勢の総大将を任されて当然だね!


岡崎に駐留する今川の本隊は駿河衆と遠江衆で構成されており、先陣は井伊 直盛(いい なおもり)らを中心とする遠江国36人衆に駿河の新兵を加えて1万2000人、庵原 忠胤(いはら ただたね)率いる駿河・遠江衆3,000人を加えて1万5,000人が川岸で織田と対峙しています。

後陣は岡部 親綱(おかべ ちかつな)の駿河衆8,000人と朝比奈 泰能(あさひな やすよし)の遠江衆5,000人を合わせて、1万3,000人が岡崎城を囲むように布陣します。


前衛と後衛を合わせて計2万8,000人です。


矢作川の渡河場は岡崎城から南に1kmほど南に下がった所にあります。

丁度、乙川が合流する地点です。


少し以前まで矢作川は馬で渡河できる場所が多くあり、岡崎城もその1つだったのですが、今では渡り場しか渡河できないのです。


川底が深くなって対岸に土手が作られたからです。


土手の高さは2~3mですが、ほとんど垂直に立っていうので渡し板でも掛けないと上陸できないのです。


誰のせいでしょうかね?

(私だよ!)


岡崎の渡し場に大量の筏を用意して、本隊が渡河する準備を終えています。


しかし、しばらく渡河の命令を出そうとはありません。


岡崎城から物見台の上から対岸を見ていた雪斎がつぶやきます。


「思ったより兵が少ないな!」

「どうやら、信広の兵のみが出陣したようです」

「そうか」


報告をする藤林長門守の答えを聞いて少し落胆します。


これでは撒き餌を蒔いた甲斐がありません。


できれば、安祥城にいる織田軍を逆渡河させて、岡崎城近くの野戦で仕留めたかったというのが本音です。


「安祥城には、どれくらいの兵が残っておる」

「援軍として来た者が1,600人、鉄砲・クロスボウが使える者が5,000人でございます。他に城下町の守兵に8,000人余となります」

「多いな!」

「こちらに誘いに乗るつもりはないようです」

「で、手の者は?」

「城下町に回され、安祥城に入った者は一人もおりません」

「ぬかったな!」(失敗したな!)

「申し訳ございません。伊賀・甲賀の目が厳しく、城の見取り図を持ち帰るのが精一杯でございました」

「わずか3ヶ月で堀と壁を造ったことに驚いたわ!」

「不思議な技法でございます」


泥を流すと固まって石になる。

不思議な技法としかいいようがなかった。


土砂は垂直に立てることはできませんし、巨大な土壁を造るのは多くの時間を必要とします。


わずかな時間で石の壁を造るのは、見た事のない技法としか言えません。


雪斎が預かる兵が3万6,000人と吉田(今橋)城にいる義元5,000人を合わせても4万1000人では安祥城を攻略できない。


それが義元の出した答えだったのです。


 ◇◇◇


「さて、月ちゃん、問題です。戸田 康光(とだ やすみつ)は敵か、味方か?」

「竹千代を連れてきた味方です」

「ぶぅ! 戸田は宝飯郡(ほいぐん)の今川方の牧野氏と争っているので、潜在的な反今川です。でも、吉田城(今橋城)を戸田家が確保しているので、今川と争いたくないのよ。織田に寝返れば、吉田城を攻めて下さいというようなものなの。 これって判る?」

「(戸田)康光は今川と通じている?」

「正解!」


康光が竹千代を奪って織田の人質にした。

その話を聞いた本證寺(ほんしょうじ)空誓くうせいは、岡崎城の(松平)広忠(ひろただ)に猛アプローチしたんだよ。


織田に臣従しろ!

織田に臣従しろ!

織田に臣従しろ!


(松平)広忠は根負けして、(いくさ)の当日に寝返って、今川の兵を叩いて、それを手土産して、今川を叩くと約束してくれたのだ。


空誓ぃ、大手柄!


「はい、そう聞いています」

「でも、史実の広忠は竹千代を見殺しにして、今川方に付くほど冷徹な男だったんだよ」

「竹千代の命では寝返らないということですか?」

「そう! 少年期に悲惨な人生を送った広忠は、平気で冷徹なことができる性格になっていたと思うんだ」


人間の心というのは面白いもので、戦場に赴くと人を殺しても心が痛まないように冷徹になれるようにできている。


よく、殺人者の心が判らないと言われるが、あれは嘘だ。


判らないのでなく、判りたくないのだ。


人の心は悲惨なことが襲うと心が冷たくなり、どんな残忍なことでも平気でできるようになっている。


「竹千代に人質の価値はない。そう考えて、もう一度考えてみて!」

「はい」


月ちゃんが考えた。

寝返りが嘘と仮定した(松平)広忠の狙いは何でしょうか?

織田を油断させる為の偽装です。

つまり、最終的には(織田)信広の命です。


「時間が掛かる城攻めをしたくないから野戦で確実に信広を討ち取りたい」

「正解! では、西岸に上陸して信広の軍を不意打ちで襲う対策は?」

「鉄砲で威嚇しながら、寝返ったという松平衆を上陸させない」

「そうね! 上陸するのは二度手間だからそのまま戻らせる。すぐに信広も渡河すると言えばいいわ! でも、面会だけするといいましょう」

「危険です。その場で狙われます」

「そうよ、信広を殺させるのよ!」

「えっ!」


打ち合せを思い出しながら、月ちゃんは冷や汗を掻いていました。

將監さん、巧くやって下さい。


「忍様の作戦は大胆過ぎます」

「そうですね!」 


頭巾を被って顔を隠しているのが、影から伊賀衆を指揮する千賀地 保元(ちがちし やすもと)です。


「1つ間違えれば、大変なことになります」

「脚本は千代女様です」

「信広様の気性を考えての作戦みたいだけど…………はぁ!」

「失敗すれば、大殿から相応の処分を受けることになりますな」

「忍様を死罪にできる訳もないけどね」

「父なら喜びそうな策です」

「信広様は気性も激しい方なので扱いが難しい」

「がんばって下さい」

「代わって!」

「遠慮します」


伊賀衆の保元は、安祥城の人夫と黒鍬衆のまとめ役をやっています。


今回の前提で少しだけ嬉しい誤算があった。


予想外にも人夫が多く集まったことで、黒鍬予科衆に十分な訓練をする時間が取れたのです。

すべての武器・工具の扱いをマスターした黒鍬予科衆は予科を取り、黒鍬衆に昇格でしたのです。


これは思わぬ収穫でした。


一方、ローマンコンクリートのことが今川に知れてしまった。


毎日山ほど使わせれば、バレますよ。


那古野でも牛屋(大垣)でも使っているので時間の問題、ノープロブレム!


ちょっとした誤差です。


千代女ちゃんは安祥城を物流・軍事拠点にして利用するつもりですが、大垣のように難攻不落の城塞にするつもりはありません。


安祥城を守っても、三河から尾張への進行を防げる訳じゃないのよね!


でも、ちょっと面白いことをしていたよ。


大外堀の壁、二ノ丸、三ノ丸の内側にも水路のような内堀を掘らせていた。


見た目は完全な水路だね。


後で本当に下水路にするんじゃないかな?


最後は外堀に流さずに農水路に直結して外部に放出するようになっている。


本丸から二ノ丸、三ノ丸、大外堀壁へとすべて繋がっています。


本丸で火を付けると、城全体に火がまわっちゃうよ。


水路に油を張った上で籾殻を被せて隠すと空堀のようにしか見えないよ!


セコい、というか、ズルい!


千代女ちゃん、火計が好きだね!


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