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背中合わせのアフェクション 〜キミとオレとの関係性〜  作者: 田沢みん(沙和子)
第4章 2人の試練編
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24、 総力戦 (中編)


「ところで病院にかかってきた電話のことですが…… お二人に心当たりはありますか? 」



尊人の声音(こわね)は落ち着いて穏やかだったが、 ジッと見つめる瞳は深くて真剣で、 ごまかすことを許さないという決意が現れていた。



「電話を掛けたのは、 私たちの従姉妹(いとこ)で灯里と言います」


従姉妹と聞いて、 尊人の目が大きく開いた。 たぶんクラスメイトか友達辺りのトラブルとでも考えていたのだろう。



「灯里は幼い頃から奏多に(なつ)いていて、 最近では恋心も抱いていました」

「えっ、 恋心?! 」


奏多が思わず大声を出すと、 叶恵が(あき)れたような目で見つめ、「気付いてなかったのはあなただけよ」と冷たく言い放った。



「えっ? 凛…… さんも気付いてたの?……ですか? 」


御両親の手前、 呼び捨てには出来ないので『さん』づけ&敬語にしてみたが、 慣れなくて変な言い回しになった。



「うん…… 大野くんもみんな気付いてた…… っていうか、 『ですか?』って…… クククッ…… 変! 」


「ええっ、 変って! こっちは必死なのに! 」

「変だった! ハハハッ…… 」



「んっ…… ンンッ…… 凛ちゃん、 奏多! 」


叶恵の咳払いで(われ)にかえると、 凛の両親が呆気(あっけ)にとられたような顔で見ている。



ーー うわっ、 マズイ! 心証!



「え……っとですね、 このように奏多はずっと男友達とばかり遊んでいて恋愛ごとに(うと)く、 そこそこモテるのにも関わらず彼女を作らず過ごしてきまして…… 」


モテないのに嘘をついてもいいのか? と思ったが、 これも心証アップ作戦なのかと、 叶恵に任せることにする。



「それが最近になって凛さんとお付き合いしていると知って、 灯里が嫉妬から嫌がらせで電話を掛けたのだと思います」


「嫌がらせ…… だと言うのは分かりました。 しかし電話の内容は本当だと凛から聞いていますが…… その、 お宅に入り浸っていたと」


「それは違います。 家には毎週金曜日だけ来ていましたが、 時間も決めて節度あるお付き合いを心掛けていました」



「節度あるって!…… そうは言っても、 年頃の女の子が親に内緒で御両親のいない家に通ってたなんて、 しかも噂になってるって……」


「噂にはなっていません。 灯里が大袈裟に言っているだけです」


「その灯里さんだって、 これから先、 何をしでかすか分からないわ! あなたもどうしてこんな事を許してたの? 凛は大学受験に向けて頑張らなくちゃいけない時なのに。 全くもう、 どうしてこんなことに…… 」


愛が目元を押さえて俯向(うつむ)くと、 一同黙り込んで、 広い部屋が静まり返った。




「…… 両親が不在の間は私が奏多の保護者として面倒を見てきました。 なのにこの度はこのような事態になり、 大変申し訳ありません」



ーー 耐えている……。


横目でチラリと叶恵を見て、 奏多はヒヤヒヤしながらも感動していた。



もしかしたら、 こんなにも低姿勢な叶恵を見たのは初めてかもしれない。


奏多が知る限り、 叶恵は常に自由で正直だ。 最低限の礼儀をわきまえつつも、 相手が間違っていたら真正面から反論するし、 筋が通っていないと思えば絶対に譲らない。


そんな短気で自由な姉が、 今は感情を押し殺して自分たちのために必死に耐えている……。



奏多は胸がいっぱいになって、 今にも泣きたいような気持ちになってきた。


ーー 姉貴……。



「ですが…… 」



ーー ですが?……



叶恵が顔をキッと上げて愛を見ると、 ハッキリと言い切った。



「従姉妹の灯里のことも含め、 お騒がせしたことは大変申し訳ないと思っています……が、 それ以外では悪いことをしたとは思っていません」



ーー 姉貴っ!


叶恵がプチッとキレる音が聞こえたような気がした。



口元をわななかせている愛を尻目に、 叶恵は黒革のショルダーバッグからノートを取り出してガラステーブルに広げた。



「これは? 」


ガラステーブルに身を乗り出した尊人に、

「ご覧になってください」

と言ってノートを手渡す。



「『Rルール』…… ですか? 」


「はい、 凛さんが我が家に来るにあたり、 3人で定めたルールです。 凛さんはつい最近まで、 奏多の部屋にも入っていませんでした」


「そもそも、 凛はどうして百田さんのお宅に? 」

「それは…… 」

叶恵はそう言って、 隣の凛をジッと見た。



「凛ちゃん、 言うわよ? 」


「…… はい」


次いで奏多を見た叶恵に向かって、 奏多も「うん」と頷いた。



心臓の鼓動が一気に速くなった。



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