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背中合わせのアフェクション 〜キミとオレとの関係性〜  作者: 田沢みん(沙和子)
第2章 高校編
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19、 周回遅れの男


「俺はさ…… 周回(しゅうかい)遅れの男なんだよ」

「ハア? お前、 何言ってんの? こんな朝早い時間から」

奏多の呟きに、 一馬があきれて聞き返す。



朝6時半の学校は、 人気(ひとけ)が無くて閑散(かんさん)としている。


昨日の夜遅く、 一馬と陸斗の元に奏多からのメールが届いた。


『話がある。 明日の朝練前に時間を作って欲しい』



7時からの朝練に間に合うようにと、 サッカー部の部室前を集合場所に選んだ。

毎朝早起きしている一馬たちと違い、 いつもより1時間以上も早く起きた奏多にとっては辛いものがある。


思わずあくびを()み殺す。

だけど仕方ない、 呼び出したのは自分だ。

今日は大事な話をするために、 わざわざ2人にも早く集まってもらったのだから。



「いつも樹先輩の方が先なんだよ…… 名前を呼ぶのも、 告白するのも」

奏多は唐突にそう切り出した。



自分だって、ずっと前から『凛』って名前を呼びたかった。 先週ようやくその手前まで来たのに、 もう直前だったのに、 タイミングを計っているうちに機会を失ってしまった。

今では下の名前どころか、『小桜』と呼びかけるのも難しい状態だ。


告白だってしたいと思っている。

徐々に距離を縮めてから…… と思っていたのに、 こっちが慎重にやってる間に向こうはそこを一足飛びに飛び越えて、 公開告白なんていうのをやってのけた。



「お昼だって…… 」

本当は奏多だって、 小桜と2人でランチを食べたりしたかった。

恋人同士みたいに、 2人でカフェテリアで向かい合ってとか、 中庭のベンチで並んで座って……なんていうシチュエーションを何度夢見たことか……。


なのに現実は、 昼間の生徒会室で小桜と一緒にいるのは樹先輩なわけで、 (すなわ)ち2人で仲良くお弁当を食べているわけで……

いや、 噂に過ぎないけれど。 確認もしてないけれど……。



「だからさ、 俺はいつも樹先輩の周回遅れなんだよ。 躊躇(ちゅうちょ)してる間に先回りされて、 『あっ、 やられた! どうしよう! 』って言ってる間にまた先回りされて、 それの繰り返し。 要は俺に度胸が無いのがいけないんだけど」


「お前ってマジでヘタレ眼鏡だもんな…… 」

「まあまあ、 一馬、 そう言ってやるな。 奏多もそれを反省してどうにかしようって思ったから、 今日ここに俺たちを呼んだんだろ? 」



「うん…… 小桜に告白しようと思ってる」

「マジかっ?! お前も公開告白する気かよっ! 」


「違うって、 聞けよ。 俺はずっと、 小桜の居場所を奪いたくないからって理由で告白を躊躇してたんだ。 なのに今じゃそれどころか、 いろんな人を傷つけて、 小桜を苦しめて、 また生徒会室に逃げ込ませて…… たぶん彼女は俺の家にももう来ないつもりだ」



ーー 奈々美と都子を泣かせて、 結局、 小桜も傷つけた。



「奈々美たちとはちゃんと話せたんだな? 」

「話した。 話して…… ちゃんと謝った。 それで、 全部分かった。 原因は俺だって」

「えっ? 奏多が原因ってどういうこと? 」

「一馬、 悪い。 それはまた改めて話すよ」


奏多は一馬にそう言ってから陸斗と目を合わせて頷き、 また話を続けた。



「俺は小桜に告白する決心がついた。 ただ、 樹先輩に先を越されたから焦って……っていうのはなんか違うと思うんだ。 とにかく小桜と2人で話したい。 もう生徒会室に逃げ込ませたくなんかないし、 また漫画パレスで一緒に漫画を読みたい。 ……そういう話を今日しようと思う」


「今日? どこで、 どうやって? 」

「…… それが分からないから、2人に来てもらったんだろ」

「お前やっぱりヘタレ眼鏡かよっ! ……だったら都子あたりに頼むとか? 」


「いや、 それは駄目だろ」

一馬の横でそう言ってから、 陸斗が顎に手を当て考え込む。


「うん。 俺もそれはしたくない。 もう彼女たちに頼らず、 自分でどうにかしたいと思ってる。 ただ、 2人きりになる時間が無いんだ。 授業の合間なんて短かすぎるし、 お昼は生徒会室に行ってしまうし…… 」


「乗り込んじゃえよ」

「えっ? 」


陸斗がもう一度ハッキリ言った。


「奏多、 お前、 生徒会室に乗り込め」


ーー ええっ?!




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